2022年3月28日 | 虫

家の中に入り込みやすいミズアブ　その害と防除・駆除の方法は？

アブの仲間のミズアブは、広く日本全国に生息します。今回は、屋内に侵入することもあるミズアブの生態や害についてご説明いたします。また、ミズアブの侵入を予防したり退治したりする方法と、駆除に効果的な薬剤についてご紹介いたします。

ミズアブはどのような昆虫か

ミズアブは黒っぽい体色で、体長15㎜前後の細長い体形をしています。大きな目と触角をもち、脚は３対、頭・胸・腹が区別しやすい形で、胸から下の背側は大きな翅（はね）で覆われています。

ミズアブの種類

日本では62種類の生息が確認されており、形・大きさ・体色とも変化に富んでいます。ミズアブ科の主な種には、以下のようなものがあります。

アメリカミズアブ
エゾホソルリミズアブ
キアシホソルリミズアブ
クロチビミズアブ
コウカアブ
コガタミズアブ
ネグロミズアブ
ハキナガミズアブ
ハラキンミズアブ
ハラビロミズアブ
ミズアブ

【参考】日本分類学連合　日本産生物種数調査　ミズアブ科

ミズアブ科の在来種・外来種

ヒトやモノの往来が盛んになるにつれて、昆虫の生息圏も変化しています。文献などの記録をさかのぼる必要があるため、どれが日本にもともといた種か特定するのは容易ではありませんが、ミズアブやコウカアブ、キイロコウカアブなどが在来種と考えられています。

これに対して、アメリカミズアブはアメリカ原産の外来種で、第二次世界大戦後にアメリカから渡ってきて日本に定着した帰化昆虫です。

生息数が減少しているミズアブ

ミズアブは「三重県レッドデータブック2015」で「絶滅危惧Ⅱ類」に、コガタミズアブは「京都府レッドデータブック2015」で「絶滅危惧種」に指定されています。生態系の変化と昆虫の絶滅危惧種については、「変わる生息環境と、絶滅の危機にある日本の昆虫種」の記事をご覧ください。

【参考】
三重県レッドデータブック2015(PDF)
京都府レッドデータブック2015

ミズアブはハエや蚊の仲間

ミズアブは、ハエ目ミズアブ科の昆虫で、日本に100種近く生息しているアブの一種です。アブ類は人や動物を咬（か）んで血を吸う虫として知られていますが、ミズアブは人を刺したり、咬んで吸血したりする害はもたらしません。

アブはハチの仲間と誤解されることがありますが、ハチは膜翅目（まくしもく）で、分類上はアリと近い昆虫です。これに対して双翅目のアブは、ハエや蚊に近い種であるといえます。

アブとハチの違いについては、「アブとハチの違いは？それぞれの特徴や見分け方、注意すべきこと」で詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。

【参考】日本大百科全書(ニッポニカ)　小学館　「ミズアブ」

ミズアブを見かける季節や場所

ミズアブの仲間の成虫は、夏場に現れます。北海道から沖縄までの日本全国に生息し、幼虫は水中で育つことから、水田や川などで見かけることがあります。高温に強いミズアブは温泉に住みつくこともあり、地域によっては「オンセンアブ」という別名で知られています。アブ類全般については、「アブが発生する原因とは？アブの退治方法と予防対策」の記事を参考にしてください。

不快害虫としてのミズアブ

先述のとおり、ミズアブの仲間は人を刺したり咬んで吸血したりする虫ではありません。しかし人家に侵入して飛び回るため、「不快害虫」として扱われることがあります。

不快害虫とは

「不快害虫」とは、「人間や作物などを害するものではないが、形の気味悪さや大発生などで嫌がられる虫のこと」（デジタル大辞泉）です。都市化が進むにつれ、衛生上の観点で虫の存在が好ましくなかったり、人によってはストレスを感じたりすることがあり、人体や農作物への害とは別に生まれたカテゴリの害虫といえます。

ミズアブの害

ミズアブの害
ミズアブの仲間の害は、その強い屋内侵入性と関連します。生ごみのコンポストや浄化槽で大発生することがあり、浄化槽から配管をつたってトイレの便器に出現。そこから屋内に入り込み、部屋のあちこちを飛び回ることがあります。

生ごみやトイレにいる虫が、食品を扱う台所に飛来したり、家族が集まる居間の家具などに止まっていたりするのは、確かに好ましいことではありません。飲食店や食品工場などでは異物混入の原因にもなるため、ミズアブの侵入は見過ごせない問題となっています。

ミズアブの生態

ここでは、ミズアブがどのような一生を送る昆虫なのか、アメリカミズアブを例にご説明いたします。

アメリカミズアブの生活環

アメリカミズアブは、白っぽい卵を産みつけます。卵は3日ほどで孵化（ふか）して褐色の幼虫になり、20～27㎜ほどに成長します。11～12日後にさなぎになり、2週間以上を経て成虫になります。成虫の体長は16～20㎜ほどで、10日～30日程度の寿命のうちに繁殖します。

アメリカミズアブの繁殖場所

アメリカミズアブの成虫は、ごみ溜めや汚れた水のある環境を住みかとし、産卵します。このため幼虫は、腐った野菜や果物、ごみ溜めの腐敗物、動物の糞（ふん）や、死骸などに発生します。民家以外では、畜舎、ごみや糞尿の処理施設付近で繁殖することがあります。

アメリカミズアブの活動時期

アメリカミズアブは5～11月ごろにかけて活動します。夏から秋にかけて産卵するので、幼虫を見かけるのもこの時期です。成虫は、とくに8～10月ごろに活発に動き回ります。

ミズアブを防ぐ対策は

ここまで、ミズアブが不快害虫とされる理由および生態をご紹介いたしました。とくに人家の周りについては、下記のような防除対策ができます。

生ごみは放置せずに片付ける

ミズアブが腐敗物に発生しやすいことは先述のとおりです。野菜や肉・魚などの生ごみはできるだけ早く片付ける、ごみ袋の口を閉じる、ポリバケツなどふたのある容器に収めるといった対策で、ミズアブの発生源を減らす効果が期待できます。

浄化槽は定期的に清掃する

浄化槽は定期的に清掃する
水洗トイレからの汚水や、台所・浴室・洗濯などの生活排水を処理する合併処理浄化槽が設置されている家庭では、ミズアブの繁殖を目にすることがあります。これらの浄化槽は、毎年１回は自治体に認可された浄化槽清掃業者による清掃をすることが定められています（浄化槽法）。ミズアブやチョウバエなどの不快害虫の繁殖を防ぐためにも、定期的な清掃を実施しましょう。

【参考】チョウバエが発生する原因とは？チョウバエの退治方法と予防対策

においで呼び寄せないように注意

ミズアブはごみや死骸、糞便などのにおいに反応し、引き寄せられる性質があります。家の敷地やその周りに生ごみや動物のふんなどが放置されないよう、不要な物を片付け、掃除しやすいきれいな状態をキープしておくのも対策のひとつといえるでしょう。

ミズアブを駆除するには

ミズアブの退治には、フマキラーの「カダンハチ・アブダブルジェット」や「カダンお庭の虫キラーダブルジェット」が便利です。手軽なスプレー式の薬剤で、手を汚さずに素早く害虫を駆除することができます。

離れた場所から駆除したいときに

「カダンハチ・アブダブルジェット」は、最大11mまで届く、強力な噴射力のスプレーです。

ハチやアブなど、刺傷・咬傷をもたらすおそれのある害虫を、離れた場所からでも駆除することができます。速効性のある殺虫成分と、羽ばたき・行動を停止させる成分の配合により、虫の動きを抑制。また、巣を作りそうな場所にスプレーしておくことにより、最大4ヵ月程度ハチを寄せ付けず、巣を作らせない効果が期待できます。