2021年6月24日 | 虫
ウンカはイネの天敵?ウンカの種類や被害・駆除対策を解説
イネを栽培する農家の天敵ともいえる、ウンカという虫をご存じでしょうか。大切なイネを加害する非常に厄介な害虫で、さまざまな被害が報告されています。ウンカ自体も数種類存在するうえ、薬剤の効きにくい抵抗性種までも発生しており、待ったなしの対処を余儀なくされている状態です。
今回は、ウンカとはどのような害虫なのか、その種類や被害、駆除対策についてご説明いたします。
ウンカってどんな害虫?
ウンカは体長5mm程度の小さな虫で、口吻という針をイネの茎に刺して師管液を吸い取って生きています。ウンカは数種類存在しており、薬剤に抵抗のある種もいるので注意が必要です。
それでは、ウンカとはどのような害虫なのかご説明いたします。
抵抗性ウンカとは?
通常、ウンカは薬剤によって駆除することができます。しかし、同じものを使って駆除し続けると、次第に薬剤に対する抵抗力をもつウンカが現れる可能性もあり、大きな問題となっています。こういった種を、抵抗性ウンカと呼びます。薬剤に抵抗をもつため、いつも通り駆除しようとしてもあまり効果がありません。近年では抵抗性ウンカが増加傾向にあるため、別の方法で駆除する必要もあるでしょう。
ウンカの生態
基本的に、気流に乗って長距離を移動する性質があります。また、1年中栽培されているイネや野生のイネがある場所でしか生きられません。逆にいえば、イネのある場所ならどこでも見かける可能性があるでしょう。
ウンカの特徴
イネ以外の植物上では生きられないという基本的な特徴があります。種類によっては、日本で越冬することができないため、ジェット気流に乗ってベトナム北部から中国、タイなどを経由して飛来するのも大きな特徴です。
ウンカを見かける時期
イネのあるところなら1年中見かける可能性があるとはいえ、日本でウンカを見かけるのは夏の時期に集中します。気流に乗って長距離を移動することから、毎年夏になると日本に飛来してくる傾向にあるので、注意が必要です。基本的には、6月下旬~7月に飛来してくると考えられます。
ウンカの種類
セジロウンカ、トビイロウンカ、ヒメトビウンカの3種類が存在します。それぞれさまざまな特徴をもっていますが、セジロウンカとトビイロウンカは似たような生態を示します。
それでは、3種類のウンカについてご説明いたします。
セジロウンカ
イネ以外の植物上で生きることができず、1年中イネのある場所や野生のイネに生息しているケースがほとんどです。主に夏に見かけることから夏ウンカと呼ばれ、ウイルス病である「イネ南方黒すじ萎縮病」を媒介するため、すぐに駆除する必要があるでしょう。
セジロウンカ自身で長距離を移動することはできませんが、梅雨の時期に東シナ海で発生するジェット気流に乗って、1日~1日半ほどで九州に上陸してくるのが特徴です。最初に飛来してきた第一世代が大きな問題となるため、早急に駆除する必要があるといえます。
トビイロウンカ
セジロウンカ同様に、イネ以外の植物上で生きることができません。日本に飛来してくる方法も同じです。セジロウンカと違うのは、秋に見かけることが多いため、秋ウンカと呼ばれていることです。さらに増殖率も非常に高く、3世代にわたってイネを枯らします。
坪枯れという被害を引き起こすトビイロウンカは、飛来後の第二世代から被害が格段に広がるリスクを有します。被害を食い止めるためにも、見つけたらすぐに駆除する必要があるでしょう。
ヒメトビウンカ
セジロウンカやトビイロウンカとは違い、小麦をはじめとするイネ科の植物があれば生きていられるのが特徴です。このことから他種よりも生命力・増殖率が高く、東アジア一帯や北海道に生息しています。
とくに厄介なのはセジロウンカやトビイロウンカと違い、越冬が可能なことです。仮に存在に気づかなかった場合、ヒメトビウンカは1年中生息できるのです。そして増殖を繰り返し、イネの栽培ができない状態へと環境を悪化させてしまうおそれがあります。
ウンカによってどんな被害が起こる?
ウンカがイネの天敵といわれるのは、イネを枯らしたり、ウイルス病をうつしたりするからです。見かける時期になったらすぐに駆除しないと、あっという間にイネがダメになってしまいます。
それでは、ウンカによってどのような被害が起こるのかご説明いたします。
イネを枯らしたり、ウイルスを媒介したりする
ウンカを見かけたら、早々に駆除する必要があります。なかでもセジロウンカやトビイロウンカは、放置していると集中的にイネを枯らしてしまいます。イネの茎に口針を刺して汁を吸い、増殖すればするほど被害状況が大きくなります。ウイルス病を媒介して、甚大な被害をもたらすこともあります。
イネ南方黒すじ萎縮病
主にセジロウンカが媒介することによって起こるイネの病気で、葉先がねじれたり、株が萎縮したり、葉脈が隆起したりするのが特徴です。感染している植物から汁を吸ってウイルスを獲得したウンカが、別なイネの汁を吸う際に媒介する病気です。加害されたイネが1日で感染する確率は20%程度ですが、7日間だと約80%に上昇するといわれます。
イネ絹葉枯病
イネ絹葉枯病ウイルスが媒介されることによって発病するもので、イネの生育初期から症状が現れます。新葉が黄白色に退色し、弓状に垂れ下がる特徴を示します。ゆうれい症状とも呼ばれ分けつも少なく、そのまま枯死してしまいます。最初期に発病すると、出穂しないか、出穂したとしても出すくみ状態になってしまうのが特徴です。
ウンカからイネを守るための駆除・防除対策
イネへの被害は甚大であり、すぐに駆除・防除対策を講じるのが望ましいでしょう。抵抗性ウンカに効果があるとされる対策もおすすめです。
それでは、ウンカからイネを守るための駆除・防除対策についてご説明いたします。
育苗箱施用剤を使う
防除対策として活用されるもので、苗の状態で使用して有効成分をイネに吸わせるのがねらいです。対策済みのイネの茎から吸汁すると、殺虫される仕組みになっています。ただし、育苗箱施用剤の効果は移植してから1~2ヵ月程度しか持続しないため、それ以降にウンカが発生した場合は別の方法で駆除する必要があります。
早めの防除対策を心がける
ウンカは生育初期から被害をもたらすため、早めに防除対策を心がけることが大切です。ウンカが発生してからでは、既に被害が出ているおそれもあります。また、イネが成長してからだと殺虫剤が株元に届きにくくなって、ますます駆除しづらくなるでしょう。効率よく駆除するためにも、早め早めの対策が必要です。
屋内への侵入を防ぐために
水田の近くに家があるなど限られた場面においてですが、ウンカが屋内に侵入してくる可能性があります。ウンカの屋内への侵入を防ぎたい方は、殺虫剤や侵入防止用のアイテムを使用しましょう。
フマキラー『虫よけバリアスプレー アミ戸窓ガラス』は、気になるところにスプレーするだけで害虫を長期間寄せ付けません。4連ワイド噴射によって広範囲にスプレーすることができます。もちろん防虫だけでなく殺虫効果もあります。速乾性によってべたつきにくいのも大きなメリットです。玄関灯にも使え、家の内外に害虫を寄せ付けません。ウンカをはじめとする害虫の侵入防止に、ぜひお試しください。
まとめ
ウンカによるイネの被害は農家にとって非常に深刻な問題であり、早々に防除対策をする必要があるでしょう。セジロウンカやトビイロウンカは夏から秋にかけて発生しますが、ヒメトビウンカは越冬できるので1年中発生するおそれがあります。
早め早めの駆除・防除対策をおこなうのはもちろんのこと、屋内に侵入させないよう殺虫スプレーなどを効果的に使用するのがおすすめです。