2020年6月3日 | 園芸・ガーデニング
べと病とは?べと病が発生する原因と対策について
植物の下部の葉に淡い色のはん点が出現したら、「べと病」の疑いがあります。べと病とは、俗にかびと呼ばれる糸状菌(しじょうきん)が原因の病気で、キュウリをはじめとする野菜や果物、草花などに幅広く発症します。
今回は、べと病の基礎知識と発症しやすい植物、べと病の対処法と防止策についてご紹介します。早期発見と適切な対応で、べと病のまん延を防ぎましょう。
べと病の概要・症状・発生する原因
はじめに、べと病の概要について簡単にご紹介します。
そもそもべと病とは
べと病は、ツユカビ科(Peronosporaceae)に属する糸状菌が原因の病気で、「露菌(ろきん)病」と呼ばれる場合もあります。葉がベトベトになって枯れることや、ベトベトした多湿の環境で発症することから名づけられました。
べと病の菌は多く、主にウリ科やアブラナ科の野菜、ネギ類やホウレンソウなどのほか、果樹や草花などに寄生します。べと病の菌は空気や水を介して広がり、二次感染として周囲の植物にも被害を及ぼします。
べと病の菌は特徴があり、キャベツにつく菌は同じアブラナ科のブロッコリーやカリフラワーにも繁殖しますが、ハクサイやダイコンには寄生しません。また、カボチャにつく菌はキュウリにも繁殖しますが、キュウリにつく菌はカボチャに寄生しないなどの性質があります。
べと病の症状
べと病の症状は植物によって異なりますが、一般的には下部の葉についた淡い色のはん点が徐々に広がって多角形に変わります。はん点の裏側にかびが発生することもあり、病気が進行すると被害を受けた部分は黒くなって最終的に枯れてしまいます。
キュウリの葉が感染すると、葉脈に囲まれた淡い黄色の模様が出現するので気づきやすいかもしれません。ネギの場合は、葉に出現した淡いはん点の上にかびが発生し、後に全体が黄色くなってしおれます。葉に横しまの模様が出たり、末期にひし形の黒い点を生じたりする植物もあります。
べと病が発症する原因
べと病は、真夏を除いた春と秋に発症しやすく、多湿の環境が影響します。べと病が発症する気温はさまざまで、例えばキャベツなどのアブラナ科やネギ類につく菌は10~15℃くらい、キュウリなどのウリ科につく菌は20~24℃くらいです。
べと病は降雨による泥はねが原因で感染するケースが多く、密集して栽培したときや肥料が多すぎるとき、肥料の不足や実のつけ過ぎで株の生育が弱まったときなども発症のリスクが高まります。
べと病にかかりやすい植物
続いて、べと病が発症しやすい植物を順にご紹介します。
野菜類
べと病が発症しやすい野菜は、ウリ科のキュウリやカボチャ、アブラナ科のブロッコリーやキャベツ、レタス、ハクサイ、ダイコンのほか、ネギやタマネギ、シュンギク、ホウレンソウなどです。
家庭菜園で育てる野菜については、「ガーデニング初心者におすすめしたい手軽に栽培できる野菜10選」もご覧ください。
果樹類
果樹類では、ブドウやウリ科のメロン、スイカなどが挙げられます。べと病にかかった株の生育は悪くなり、実は十分に育たずに変形したりかびが生えたりすることがあります。べと病の菌は人体に影響がないため、感染の初期の段階で熟している実は食用にできます。
草花や花木類
草花や花木類では、バラやカーネーション、ヒマワリ、アスター、トルコギキョウ、クリスマスローズなどが発症しやすい品種です。感染した株は大きく育たずに落葉したり曲がったりして、花の数が減ります。
べと病を発見したときの対処法
植物にべと病が発症したときには、すみやかに次の作業に取り組みましょう。
発症した部分を取り除く
べと病は株の下側の葉から発病しやすいため、毎日の観察を欠かさないようにしてください。異変が出た部分はすぐに取り除き、周囲の葉も感染していないかチェックしましょう。混み合っている場所は葉や茎をカットして、風通しをよくしてください。初期の段階で対応すれば、被害の拡大が抑えられることもあります。
適切な薬剤の使用
植物がべと病にかかったときには、適切な園芸用の薬剤を使用すると効果があります。複数の異なる薬剤をローテーションして使うと、菌の薬に対する耐性が抑えられます。薬剤は病気が発症したときだけでなく、予防として定期的に散布しましょう。
べと病が発症したときは、フマキラーのカダンVIIがおすすめです。新開発のダブルノズルを使用したカダンVIIは広範囲の散布が可能で、薬剤の舞い散りが少なく植物へしっかりと吸着します。カダンVIIは、植物の病気だけでなくアオムシやアブラムシの駆除もできる手軽な園芸用の薬剤です。
べと病を予防するには
最後に、べと病の発症を予防する方法についてご紹介します。
元気な株を育てる
べと病に限らず、病気を予防するには丈夫な株に育てることがポイントです。同じ科の植物を同じ場所で栽培すると連作障害が出て、健康な株が育ちません。同じ科の植物を育てるときは場所を入れ替え、土は日光に当てて消毒してから使用しましょう。
また、病気にかかったタネや株、徒長(とちょう)と呼ばれる軟弱でヒョロヒョロとした株を栽培したときも発症の可能性が高まります。タネは消毒したものを使用し、植えつける株は葉や茎の色が鮮やかで、茎が太く健康に育ったものを選んでください。
植えつけと管理
先述したように、べと病は湿度が高く密集した環境で多発しやすいことがわかっています。植えつけるときは間隔を空け、生長して葉が混み合った部分は適宜カットして風を通しましょう。また、野菜や果実は生育期に実をつけ過ぎると株が弱るので、適度に枝を切ったり花を摘み取ったりして調節してください。
ハウスで栽培している場合は天候や気温に注意し、換気や暖房でべと病が発症しやすい環境を改善しましょう。
マルチングや雨よけ
雨が続く季節は、降雨によって土が跳ね上がり、下部の葉に付着して感染するケースもあります。広い畑で栽培するときは、あらかじめビニール製のマルチングをしてから植えつけると安心です。
家庭菜園や花だんで栽培する場合は、敷きわらなどを株の根元にほどこして泥はねを防ぎましょう。天候が安定しない時期は、園芸用の雨よけを設置すると病気の予防ができます。
肥料の与え方
肥料を多く与え過ぎると土の中の窒素分が増えるため、植物は吸い上げた成分を懸命に処理しようとして細胞を肥大させます。その結果、葉が大きくなったり茎が伸びたりして徒長し、軟弱で病気にかかりやすい株に育ってしまいます。
反対に、肥料が不足すると全体に十分な栄養が行き渡らず、健康な株に育ちません。肥料やりは、肥料の量やタイミングに配慮し、適切に行いましょう。
そのほかの病気については、「植物に発生するさまざまな病気。予防法と対処法とは?」の記事も参考にしてください。
毎日の観察でべと病のまん延を防ごう
今回は、さまざま植物に発症するべと病を取り上げ、基礎知識と発症しやすい植物、対処法と予防についてご紹介しました。べと病は過湿で風通しが悪い環境で多発するため、管理を見直すことで予防できます。
病気を見つけたときは早急に患部を取り除き、適切な処置をしてください。日々の観察で早期発見を心がけ、べと病をはじめとする病気のまん延を防ぎましょう。