ハラスメントの定義とその種類について解説!

ハラスメントの定義とその種類について解説!

セクハラ、パワハラ、マタハラなど、何かと世間をにぎわす「ハラスメント」という言葉。英語のHarassmentは、日本では「嫌がらせ」や「いじめ」を意味し、職場や学校、公共施設、電車やバスの中などさまざまな場面で、言葉による被害を受ける人があとを絶ちません。

いっぽう、明らかな暴言や失言はともかく、職場で何気なく発した言葉が「セクハラ」と捉えられてしまったり、どこまでが許容される範囲か頭を悩ませる人も多いのではないでしょうか。そこで今回は、ハラスメントの定義と、ここ数年次々に登場してきたハラスメントの種類について解説していきます。

ハラスメントの定義

ハラスメントとは、本人に意識があるか・ないかに関わらず、相手を不快にさせたり、尊厳を傷つけられたと感じさせる発言や行動のこと。何気なく発した言葉で相手が不快に感じたら、それがハラスメントととられる恐れがあります。

ハラスメントという言葉は1980年代以降、日本に登場!

日本にハラスメントという言葉が登場したのは1980年代半ば以降。1989年に性的な嫌がらせを理由とした国内初の民事裁判が起こり、その年の新語・流行語大賞の新語部門において「セクシャルハラスメント」が金賞を受賞したことで、日本語として定着・広く浸透してきました。

もともとHarassmentは、「苦しめること」や「悩ませること」など相手に迷惑をかけるという意味を持った単語ですが、日本では「嫌がらせ」や「いじめ」などの意味として用いられるようになりました。

ハラスメントの種類

ハラスメントの種類

1980年代半ば以降、長らくハラスメントの代表格といえば「セクハラ(セクシャルハラスメント)」でしたが、2000年代に入って「パワハラ(パワーハラスメント)」が登場。

その後、価値観の多様化などによりそれまで問題視されなかったものまでが次々とハラスメントとして取り上げられるようになり、「●●ハラ」という言葉が続々と誕生しています。どこで、どんなことが問題視されているのか、続いてはハラスメントの種類について見ていきましょう。

職場での立場を利用したハラスメント

パワーハラスメント(パワハラ)

上司が部下に暴力をふるう、大声で怒鳴る、同僚から嫌味を言われるなど、上司や同僚によって、肉体的あるいは精神的な嫌がらせを受けたりすること。過度の残業を強要されたり、有給取得の拒否など制度利用の妨害をされたりすることも。職場での立場や権力を振りかざすハラスメントで、病気になったり、命を絶つ人が出たりとその被害は深刻です。

また、部下が上司に対してパワーハラスメントをする「逆パワハラ」も問題になっています。例えば、上司よりもITスキルの高い部下が上司に向かって「こんなことも分からないのですか?」などと馬鹿にしたり、部下全員で上司を無視するなどが挙げられます。

特にITスキルに関しては、物心ついたころから身近にある若い人のほうが慣れているため、上司世代は苦労しているようです。

マタニティハラスメント(マタハラ)

女性が妊娠・出産をきっかけに肉体的あるいは精神的な嫌がらせを受けたり、会社を解雇されたり不当な扱いを受けること。セクシャルハラスメント、パワーハラスメントに続く3大ハラスメントのひとつと言われています。

パタニティハラスメント(パタハラ)

パタニティ(paternity)は父性を意味する言葉で、育児のために休暇や育児参加制度を利用しようとする男性社員に対する嫌がらせのこと。男性の育児参加が社会的にも認知されてきたとはいえ、「男性は育児よりも仕事」という昔ながらの考えを持つ人によって起こる問題です。

性的・人種的差別に関するハラスメント

性的・人種的差別に関するハラスメント

セクシャルハラスメント(セクハラ)

職場内における性差別的な発言や性的な言動による嫌がらせのこと。飲み会でお酒をつぐことを強要されたり、優遇してあげる代わりに性的関係を求められたり、セクハラも職場での立場を利用して行われることが多いハラスメントです。女性が胸やお尻を触られたり、スリーサイズをしつこく聞かれたり、被害はさまざまです。

さらに、「恋人はいる?」「結婚している?」など、かつてはあいさつ代わりやコミュニケーションの一環としてやり取りされていた発言に対しても、相手の気持ちが重視される現代においてはセクハラの一つです。

ジェンダーハラスメント(ジェンハラ)

女性らしさや男性らしさなど性別をものさしにして判断される嫌がらせのこと。たとえば、「女のくせに料理もできないのか」や、「男のくせに力が弱い」などの発言や、男性は名字で呼ばれるのに、女性は下の名前(●●ちゃん)で呼ばれることを不快に感じるケースなどが挙げられます。また、現代ではLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)の人たちが受けるハラスメントも問題視されています。

テクスチュアルハラスメント(テクハラ)

textual(文章)の意味から、書いた文章を性差別的に評価することを指します。「女性に論理的な書き方はできない」、「このような企画は女性には考えつかない」など成果物に対し、女(男)にできるはずがないと性差別によって批判するハラスメントです。

マリッジハラスメント(マリハラ)

独身者に結婚しない理由をしつこく尋ねたり、「早く結婚したほうがいいよ」や、「そんなことだから結婚できない」などの発言で相手を不快にさせたり傷つけたりすること。「まだ子どもつくらないの?」という質問も、不妊治療で悩む人にとっては深く傷つきます。

言う側としては「結婚して幸せになってほしい」という気持ちもあり、悪気なく言っている場合もあるでしょうが、言われた側が不快に感じる恐れがあることを理解する気持ちが求められます。

レイシャルハラスメント(レイハラ)

racial(人種)の意味から、特定の人種、民族、国籍に関する偏見に基づく嫌がらせのこと。日本で働く外国人労働者たちが仕事でミスをした際、その人の国を非難する言葉を浴びせたり、不当な扱いを受けたりするケースがあります。

自国や民族に誇りを持っている人たちに対して、国や民族が批難されることは耐え難い屈辱です。国際化が進む一方で、色濃く残る差別意識は早急に解決したい問題です。

身体に関するハラスメント

身体に関するハラスメント

スモークハラスメント(スモハラ)

職場などで非喫煙者がタバコの煙にさらされるなど、喫煙に関する嫌がらせを受けること。喫煙を強要されたり、タバコを吸っていなくても、タバコを吸っている人のまわりにいるだけで煙を吸ってしまうこと(受動喫煙)で、健康を害したり、タバコの煙にさらされない自由が侵害されることが問題視されています。

アルコールハラスメント(アルハラ)

お酒の席でアルコールを強要したり、お酒が飲めない人をからかったり侮辱したりすることを指します。「俺の酒が飲めねえのか!」といった昔の飲み会の常とう句もいまでは完全にアウトです。アルコールを無理に勧めることは、命の危険にも関わるため法律でも禁止されています。

ヘアーハラスメント(ヘアハラ)

近年は職場でも長髪の男性が増えてきましたが、いまだに男性の長髪は非常識と感じている人がいるようです。そう感じる人たちから髪を切ることを強要されるのがこのハラスメントです。

スメルハラスメント(スメハラ)

口臭や体臭など臭い(smell)で周囲を不快な思いをさせる嫌がらせのこと。臭いの元となる本人は、自分の口臭や体臭に自覚がないこともあり、本人にどう気づかせるかが難しい問題と言えます。

また、香水など自分がいい匂いだと思っていても、他の人にしてみたら不快に感じることもあります。こうした臭いの問題から「加齢臭」や「おやじ臭」といった言葉も生まれたほど。周囲へのエチケットとして、食後に歯を磨いたり、汗をかいたらデオドラントシートで拭いたりすると良いでしょう。

その他のハラスメント

その他のハラスメント

カラオケハラスメント(カラハラ)

飲み会の延長でカラオケに行く機会もあるかと思いますが、その際、カラオケが嫌い・苦手な人に、強制的に歌わせようとすることを指します。本人が嫌がっているのに無理やりマイクを持たせたり、なかには本人に聞かずに勝手に曲を指定して歌わせようとしたりするのはハラスメントになります。

ドクターハラスメント(ドクハラ)

病院で診察を受けた際、医師の言葉や態度により患者が不快な思いをすることを指します。患者への何気ない一言が、上からの物言いや威圧的に感じられたりすることがあります。なかには、治療の説明を求めると、ため息をついたり面倒くさそうな態度をとる医師も。

いっぽう、患者側には「モンスターペイシェント」という存在がいるため、そうした患者さんとはあえて取り合わないというケースもあるようです。

シルバーハラスメント(シルハラ)

介護疲れをした肉親や介護スタッフによる高齢者に対する嫌がらせや介護の拒否を指すハラスメントです。介護を必要とする人のプライドを傷つけるような言動や介護拒否もシルハラにあたる行為としてとらえられます。

家事ハラスメント(カジハラ)

家事という重労働を女性に押しつける社会の行為を指すハラスメントです。いっぽう、夫が家事をする際、洗濯物のたたみ方や、お皿の洗い方などにダメだしすることも、同様にカジハラと呼ばれます。

いま注目のハラスメント

セカンドハラスメント(セカハラ)

これまで紹介したさまざまなハラスメントを見ても、その被害に悩む人々は相当数にのぼることでしょう。セカンドハラスメントは、被害を受けたハラスメントについて上司や同僚に相談したことによって、被害者が相談相手に責められたり、社内でさらなる嫌がらせを受けるハラスメントです。

救いを求めて必死の覚悟で相談したのに、「あなたにも要因があったのでは?」「自業自得では?」などと思いもよらない言葉を返され、さらにショックを受ける(二次的に被害にあう)ことに。なかには、「言いがかりをつけている」と状況が一変し、被害者に訴えられる前に証拠を隠蔽しようとするケースもあると言います。

つねに相手を思いやる気持ちでハラスメントのない社会を

働く環境やその時代の価値観などによって新しいハラスメントが生まれ、時代とともにハラスメントの定義も異なる可能性があります。そのため、その発言や言動がハラスメントにあたるか否かは、とても判断が難しいところですが、「相手に不快な思いをさせない」ということだけは不変の定義と言えるのではないでしょうか。

つねに相手のことを思いやる気持ちを大切に、ハラスメントのない社会を目指したいものですね。

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