海外旅行での感染症予防は必須?渡航先によっては要注意!

海外旅行での感染症予防は必須?渡航先によっては要注意!

人間の歴史は感染症との闘いといっても過言ではありませんでした。ヨーロッパではペストやコレラの大流行が歴史的な影響を与えました。感染症の流行のたびに政治や治安だけでなく衛生環境の整備に人々は心を砕くようになりました。それらの陰には人々の交流もあったのです。今日の人類の発展の陰には感染症といかに向き合ってきたかという私たちの歴史も隠されているのです。

海外渡航者数の上昇

年々上昇の傾向を見せていた海外からの訪日旅行者数が2016年、ついに2000万人を超えました。日本からの海外旅行者の数もこれを追って年々増加しています。2015年の統計では1621万人の日本人が海外旅行に行っているといます。日本は現在、毎年人口の6分の1の外国人を招き入れ、7人に1人の日本人が海外に行くようになっています。

国際的な観光客の数という意味では国連世界観光機関(UNWTO)の統計で2015年11億8000万人、これは前年比4,4%増で過去最高です。この中心になっているのが中国、アメリカ、イギリスですがこの総数は世界人口の7人に1人にまで登っています。

これだけの数の人々が世界を飛び回るようになった現代。世界は私たちが考えていた以上に狭くなっているのかもしれません。これから海外との交流はますます増えると考えられます。

世界各地との交流で懸念されること

世界各地との交流で懸念されること

海外との交流によって違う国の人の文化に接することになります。文化の交流は豊かな人間関係を生みます。未知の人との交流は新しい文化をはぐくむでしょう。さらに経済的な効果も生みます。文化や経済の発展に大きな効果を生むことでしょう。今後も国境を超えた世界の人々との交流は大いに望まれることではないでしょうか。

しかし、世界の人々が交流することで懸念されることもあります。それが感染症などの病気の流行です。コロンブスがアメリカ大陸を発見した時に梅毒をヨーロッパに持ち帰ることになったというのは知られた事実です。歴史上の感染症の流行の背景には国外からの来訪者があったともいわれているのです。

未知の人々との交流は私たちの経験したことのない病気との出会いも隠されていたのです。病気は恐ろしいものです。まして、初めて襲われる症状は必要以上の不安をかきたてます。現地の人々にとっては既知の一般的な病気であっても、初めての症状に襲われて、うまく対処できずに、症状を悪化させてしまうようなこともあります。どんな病気なのかわかっているだけでうまく対応できるのに、初めてということでうまく対応できないこともあるでしょう。衛生環境や病気については人や文化の交流とは別な配慮が必要なのです。

旅行は風土病との闘いの歴史だった

人類にとって冒険は大きなロマンです。アフリカ大陸の草原で発生したといわれる私たち人類は、何万年もかけて地球上のあらゆる所へ住処を求めていきました。人類は見知らぬ土地への興味を本能的に刷り込まれているのかもしれません。

大航海時代のヨーロッパは船を操って世界各地に出かけて行きました。中国の絹を求めてシルクロードを歩きました。自分たちの知らない遠い土地で出会った珍しいものに時に恐れを感じつつも関心を抱き、受け入れえようとしました。

そして様々な困難を乗り越えて、旅をつづけたのです。その中で、人々を最も苦しめたのが病気だったのです。見知らぬ土地ではその土地独特の病気が存在しました。現在でも恐れられる多くの感染症は、それぞれの地域に存在した風土病であったものがほとんどです。

初めてその土地を訪れ、その土地独特の病気に侵されてしまう。自分では全く経験のない症状に襲われ、その病気がどう進行してどうなるのか予想もつかない。風土病に侵された旅行者にはそれはそれは恐ろしいことだったのではないでしょうか。

現代は衛生状態もよくなって感染症や病気に対して意識が高まってきています。それでも、「国が変われば水が変わる」といわれるように、旅先で体調を維持するのは大変です。

検疫制度の歴史

検疫制度の歴史

古くから対外貿易の盛んだったヨーロッパではオリエント地方との交流の中で、たびたび感染症の大流行を経験しました。オリエントから来た船が来航するたびに感染症が広がるという事実がありました。

1347年黒死病の大流行以来、イタリアのヴェネチア共和国は感染症に罹患した可能性のある船が来航した場合、船内に感染者がいないことを確認するため、多くの感染症の潜伏期間である40日間ヴェネチアやラグーサ港外に強制的に停泊させるという法律を作りました。これが現在の検疫制度の始まりといわれています。

感染症が発症して感染が広がらないように、潜伏期間から発症して症状が収まる前に相当する期間、国内に入ることを禁じたのです。日本でも明治以降感染症の流行の恐れがある船を40日間留め置く「コレラ船」という制度を設けました。海外渡航が盛んになるにつれ、感染症の流入は大きな懸念材料になっていったのです。

海外旅行の際、入出国に伴って、税関、検疫、など出入国については多くの手続きが必要です。それらの基本は感染症などの保健衛生の保持だったのです。

現在でも海外からの動植物や土などの持ち込みについて厳しい制限が設けられています。それらはすべて感染症にかかわる病原体の持ち込みを国境で防止しようとする検疫制度のためなのです。

渡航先によっては要注意

グローバルスタンダードによって海外との交流が進むにつれて、世界のそれぞれの地域との平準化は進むのでしょう。しかし、保健衛生の平準化は政治や経済より困難ではないでしょうか。国家は経済的に安定して、政治的にも落ち着きをみせ、始めて保健衛生まで行き届くものです。それでもそれぞれの地域ごとに風土的特徴が違います。渡航先で体調を崩してしまうことはそれでもあるのです。そこに感染症などの病原体が入り込んでしまうことはありがちです。

さらに渡航先で感染症が流行しているケースもあります。感染症も人間や動物を宿主とした生き物です。絶えずどこかの地域で感染を広めています。それらの地域に渡航した際は感染症に侵されないように十分な配慮が行われなければいけません。それは海外渡航の機会が増えた現代ならではの常識といっても過言ではないのです。

世界の主な感染症と症状

世界の主な感染症と症状

デング熱

デングウイルスによって感染する熱病。蚊がウイルスを媒介します。感染後3から7日後38度以上の発熱に襲われ、頭痛、目の奥の痛み、筋肉痛、関節痛に襲われます。発熱して3から4日して胸やお腹に赤から桃色の発疹が出て手足に広がります。発症して1週間ほどして解熱回復しますが、一部に歯茎から出血したり、血便、血尿を見ることもあります。重篤化してショック症状を引き起こすこともあります。

アジア、中東、アフリカ、中南米を中心に年間1億人の患者が発生しています。そのうち25万人以上が重篤化しています。

ジカ熱

ジカウイルスによって感染する熱病。蚊によって感染します。数日から1週間の潜伏期間ののち発症します。症状は軽度の発熱、結膜充血、頭痛、筋肉痛、関節痛などです。デング熱に似た症状ですが、いずれも軽度で、4から7日で症状も収まります。ただし、母子感染を引き起こす可能性があり、小頭症やギランバレー症候群などの症状を引き起こします。有効な薬剤やワクチンもありません。

アジア、アメリカ、中南米の太平洋岸で流行しています。

黄熱病

黄熱ウイルスによって発症する感染症。蚊によって媒介されますが、人から人への直接感染はありません。発熱を伴い重症患者に黄疸がみられることからそう呼ばれます。

潜伏期間は3から6日で突然の発熱、頭痛、背部痛、虚脱、嘔吐などに襲われます。3から4日でいったん症状が収まり、そのまま回復することもありますが、数時間から数日後に再発することもある。腎障害や歯根、鼻などからの出血、黒色嘔吐、下血、黄疸などの重篤症状を起こし、死に至ることもあります。死亡率も高く30から50%といわれています。アフリカ中南米地域などで発生しています。

特効薬はなく対処療法するしかないですが、予防接種は可能です。流行地域では入国に際して予防接種が行われています。

エボラ出血熱

エボラウイルスにより感染する熱症です。直接接触や飛沫感染など感染力の強い感染症です。咳やくしゃみなどで感染しますので、注意が必要です。そのため患者に触れたり体液などでも感染します。

潜伏期間は4日から9日間、発症すると発熱、頭痛、関節痛、悪寒、脱力などインフルエンザに似た症状が起こります。エボラ出血熱の症状はそれだけではありません。エボラウイルスは体内に侵入すると、細胞内に入り込み増殖します。さらに体内の細胞に入り込みながら、細胞自体を破壊するたんぱく質を作り出すのです。この細胞破壊の蛋白は血管などに付着して血管を破壊、内出血を引き起こします。さらに貧血、血圧低下、下痢、嘔吐、下血、最後には臓器不全を併発し、外出血など多くの症状を引き起こします。

さらに重篤化すると昏睡状態になり、ショック症状から死に至るケースもあるのです。感染から死に至るまで10日余り。症状に進行が速いため早急な対応が必要といわれています。

治療薬はなく対処療法で対応します。致死率も高く60%といわれています。西アフリカの地域で流行が確認されましたが、世界の各地でも感染が確認された現在要注意の感染症です。

マラリア

結核、エイズとともに世界三大感染症といわれています。マラリア原虫を蚊が媒介することで感染します。熱帯や亜熱帯で年間約3億人が感染して、50万人以上が死亡しています。症状は悪寒や震えをともなう発熱から始まり、それが1〜2時間ほど続きます。その後、悪寒は治まりますが、熱は40度くらいまで上昇。やがて、顔面の紅潮、呼吸が苦しくなる、結膜の充血、頭痛、嘔吐、筋肉痛などが起こります。その状態が4から5時間ほど続くと、大量に汗が出て解熱します。

これらの症状が繰り返されることで体力を消耗して死に至るのです。

最後に

海外旅行での感染症予防は必須

このように海外旅行での感染症予防は必須と言えるのではないでしょうか。海外へ行く前は、感染症についての情報をしっかりと集め、渡航先によっては感染症に侵されないように十分な配慮を行なうようにしてください。

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