酉の市とは?意味や由来、熊手が売られている理由などを解説

酉の市とは?意味や由来、熊手が売られている理由などを解説

毎年11月になると関東地方を中心に全国の神社やお寺で酉の市が開催されます。この酉の市は全国的規模の行事であり、テレビなどでもよく取り上げられています。多くの人が熊手を求める姿は非日常的な光景ですが、とても華やかな雰囲気も感じることができます。

しかし、この酉の市ですが、なぜこのような名称で呼ばれているのでしょうか?また酉の市の定番アイテムでもある熊手にはどのような意味が込められているのか?今回は酉の市の意味や由来、熊手が販売されている理由などを徹底解説します。

酉の市って何?

酉の市とは鷲神社(おおとりじんじゃ)、大鳥神社、酉の寺など、鷲や鳥にゆかりがある寺社で行われている行事です。酉の市が行われるのは毎年11月の酉の日であり、ここで熊手や招き猫などの縁起物を購入し、1年の無事の報告と翌年の福を願うことになります。

酉の市は全国各地で行われている行事ですが、特に有名なのは東京・浅草の「鷲神社」や神奈川県横浜市の「金毘羅大鷲神社」で開催される酉の市です。酉の市当日は商売繁盛、勝利祈願、開運、家族の安全などを祈願する人たちでとても華やかな賑わいを見せます。

11月の酉の日っていつなの?

酉の日は日常生活であまり耳にすることがないため、中には「酉の日っていつ?」という方もいるでしょう。酉の日とは「十二支の酉にあたる日」のことです。これは酉年生まれと同じで、中国の十千(じっかん)と十二支の考えを日にちに当てはめたものとなります。

年は酉年、月は酉の月、日は酉の日となります。つまり酉の日というのは12日ごとに巡ってくるため、毎月必ず2回は酉の日と呼ばれる日があります。

日めくりカレンダーなどを見ていると「丁酉」「己酉」「辛酉」という漢字を見かけたことがあるかもしれませんが、この「酉」という文字が入っている日が「酉の日」と呼ばれるものです。

ちなみに11月最初の酉の市のことを「一の酉」と呼び、2回目、3回目の酉の市はそれぞれ「二の酉」「三の酉」といいます。

前述のように酉の日は12日周期で訪れるため、年によって酉の市が開催される回数が2回、3回と変わります。2017年~2021年の酉の市の日程は以下のようになっています。

一の酉 二の酉 三の酉
2017年 11月6日(月) 11月18日(土) 11月30日(木)
2018年 11月1日(木) 11月13日(火) 11月25日(日)
2019年 11月8日(金) 11月20日(水) なし
2020年 11月2日(月) 11月14日(土) 11月26日(木)
2021年 11月9日(火) 11月21日(日) なし

ご覧のように酉の市は平日に開催されることも多いため、年によって参拝者の数にもばらつきがあるようです。ちなみに2017年は12年に一度の酉年でもあったため、多くの人が酉の市に足を運んだことがニュースなどでも報じられました。

酉の市では何をするの?

酉の市では何をするの?

酉の市は今年1年の無事の報告と翌年の幸福を祈願するお祭りです。そして酉の市で必ずすることといえば、熊手を買うことです。酉の市で多くの人が熊手を購入するシーンは、テレビでご覧になった方も多いと思います。

実はこの熊手、詳細は後述しますが酉の市では運や福、商売繁盛を招く縁起物として扱われています。名物「縁起熊手」にはおかめや招福の縁起物が飾られており、酉の市ではこの熊手を購入し、新年の幸福や商売繁盛を願うのが王道の楽しみ方です。

縁起熊手の買い方は参拝後に露店で購入するのが定番ですが、決まったルールというのは存在しませんので、縁起熊手を購入してから参拝するという順序でも問題はありません。

また酉の市は焼きそば、フランクフルト、チョコバナナといった現代の定番の食べ物から「八頭(やつがしら)」や「切山椒(きりざんしょう)」など酉の市ならではの縁起物の食べ物も販売されています。そのため、食べるのが好きという方も酉の市を思う存分楽しむことができます。

酉の市の由来は?

酉の市には複数の由来が存在します。ここでは酉の市の起源となった説を3つご紹介します。

神道

神道の解説によると大鳥神社(鷲神社)の祭神である日本武尊が亡くなったとされる11月の酉の日に大酉祭が行われます。この大酉祭の日に立った市が、酉の市の起源になるということです。

また浅草・鷲神社の社伝によると、日本武尊が鷲神社に戦勝のお礼参りをしたのが11月の酉の日であり、この際に社前の松に武具となる熊手を立て掛けたことが、酉の市で熊手が縁起物として扱われるようになったとされています。

仏教

仏教の酉の市の由来は1265年(文永2年)の11月の酉の日に、日蓮宗の日蓮上人が上総国鷲巣(現・千葉県茂原市)の小早川家(現在の大本山鷲山寺)で、国家の平穏を祈ったところ、明星(金星)が明るく輝き、鷲の背に乗った鷲妙見大菩薩(わしみょうけんだいぼさつ)が現れました。

これにちなみ浅草の長國寺では11月の酉の日に鷲山寺から鷲妙見大菩薩の出開帳(本尊などの仏像や寺宝をよそに運び、開帳すること)が行われるようになりました。

その後、1771年(明和8年)に長國寺に鷲妙見大菩薩が勧請(神仏の分霊を迎え入れること)され、11月の酉の日に開帳されるようになったということです。

花又の農民たちによる収穫祭

酉の市は宗教的な考え方以外にもその由来はあります。それが花又(現・東京都足立区)の鷲妙見大菩薩(別名・鷲大明神)の近在農民たちが行っていた収穫祭が起源であるという説。

鷲大明神は別名「鶏大明神」とも呼ばれており、氏子(氏神が守ってくれる範囲に生まれた者)たちには、鶏肉を食べないというルールが存在していたようです。

そのため、鷲大明神の収穫祭になると、氏子たちは生きた鶏を奉納し、終わった後は浅草寺観音堂の前に放すのが習わしだったとのことです。酉の日に立つ市は江戸中から多くの参拝者が訪れたといい、社前では辻賭博も開帳されました。

しかし、安永2年に幕府から賭博禁止令が出されたことで、その賑わいは衰退。代わって酉の市の盛り上がりは浅草の鷲大明神に移り、最も盛大な酉の市として現在に至っています。

酉の市で熊手が縁起物として売られている理由

酉の市で熊手が縁起物として売られている理由

酉の市に詳しくない方が疑問に感じるのは「なぜ熊手が縁起物として扱われているのか?」という点ではないでしょうか。ここでは熊手が縁起物として売られる理由をまとめましたのでご覧ください。

「運をかき込む」「金銀を集める」ことができる道具

熊手とは長い柄の先に、竹製の曲がったつめを扇状に付けた道具のことです。その形が熊の手のように見えることから「熊手」という名が付けられています。

熊手は落ち葉などをかき集める道具として使用されていますが、ここに熊手が縁起物として扱われる理由があります。

商売人のちょっとしたシャレとでもいうべきか、熊手は「運もかき込める道具」「金銀もかき集められる道具」ということで、次第に縁起物としてみなされるようになりました。

やがて熊手は縁起が良いとされる七福神、松竹梅、大判小判などの飾りが施され、見た目もオシャレな縁起熊手として現在に至っています。

鷲の爪の鷲掴み

熊手は熊の手以外にも、鷲が獲物を鷲掴みにする爪の形にも似ています。このことから熊手には「福や運を鷲掴みする力がある」ともされ、縁起物になったという説もあります。

勝利を祈願した軍扇

その昔、武将が戦場へ赴く際、勝利を祈願して神仏に奉納した軍扇がありました。この軍扇は勝ち戦から戻ってくると、熊手のような形になっていたということです。

この話にあやかって熊手が「開運や勝利を招く道具」としてみなされるようになったという伝えもあります。

酉の市で初めて熊手を購入するときは小さいサイズがおすすめ

酉の市での熊手の買い方にも独特のルールが存在します。その中でも特によくいわれるのが「熊手を初めて買うときは小さいサイズがおすすめ」というものです。

初めて酉の市で熊手を購入する方は価格で決めてしまいがちですが、熊手を販売する店主たちはこのような買い方は推奨できないといいます。これは初めに大きな熊手を買った後に、翌年小さいものに買い替えると「福徳が下がる」といわれているためです。

熊手はお守りと同様に毎年買い替えるのが基本です。そして商売が少しずつ繁盛していくように、熊手も年々大きいサイズのものにしてくのが良いとされています。

ちなみに酉の市で何十年も熊手を買っていると、これ以上大きいサイズの熊手がないということもあるかもしれません。

このような場合は前年購入したものと同じサイズの熊手でも問題はないといいます。酉の市には酉の市ならではの熊手の買い方がありますので、今年初めて参拝する方や詳しくない方などは露店の店主に質問しながら購入する方法もありです。

酉の市で熊手を購入するときは値切るの?

酉の市で熊手を購入するときは値切るの?

酉の市で熊手を購入するときには「粋な買い方」というのがあります。それが価格を聞き、値切るというもの。通常、縁起物を買うときには値切ることはしません。なぜなら値切ることで運も切ってしまうからです。

しかし、酉の市で行われる値切りは通常の値切りとは多少異なった点があります。まず酉の市での値切りの手順は以下のとおりです。

  1. 店主に熊手の価格を聞く
  2. 3段階に分けて値切る
  3. 値切り交渉成功
  4. 値切り前の価格で支払い、お釣りはご祝儀として店主に渡す
  5. 手締めをする

ご覧のように値切りはしますが、その後のお釣りはご祝儀として店主に渡すため、最終的には最初の価格どおりに支払うことになります。これが酉の市で粋だとされている熊手の買い方です。

値切り交渉に「買った」「負けた」といい交わして、交渉後にご祝儀を渡してお大尽気分(大金持ち)を味わい、熊手屋はご祝儀を貰って良い気分になる。これが昔の酉の市の楽しみのひとつであったとされています。

近年は値切り交渉や手締めを行わないお店もあるといいますが、店主と仲良くなり、毎年顔を見せればやってくれる可能性もありますので、興味がある方は積極的にチャレンジしてみましょう。

酉の市で熊手以外に見られる縁起物を紹介!

酉の市では熊手ばかりに注目が集まりがちですが、実はその他にもご利益があるとされる縁起物があります。ここでは酉の市で熊手以外に見られる縁起物を3つご紹介します。

熊手守り

熊手は各露店で自分のお気に入りのものを購入することになりますが、酉の市を開催する寺社からは小さな竹熊手に稲穂やお札を付けた熊手守りが授与されます。

この熊手守りですが「福をかき込む」ということから、通称「かっこめ」とも呼ばれています。この熊手守りと縁起熊手は自宅の神棚、仏壇、居間などに飾るのが一般的です。

八頭

酉の市に足を運ぶと、大きな芋が売られているのが目に入ってきます。この芋は「八頭」というもので、古来より「頭の芋(とうのいも)」と呼ばれています。八頭は「人の頭に立つように出世できる食べ物」とされています。

また、八頭はひとつの芽から多くの芽が出るため「子宝にも恵まれる」ともいわれています。錦絵などにも江戸の庶民が八頭や熊手を買い求めている姿が描かれているように、八頭は昔から人々に親しまれていた歴史ある縁起物です。

近年は八頭を販売する屋台は減っているともいわれますが、近くの酉の市で見かけた際にはぜひ熊手と一緒に購入してみましょう。

黄金餅(こがねもち)・切山椒

酉の市で欠かすことができない縁起物に黄金餅と切山椒があります。黄金餅は粟餅(あわもち)の別名といわれています。

この粟餅は餅米5分、粟5分の割合でついて作った黄色い餅のことであり、この色が金色に輝く小判に似ていたため「お金持ちになれるように」という意味も込めて売られていました。

そして現在、この黄金餅に代わって販売されているのが切山椒です。切山椒は正月用の餅菓子であり、上新粉に砂糖と山椒の粉を加えたものです。短冊形になっているのが切山椒の特徴でもあります。

山椒は日本では最古ともいわれる香辛料で葉、花、実はもちろんのこと、幹や樹皮に至るまで余すことなく利用できる落葉低木です。

この捨てる部分がないという点が「有益である」ことから切山椒が縁起物として売られるようになりました。ちなみに江戸時代は今のように甘いお菓子が少なかったため、市のときには多くの人に大変喜ばれたとのことです。

歴史ある酉の市に足を運んで一年の無事の報告と来年の福を祈願しよう!

今回は11月の酉の日に行われる酉の市に関する基本を解説しました。酉の市はニュース番組などでも報じられるため、ご存じの方は多いと思いますが、意味や由来までは知らないという方がほとんどです。

酉の市は今年の無事の報告と翌年の福を祈願する秋の一大行事のひとつです。開運、商売繁盛を招く熊手や熊手守り、ご利益があるとされる八頭、切山椒などさまざまな縁起物に触れることで、気分的にも良い影響を与えること間違いなしです。今年は普段とは違う雰囲気を存分に味わえる酉の市に足を運んでみてはいかがでしょうか。

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