元はみんな同じ茶葉って本当?緑茶・紅茶・ウーロン茶などの製法を解説

元はみんな同じ茶葉って本当?緑茶・紅茶・ウーロン茶などの製法を解説

お茶にはさまざまな種類があり、食事やデザートに合わせて選ぶことも多いものです。色・香り・味の異なる緑茶や紅茶、ウーロン茶…。それぞれ違う種類のお茶の葉だと思っている方も多いかもしれませんが、これらの茶葉の原料はすべて同じなのです。

今回は、元は同じ種類の葉である緑茶、ウーロン茶、紅茶、プーアル茶の製法などについてご紹介いたします。お好きなお茶がどのように作られているのか知ると、お茶の時間がもっと楽しくなるかもしれません。ぜひ最後までご覧ください。

緑茶やウーロン茶、紅茶などの茶葉は一緒

緑茶は日本のお茶、ウーロン茶は中国のお茶といった印象があるかもしれません。また、紅茶は世界のお茶生産量の70%を占め、世界中で生産されているため、海外のお茶というイメージがあることでしょう。しかし、緑茶、ウーロン茶、紅茶、プーアル茶の4種類のお茶は、すべて同じお茶の葉から作られています。

原料は茶の木

緑茶、ウーロン茶、紅茶、プーアル茶の4種類は、同じ「茶の木(カメリア・シネンシス)」の新芽を摘んで加工したものです。茶の木はツバキ科ツバキ属の常緑広葉樹であり、その土地に合わせて改良されたものもありますが、原料としては同じ種類なのです。

それではなぜ、色や香り、味などが違うのでしょうか。

発酵の方法や度合いが異なる

それぞれのお茶に個性があるのは、発酵の方法や度合いが異なることに関係します。発酵といっても、茶葉における発酵とは含まれる成分が酸化することを指します。摘みたての茶葉は鮮やかな緑色をしていますが、「ポリフェノールオキシダーゼ」という酸化酵素が含まれているため、摘んだ後は徐々に発酵が進み、成分が赤みを帯びていきます。発酵の過程で茶葉の色や香りが変化していくため、それぞれのお茶は色も香りも異なるのです。

発酵の方法や度合いにより、お茶は次の4種類に分類されます。

  • 不発酵茶…緑茶
  • 半発酵茶…ウーロン茶
  • 発酵茶…紅茶
  • 後発酵茶…プーアル茶

それでは、それぞれのお茶の製法などについて詳しくご説明いたします。

緑茶

緑茶

緑茶は、発酵させないで作る「不発酵茶」です。製法によってさまざまな種類がありますが、どれも不発酵茶という点は共通しています。

緑茶の製法

茶葉は、摘んだままにしておくとすぐに発酵がはじまります。緑茶の茶葉は、摘んだら鮮度が落ちないうちにすぐに蒸すか炒るかして、揉みながら乾燥させます。摘んだ茶葉にすぐ熱を加えることによって発酵が止まるので、茶葉はきれいな緑色を保つのです。緑茶には煎茶や玉露などの種類がありますが、ほとんどは高温で蒸す方法で製造されます。釜で炒るお茶は「釜炒り茶」と呼ばれます。

緑茶の種類

製法や加工法によって、さまざまな種類があります。緑茶の種類を2つご紹介いたします。

煎茶

日本で流通する日本茶の8割を占めるといわれています。煎茶は摘み取った茶葉をすぐに蒸し、揉みながら熱を加えて乾燥させます。

まずは摘み取った茶葉をすぐに蒸気で加熱。熱を加えることによって酸化酵素の働きを抑え、発酵を防ぎます。この工程で茶葉の緑色を保ち、青臭さも除去。しかし、蒸した茶葉を高温のままにしておくと鮮やかな色合いが失われてしまうため、風を送って冷却します。その後は熱風を当てて打ちほぐし、茶葉を回転させながら揉みほぐすことで水分を均一に保ちます。

それから再度熱風を当てて揉みながら乾かし、最後に凹凸のある板で力強く揉むことで、細長くよれた茶葉に仕上げます。形が整った後に再度十分に乾燥させることで、生茶葉の1/4から1/5の重さに減少。長期の貯蔵に耐えられるようになります。

釜炒り茶

緑茶の大半は蒸して製造されますが、日本の一部の地域では、釜で炒る「釜炒り茶」が作られています。一般的な煎茶にはない、独特の香りや風味が特徴です。この香りは「釜香」と呼ばれる独特の香ばしさをもち、ほうじ茶にも含まれる「ピラジン」という香り成分が含まれているといわれます。生産量が少ない希少なお茶のため、なかなか出会えないかもしれません。

釜炒り茶は、摘み取った茶葉を釜で炒り、釜の中でかくはんしながら乾燥させます。そのため細長い煎茶とは異なり、勾玉状の形です。

ウーロン茶

ウーロン茶

緑茶とは違い「半発酵茶」なので、製造工程において発酵させる作業がおこなわれます。

ウーロン茶の製法

日本のお茶は、若い芽の多いものが上質とされます。しかしウーロン茶の場合、芽が若いと苦味が強く、香りも悪くなるといわれ、日本のお茶より大きい葉が摘まれます。摘んだ茶葉を放置して萎れさせる「萎凋(いちょう)」という工程によって成分が変化しやすくなり、酸化酵素の働きを促進。萎凋することで、ウーロン茶は特徴的な香りを発します。

茶葉は、晴れていれば天日にさらしますが、曇天時は室(むろ)で干して萎れさせます。茶葉を揺すりながら数回かくはん(揺青)することにより、ウーロン茶特有の香りを引き出すのです。葉の周辺が茶色に変化しはじめたら茶葉を高熱で炒り(殺青)、発酵を止めます。

ウーロン茶は、「不発酵茶」の緑茶と「発酵茶」の紅茶の間に位置する「半発酵茶」であるため、萎凋の度合いによって緑茶に近い色のものもあれば、発酵が進んで紅茶に近いものもあります。両方のお茶の魅力を兼ね備えており、銘柄によってさまざまな発酵のバリエーションを楽しめます。

ウーロン茶の種類

ウーロン茶は非常にバリエーションが豊富です。その理由には、半発酵茶であることが関係しています。半発酵茶は、発酵度10〜80%のものを指すため、幅広いお茶がウーロン茶に分類されるのです。

たとえば台湾烏龍茶を代表する凍頂烏龍茶は、薄い金色で爽やかな香りが特徴です。また、東方美人茶は発酵度が高く、紅茶に近い味わいです。

紅茶

紅茶

紅茶は「発酵茶」に分類されます。ウーロン茶のように途中で発酵を止めることなく、最後まで発酵させる製造方法がとられます。芳醇な香りと、赤やオレンジなどの赤褐色が特徴です。

紅茶の製法

紅茶の茶葉は、1本の茎に2枚の葉がついた状態でたんねんに手摘みされます。日本では初夏に茶摘みをしますが、紅茶の原産地では年に4回も茶摘みがおこなわれます。まずは4月中旬に春摘み(ファーストフラッシュ)、続いて5月には夏摘み(セカンドフラッシュ)、6・7月には三番茶(サードティー)が摘まれ、10月に秋摘み(オータムナル)がおこなわれます。年間を通して温暖な地域では、ファーストフラッシュを摘んでもすぐに次の葉が成長するため、季節ごとに新茶が味わえるのです。

茶葉は揉んで発酵を促しますが、摘みたての葉は硬くて揉めないため、ウーロン茶と同じように「萎凋」の作業をおこないます。従来は日陰干しがおこなわれていましたが、最近は萎凋槽で10時間程度かけて温風を送り、茶葉を萎れさせる人工萎凋が大半です。その後は、機械にかけて揉むことで茶葉を傷つけ、発酵を促進します。よく揉まれた葉を、室温や湿度を調節した部屋に放置して発酵を進めます。発酵しすぎると香気が悪くなるため、適度な色、香りになったところで乾燥の工程に入り、発酵を止めます。100度近い高温熱風の乾燥機にかけられて乾燥することによって、紅茶らしい香りがしてきます。

最後に茶葉はふるいにかけられ、形状や大きさで等級区分ごとに分けられます。等級といっても品質に関係するものではなく、サイズや外観を表すものです。たとえばOP(オレンジペコー)は、7〜11㎜の細長くて大型の茶葉です。OPをカットした2〜4㎜のものは、BOP(ブロークンオレンジペコー)、1㎜以下でサイズが最も細かい粉状の茶葉は「ダスト」と呼ばれます。

紅茶の種類

紅茶は世界20カ国で生産されており、産地の気候によって品質や香りに特徴があります。世界最大の紅茶の原産地はインドであり、紅茶のシャンパンとも呼ばれる「ダージリン」、ミルクティーに合う「アッサム」など、茶葉の種類が豊富です。スリランカも主要産地で、世界三大紅茶に挙げられる「ウバ」や、かつての国名でもある「セイロン」などが有名です。

プーアル茶

プーアル茶

中国原産のプーアル茶は「リパーゼ」という脂肪分解酵素を含むため、ダイエットティーとしても人気があります。

プーアル茶の製法

プーアル茶は、後発酵という製法で作られます。緑茶同様、茶葉を摘んだらすぐに熱して発酵を止めるのですが、その後に発酵させるのが大きな特徴です。製造工程の違いにより「生茶」と「熟茶」に分類されます。

茶葉の酸化を止めた後、風通しのよい倉庫でゆっくりと自家発酵させるものは、「生茶」と呼ばれます。一方、「熟茶」は麹菌などの微生物によって発酵を促し熟成させたお茶です。
プーアル茶の色は黄色から褐色で、長期熟成したものは香りや味がよいという特徴があります。

まとめ

原料となる茶葉が同じでも、緑茶やウーロン茶、紅茶、プーアル茶は、それぞれ色も香りも味も違います。また、発酵の度合いが異なることでバリエーション豊富な味と香りが楽しめるウーロン茶、世界中でさまざまな種類が生産されている紅茶など、同じ種類のお茶であっても楽しみ方は実にさまざまです。

多くの方々になじみ深い緑茶にも、蒸す工程の長さによって、すっきりした味わいの「浅蒸し」やコクのある「深蒸し」などがあります。製法によって、さまざまな味や香りが楽しめるお茶の世界はとても奥深いので、違いを意識しながら楽しんでみてはいかがでしょうか。

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