2018年3月25日 | お役立ち情報
結婚したら扶養に入るべき?入らないべき?条件や各種手続きまとめ
結婚をすると夫の扶養に入るか、入らないかで悩むことがありますよね。扶養に入ることで今後の働き方にも影響が出てきますから、多くの人は慎重に考えていることと思います。自身が損をしないためには、扶養のメリットやデメリットなどをしっかりと把握しておくことが大切です。
そこで今回は夫の扶養に入るか否かで悩む女性のために、扶養の基礎知識や条件、各種手続き方法をまとめましたので解説します。
扶養とは何か?
結婚している女性からよく聞かれるのが「扶養の範囲内で働きたい」という言葉です。この扶養という言葉自体はよく聞かれますが、具体的にはどのような意味なのでしょうか?一般的に扶養とは「生活能力がない人(経済的に一人で生活するのが難しいなど)の面倒を見る」ことです。
「扶養家族」とはその対象になっている家族を指します。基本的に自分で働くことができない子どもなどは当然のことながら父親、母親どちらかの扶養に入ることになります。またひと昔前は結婚を機にして夫の扶養家族になるのが当たり前でした。
しかし、近年は不景気の影響もあり、夫婦共働き世帯も増加傾向にあります。このような場合女性は夫の扶養家族に入るか、入らないかで悩むことがよくあります。悩む理由の詳細は後述しますが、扶養家族に入るか否かで税金や社会保険制度、働き方などに大きな影響が出てきます。
ちなみに扶養に入るにしても、入らないにしてもそれぞれにメリットとデメリットがあります。したがって現在、扶養に関する悩みを抱えている方は、事前に扶養の基礎知識を学んでおきましょう。扶養の基礎知識を学ぶことで、後々の失敗を防ぐことは十分に可能です。
「扶養」は大きく分けて2通りある
扶養には大きく分けて「税金」「社会保険」の2つがあります。ここでは2つの扶養の特徴などを解説します。
税金(所得税や住民税)における扶養
税金の扶養とは所得税や住民税において、配偶者控除(配偶者特別控除)が受けられることを指しています。つまり扶養家族がいることを配慮して、所得税や住民税の負担を軽減しますということですね。この控除があることによって税金を納める額を安くすることが可能です。
ちなみにこれらの控除を受けるには所得制限があります。配偶者の年間所得金額が38万円以下、給与所得でいうと1月~12月までの年間給与収入が103万円以下の場合は夫の扶養に入ることができます。これにより納税者本人の課税対象所得を減らすことが可能となります。
社会保険(厚生年金・健康保険)における扶養
こちらは保険料や年金に関する優遇を受けられる扶養となります。社会保険で扶養になれる条件を満たすことで、保険料を支払う必要がなくなります。もちろん保険料を支払わなくても被保険者と同じように病気をした時でも保険が適用されます。
社会保険の扶養を受ける条件は年収130万円未満(通勤手当含む)となります。ちなみに平成28年10月から厚生年金および健康保険の加入対象者が拡大されています。厚生労働省の資料によると新たに加入することになる対象者は以下のとおりです。
- 1週間あたりの決まった労働時間が20時間以上であること
- 1ヶ月あたりの決まった賃金が88,000円以上であること
- 雇用期間の見込みが1年以上であること
- 学生でないこと(※ただし、夜間、通信、定時制の学生は対象となる)
- (1)従業員数が501人以上の会社(特定適用事業所)で働いている
(2)従業員数が500人以下の会社で働いていて、社会保険に加入することについて労使で合意がなされている(平成29年4月から)
ご覧のようにパートなどの短時間労働者の厚生年金適用の基準が拡大されています。この加入者対象の拡大により、年収106万円以上の方も上の条件を満たすと厚生年金および健康保険に加入しなければなりません。
したがって社会保険の扶養を受けるには年収130万円未満と106万円未満のいずれかをクリアする必要があります。ただし前述のように106万円以上の年収でも上の条件を満たしていなければ厚生年金への加入対象者には当てはまりません。この点は年収だけで判断する方も多いですので注意しておきましょう。
「〇〇万円の壁」について解説
テレビのニュースなどで扶養の話題が出ると「〇〇万円の壁」という言葉が出てくるのをご存じでしょうか?「〇〇万円の壁」というのはいわゆる扶養範囲を超えるか否かのラインを指す言葉です。ここでは「〇〇万円の壁」についての情報を取り上げます。
「103万円の壁」とは?
「103万円の壁」とは「パートやアルバイトで働いている人の年収が103万円以内であれば扶養に入れます」という意味です。前述のように税金面で優遇を受けられるのは配偶者の年間給与収入が103万円以下の場合です。
このラインを超えると所得税が課せられることになります。また仮に扶養に入っている場合は、扶養を抜けることになり、家族の税金が高くなります。このように103万円を境にして納める税金額が異なってくるため「103万円の壁」と呼ばれています。
「なぜ103万円なの?」という疑問に関してですが、これは控除の金額が関係しています。103万円の内訳は「基礎控除38万円」と「給与所得控除65万円」です。この2つの控除を合わせた金額以内(103万円)の収入であれば控除額で相殺されるので所得がないというようにみなされます。
所得がなければ税金をかけることもできないので、配偶者は所得税を支払う必要がなくなります。ちなみに103万円を超えたら必ずしも控除がなくなるわけではなく、141万円未満であれば所得に応じて配偶者特別控除を受けることができます(この場合は所得額に応じて控除額も下がっていく)。
「130万円の壁」とは?
「130万円の壁」とは社会保険(厚生年金・健康保険)の扶養に関する基準のことです。つまり夫の保険に一緒に入ることができるか否かを示すラインです。配偶者の保険に入ることができる基準を簡単に表せば以下のとおりとなります。
- 年収が130万円未満 ⇒ 夫の社会保険に入ることが可能、自身の負担はゼロ
- 年収が130万円以上 ⇒ 自身で社会保険を支払う(扶養には入れない)
ご覧のように自身の年収が130万円未満であれば配偶者(夫)の社会保険に入ることが可能であり、130万円以上であれば自身で社会保険料を負担することになります。130万円を基準にして社会保険料の負担の有無が決定されるため「130万円の壁」といわれています。ちなみに「130万円の壁」が関係してくるのは以下に該当する人となります。
- 自身がパート、アルバイトで雇用されている
- 配偶者(夫)がサラリーマン、公務員
夫もしくは自身が自営業の場合は「130万円の壁」は関係ありません。これは自営業の方は厚生年金の加入対象者ではないためです。この点は自営業、フリーランスなどの方も混乱しやすいため、事前にしっかりと把握しておきましょう。
要チェック!税制改正で2018年から「150万円の壁」ができた
2017年度の税制改正大綱で発表されましたが2018年1月以降、新たに「150万円の壁」ができました。前述のようにパート主婦などが配偶者の扶養に入れるかどうかの基準は長らく「103万円」とされてきました。しかし2018年1月以降は女性の社会進出を促進するために「103万円の壁」をなくし、新たに「150万円の壁」が作られています。
つまり2018年からは配偶者控除を受けられる年収が103万円から150万円に引き上げられたということです。また仮に150万円を超えても201万円までは、夫の所得が一定の範囲内であれば、配偶者特別控除が受けられるようになります。
「150万円の壁」の注意点
新たにできた「150万円の壁」一見するとバリバリ働きたい女性にとっては嬉しい改正点ではありますが、注意すべきポイントもあります。ここでは「150万円の壁」の注意点について解説します。
130万円を超えると社会保険料の負担が発生する
「150万円の壁」に注目しすぎて忘れがちの方も多いですが、150万円までの間には「130万円の壁」が存在します。前述のように自身の年収が130万円(条件付きで106万円)を超えると社会保険料の負担が発生することになります。
毎月の給料から徴収される社会保険料(健康保険、介護保険、厚生年金保険)は給与の約15%に相当します。つまり年収150万円のパート主婦の方などは年間約23万円の社会保険料を負担することになります。
そうなると年収130万円以内で社会保険の扶養に入らないパート主婦よりも手取り額が少なくなります(住民税や所得税も発生するため)。したがって2018年以降は年収130万円以上150万以下の場合は「働き損」が生じる可能性があります。「年収が増えても手取り額が減る」ということがないように、働き方を工夫する必要があるでしょう。
夫の課税所得金額が一定の範囲を超えると配偶者控除を受けられない
今回の大きな改正点の一つに、配偶者控除を受けるための所得制限が設けられたことがあります。税制改正前には納税者(夫)の所得金額に関わらず、所得控除額は38万円となっていました。しかし2018年以降は所得金額によって控除額も変わります。税制改正後の控除額および配偶者控除を受けることができる納税者の所得金額は以下のようになっています。
納税者の所得金額 | 控除額 |
---|---|
900万円以下 | 38万円 |
900万円超950万円以下 | 26万円 |
950万円超1,000万円以下 | 13万円 |
1,000万円超 | 0円 |
【参考サイト】国税庁「平成30年分以降の配偶者控除及び配偶者特別控除の取扱いについて ~毎月(日)の源泉徴収のしかた~」
ご覧のように所得金額が1,000万円超(年収1,220万円超)の方は配偶者控除を受けることができなくなります。つまり所得金額が1,000万円超の方は配偶者(妻)に収入があろうとなかろうと負担する税金には影響しない(安くならない)ということです。これは高所得世帯にとっては重要な改正ポイントとなりますので、しっかりと把握しておきましょう。
夫の扶養に入るメリット・デメリットを解説
ここまで扶養に関する基本的な情報を解説しました。前述の扶養の基礎を基に、夫の扶養に入るメリットとデメリットをまとめましたのでご紹介します。
扶養に入るメリット
夫の扶養に入るメリットはやはり「社会保険料の負担がなくなる」という点です。前述のように年収が130万円以上150万円以下の場合、手取り額が扶養に入っているパート主婦の方より低くなる可能性があります。
したがって年収130万円以上150万円以下で働くことを考えている方は、130万円未満で調整をし、夫の扶養に入ったほうが自身も夫も得をすることが多いです。また夫の「所得税・住民税の負担軽減」にもつながりますので、手取り額の増加にもつなげることができます。
扶養に入るデメリット
夫の扶養に入る大きなデメリットは働き方が制限されることと将来の年金額が減少することです。先ほども取り上げましたが税金、社会保険の2つの扶養に入るのであれば「年収130万円(一部106万円)の壁」を意識しておく必要があります。この点を意識して働こうとすると自身が希望する仕事が見つからない可能性もあるのがデメリットです。
また扶養に入った状態では国民年金には加入しているものの、厚生年金の対象ではないため、将来受け取ることができる年金額が減少します。平成28年度でいえば年額約80万円弱が減少することになるので、老後のことを考えた時にはこの点がデメリットの一つとなります。
結婚して扶養に入った場合の各種手続き
税金、社会保険どちらも夫の扶養に入った場合の手続きですが、そこまで難しくはありません。税金面の配偶者控除の申請は年末調整で行うことになります。会社員の方であれば会社が年末にかけて年末調整を実施するので、この際に申請を行うと配偶者控除を利用することができます。また自営業の方は年末調整がありませんので、2月~3月の確定申告時に手続きを行うことになります。
社会保険の手続きも税金同様、夫の勤務先で行うことができます。勤務先から配布される「被扶養者届」などの書類に必要事項を記入し、提出すれば手続きは完了となります。サラリーマンの方は基本的に会社ですべて手続きを行うことができますので安心しておきましょう。
扶養に入るか、入らないかは総合的な部分を見て判断しよう
今回は結婚後の扶養に関するテーマを取り上げました。ひと昔前の日本であれば、女性は結婚したら夫の扶養に入るのが一般的でした。しかし近年は政府が女性の社会進出を推進していることもあり、女性も積極的に働ける環境が整っています。
したがって結婚後に扶養に入るのが必ずしも正しいというわけではありません。また扶養に入るか否かを検討する際には年収のみで判断する家庭が多いですが、一度年収以外の部分も見ておくことが大切です。
具体的には老後の年金などの将来的な部分を見るのもよいでしょう。もちろんその時々の状況に応じて扶養に入ったり、抜けたりする方法もあります。ただし扶養に入るにしても、入らないにしても自身や家族が損をしないように事前にシミュレーションをするなどの対策を施しておくことを推奨します。