2018年6月15日 | お役立ち情報
七夕で願い事をする理由と短冊や笹飾りの意味や由来
7月7日は七夕の日です。子供の頃に短冊に願い事を書いてつるした思い出を持つ方も多いでしょう。七夕は定番行事の一つとして定着しています。
しかし冷静になって考えてみると七夕の歴史、由来、願い事をする理由など、七夕に関する疑問は多くあります。そこで今回は七夕に関するさまざまな疑問を解決してみましょう。
七夕の日は五節句(ごせっく)の一つにも数えられている
まず七夕の日でもある7月7日は五節句の一つとして数えられています。五節句とは重要な年中行事の日として江戸時代に制定されたものです。五節句に数えられる五つの日は以下の通りです。
- 人日 (じんじつ) の節句・・・1月7日
- 上巳 (じょうし)の節句・・・3月3日
- 端午(たんご)の節句・・・5月5日
- 七夕(しちせき)の節句・・・7月7日
- 重陽(ちょうよう)の節句・・・9月9日
いかがでしょうか?1月7日は七草粥を食べる日、3月3日はひな祭りの日、5月5日はこどもの日と日本では有名な定番行事の日となっていることがわかります。そしてこの五節句のうちの一つに7月7日の七夕が含まれています。
七夕の日はみなさんご存じのとおり、短冊や七夕飾りを笹の葉につるすことで願いが叶うといわれています。
五節句は江戸時代に制定されたものですが当時は公的な行事、祝日として機能していました。1873年の明治6年に新暦に改暦されるとともに五節句の制度は廃止されましたが、これらの行事は形を変えながらも現代まで脈々と受け継がれています。
七夕の由来や願い事をする理由は?
七夕は中国の行事と日本の行事が組み合わさったものといわれています。この行事に七夕の由来や願い事をする理由が隠されています。ここでは七夕の由来になったとされる三つの行事を解説します。
棚機(たなばた)
棚機(たなばた)とはその昔日本で行われていた行事の一つです。水の神様に秋の豊作をお祈りするのが棚機の目的でした。そしてこの時に神様にお供えしていたのが、棚機女(たなばたつめ)と呼ばれる女性が織った着物でした。
この着物を織るために使う織り機が「棚機(たなばた)」という名称でした。やがて時代が流れるとともにこの行事はお盆を迎える準備として7月7日に行われるようになりました。七夕を「たなばた」と当て字で呼んでいるのもこの行事が由来といわれています。
織姫と彦星の伝説
七夕の日になると必ずと言っていいほどあげられるのが、織姫と彦星の七夕伝説のお話ではないでしょうか。天帝により離ればなれにされた織姫と彦星が一年のうち7月7日だけ会えることを許された物語です。
これは牛郎織女(ぎゅうろうしゅくじょ)という中国発祥の物語です。琴座のベガと呼ばれる織女(織姫)は天の川の西側に住み、空の神様たちの着物の布を織る仕事をしていました。一方の鷲座のアルタイルと呼ばれる牽牛(彦星)は天の川の東となる対岸で牛の世話をしたり、農業の仕事をしていました。
この二人はとても真面目で一生懸命仕事に打ち込んでいました。しかし二人が恋をして結婚してからというもの、一転して遊んでばかりになってしまい仕事をまったくしなくなりました。
この織姫と彦星の様子を見た神様は織姫を天の川の西に、彦星を東に引き離しました。これにより織姫と彦星はお互いの姿さえも見ることができなくなりました。「これで元通りの真面目な二人に戻る」と期待した神様でしたが、残念ながら二人は悲しみのあまり毎日泣き暮らすようになってしまいました。
結局織姫は布を織らず、彦星も引きこもってしまったため余計に牛は病気になったり畑は荒れ放題となりました。この姿に困り果てた神様は二人に「真面目に働くなら7月7日だけは会わせてやる」と約束したのです。
この言葉に織姫と彦星は心を入れ替え、一年に一度の七夕の夜に会えることを楽しみにして仕事に打ち込むようになりました。織女星と牽牛星の二つの星は旧暦の7月7日に天の川を挟んで最も光り輝いているように見えることから中国ではこの日を一年に一度のめぐりあいの日と考えています。
ちなみに7月7日の夜に雨が降ると二人は会えないともいわれています。しかし中には雨でも二人は出会えるとする説もあります。また雨は織姫の嬉し涙のため、汚れをきれいに落とすことができるとしているところもあります。
七夕は旧暦の7月7日、新暦で言うと8月20日に行われていたため干ばつに苦しんでいた人々が雨を願った日ともされているようです。
乞巧奠 (きこうでん)
こちらも織姫、彦星伝説と一緒に中国から伝わった習慣のひとつです。乞巧奠(きこうでん)が日本に伝わったのは奈良時代のことです。乞巧奠は女性の願いでもある裁縫が上達することを願って行われていたとされています。
いつしかこの習慣は宮中に広まって、七夕の夜に女性達がお供え物をして祈るお祭りとなりました。それからしばらくして織姫と彦星の二人にちなんで男女の良縁を祈る意味も加わりました。
平安時代には宴、相撲の大会などが開かれたり、室町時代になると「織女祭り」という名称で宮中の年中行事の一つになりました。江戸時代の頃になると初期の乞巧奠本来の作法は省略されてしまい、原型をとどめることはなくなりました。
しかしお供え物や願い事をするといった習慣は多くの人々に浸透して、現代の日本にまで残っています。
七夕の短冊の意味・由来
七夕といえば笹に願い事を書いた短冊を飾りますよね。この七夕の日に短冊を飾る理由ですが、奈良時代に乞巧奠が伝わった時には裁縫、手芸の上達を祈ったことから糸が供えられていました。
しかし昔は糸が大変高価だったため、一般庶民は糸を入手するのが困難な時代でした。この糸の代わりに紙を切って供えていたのが短冊の始まりだと伝えられています。
五色の短冊の意味
七夕の風習が日本に広まった当初は短冊を飾るということはありませんでした。その代わりに飾られていたのが五色の糸です。この「五色の糸」が「五色の短冊」へと変わっていきました。
五色の短冊の五色は中国の陰陽五行説が由来になっています。陰陽五行説は陰陽説と五行説が組み合わされた中国の考え方です。陰陽説は世の中の全ては陰と陽で出来上がっているという考え方であり、日本では陰陽道とも呼ばれています。
一例を挙げると太陽は「陽」で月は「陰」、天は「陽」で地は「陰」となります。こうした思想を陰陽思想といいます。やがてこの陰陽思想は五行説と結びついていくことになります。
五行説は世の中の全てのものは「木」「火」「土」「金」「水」の五つの元素から成り立っているという考え方です。七夕飾りに用いられる短冊の色は「青(緑)」「赤」「黄」「白」「黒(紫)」です。この色は陰陽五行説の五つの元素を表す色でもあります。それぞれの色の意味は以下の通りです。
短冊の色 | 意味・特徴 |
---|---|
青(緑)の短冊 | 木々など自然の緑を表す「木」 |
赤の短冊 | 火・炎を表現する「火」 |
黄の短冊 | 大地の象徴でもある「土」 |
白の短冊 | 大地に埋まる金属を表す「金」 |
黒(紫)の短冊 | 命を育むことを表す「水」 |
このように七夕に使う五色の短冊はこの世の中の自然界すべてを表現しています。また短冊の五色は人としての生き方も表しています。それは人間の五徳でもある「仁」「礼」「信」「義」「智」です。
この五徳は中国の有名な思想家でもある孔子が基礎を築いた思想です。五色の短冊と五徳の対応、それぞれが持つ意味は以下のようになっています。
短冊の色 | 五徳・意味 |
---|---|
青(緑)の短冊 | 「仁」 人を思いやる心 |
赤の短冊 | 「礼」仁を具体的に表したもの・感謝の心 |
黄の短冊 | 「信」約束を守ること、誠実であること |
白の短冊 | 「義」私利私欲に捉われないこと |
黒(紫)の短冊 | 「智」学業にはげみ向上を目指すこと |
短冊に願い事を書く時には、その願いに対応した色の短冊で書くと良いとされています。
七夕に笹の葉が使われる理由とは?
「七夕のイメージは?」という質問をすると「笹の葉」と答える人も多いのではないでしょうか。七夕では願い事を書い短冊を笹の葉に飾るという風習があります。ここで一つ疑問なのが「なぜ七夕飾りを笹の葉に飾るのか?」ということです。
この疑問に関する答えですが、昔の人は笹を神聖なものとして扱ってきたためです。笹はまっすぐ天に向かって伸びる性質を持っています。そのため笹に願い事を込めた短冊を飾ることで、天界にいる神様やご先祖様に願い事が届きやすいと信じていました。
また笹の葉は優れた殺菌力を持つことでも知られています。このことから笹には魔除け効果があるとされていました。実際に現代の日本でもお寿司屋さんなどに行くと笹の葉が添えられていることがありますよね。あれは単なる飾りではなく、笹の葉が持つ殺菌力を活かした食中毒対策のためにやっていることです。
また七夕の歌の歌詞でもある「ささのはさらさら」の「さらさら」という音は神様を招くともいわれています。このような複数の理由から七夕では笹の葉が使われるようになりました。
短冊以外の七夕飾りの意味
ここでは短冊以外の主な七夕飾りやその意味について解説します。
吹流し
吹流しは織姫の織り糸を表現しています。裁縫や機織りが上手になりますようにという意味を込めて飾ります。また五色の吹流しを飾ることで魔除けの意味にもなります。
千羽鶴
鶴は縁起の良い鳥とされており長寿の象徴でもあります。昔は家族の中の年長者の年齢に合わせて鶴を折っていました。そして子供はこの折り鶴を学ぶことで教わる心を養っていたとされています。「家族みんなが長生きしますように」という願いを込めて千羽鶴を飾ってみましょう。
紙衣(かみこ)
紙衣(かみこ)とは折り紙や和紙で作った飾り物です。着物の形をしているのが大きな特徴でもあります。紙衣は「機織りが上手になるように」という願いを込めて昔から飾られてきました。
機織りがよく使われていた時代では短冊と同じぐらい有名な飾りでした。ちなみに最近では紙衣が人の形をしていることから「子供が元気に育ちますように」という願いを込めて飾ることもあるようです。
巾着
巾着はその昔お財布として使われていました。このことから「お金が貯まりますように」という願いを込めて巾着が飾られるようになりました。金運上昇、商売繁盛を願う方にはぴったりだと言えるでしょう。
くずかご
七夕飾りを作った時に出た不要な紙くずを入れて飾ったものがくずかごとなります。「物を粗末にしないように」「整理整頓が上手にできますように」「倹約と清潔にする心が養われるように」といった願いがくずかごには込められています。
まとめ
七夕は小さな子供からお年寄りまで日本全国の人が知っている定番行事の一つです。しかし七夕の由来、願い事をする理由など七夕に関する疑問は多くあります。特に小さなお子様がいる家庭などでは「なぜ7月7日は七夕の日なの?」と質問されることもあるでしょう。このような時に困ってしまうママ、パパは多いです。
そのため7月7日に備えて七夕に関する知識を少しでも身につけておきましょう。また七夕の由来や飾りの種類などを知っておくと、より神聖な気持ちになったり、七夕本来の魅力を十分に感じることもできます。
今年の7月7日は七夕に関する豆知識を周囲の人に教えてみてはどうでしょうか?