広島県東広島市はどんな町?有名な酒蔵やおすすめの日本酒を紹介

広島県東広島市はどんな町?有名な酒蔵やおすすめの日本酒を紹介

東広島市は、広島県のほぼ中央に位置し、南は瀬戸内海、北は中国山地まで広がっています。市内には広島大学をはじめとした4つの大学や官民の学術研究機関が集積し、国際学術研究都市を目指しています。

そのような東広島市で、とくに有名なのが日本酒です。本記事では、日本酒の町として知られる東広島市の酒造をエリアごとにご紹介します。

東広島市は日本有数の酒どころ

吟醸酒発祥の地といわれる東広島市は、西条町、黒瀬町、安芸津町に10社の酒造会社があります。とりわけ西条町は酒造りに適した気候と龍王山から湧き出る地下水に恵まれていることから、全国屈指の銘酒として知られ、兵庫県の灘、京都府の伏見と並ぶ日本三大酒どころの一つに数えられます。

西条酒蔵群は歴史的に重要な酒蔵群であり、景観が良好に残る日本唯一の酒蔵群でもあります。「西条の酒造施設群」としてイコモス(国際記念物遺跡会議)の「日本20世紀遺産20選」に選ばれています。

西条酒蔵通りの7軒の酒蔵

西条酒蔵通りの7軒の酒蔵

西条酒蔵通りは、JR西条駅から徒歩圏内に7つの酒蔵が軒を連ねています。なまこ壁や杉玉、白壁の蔵や赤煉瓦の煙突が並ぶ街並みを散策しながら、酒蔵巡りを楽しんでみてはいかがでしょうか。日本酒の試飲ができる酒造直売所もあります。

山陽鶴酒造(さんようつるしゅぞう)

西条酒蔵通りの西側に位置する山陽鶴酒造は、1912年(大正元年)の創業です。西条独特の軟水を使用し、清酒本来の「甘酸辛苦渋」が調和した日本酒は、楽しいひと時のおともになってくれます。商品の割合は純米酒が40%、純米吟醸が15%で、やや甘口から中口の商品がメインです。

直売所には全種類のお酒がそろい、酒造でしか購入できない限定酒やオリジナルグッズも販売されています。代表銘柄5種を一合瓶に詰めた呑み比べセットはお土産にもおすすめです。併設の「割烹しんすけ」では日本酒に合う食事を楽しめます。

住所:広島県東広島市西条岡町6番9号
公式サイト:https://sanyotsuru.jp/

白牡丹酒造(はくぼたんしゅぞう)

白牡丹酒造は1675年(延宝3年)の創業で、350年の歴史がある西条最古の蔵元です。戦国武将:石田三成に軍師として仕えた島左近のひ孫である島六郎兵衛晴正がこの地で酒造業を始め、それ以来、島家が代々酒造りを受け継いできました。「一日の疲れを癒やし、明日への活力を生み出すお酒でありたい」という思いを代々変わらず持ち続け、毎日の晩酌や家呑みが楽しみとなる酒を目指しています。「白牡丹」はほんのり甘くてうまみのある味わいが特徴です。

白牡丹の酒名は、京の五摂家の一つである鷹司家から家紋にちなみ授けられたものです。江戸時代の狂歌師として活躍した蜀山人(太田南畝)や、文豪・夏目漱石など歴史に名だたる文人墨客にも愛されてきました。

天保庫・本社展示室では、白牡丹酒造の歴史や酒造りに使われた道具が展示され、宗像志功が白牡丹のために製作したラベルも見学できます。試飲や蔵元限定商品の販売も行われています。

住所:広島県東広島市西条本町15-5
公式サイト:https://www.hakubotan.co.jp/

西條鶴醸造(さいじょうつるじょうぞう)

西條鶴醸造は、1904年(明治37年)の創業です。地名の「西條」とめでたい「鶴」を合わせて「西條鶴」と命名されました。名水「天保井水」と地元産米を使用し、広島杜氏の伝統技術で丁寧に醸されています。

2006年(平成18年)秋の酒造りから季節杜氏を廃止し、工程ごとに分業せず社員全員で酒造りを行うようになりました。「地酒は慈酒、西條鶴を飲んでくださるお客様に“口福と幸福をお届けする”」をテーマに、瀬戸内の魚介類や広島の食材・食事と合わせておいしく味わえる酒造りを目標としています。

酒蔵や母屋などは平成28年に国の登録有形文化財に指定されています。レトロモダンな雰囲気の直売所では、西條鶴のフラッグシップ「純米大吟醸酒 神髄」やジェラートなどを販売。「純米大吟醸酒 神髄」は、香りとうまみ、酸味が調和した日本酒の醍醐味を味わえる一杯で、1999年より25年連続でモンドセレクションの金賞以上を受賞しています。

住所:広島県東広島市西条本町9-17
公式サイト:https://saijotsuru.co.jp/

加茂鶴酒造(かもつるしゅぞう)

加茂鶴酒造は1873年(明治6年)創業で、150年以上の歴史があります。創業当時の地名「賀茂」と気高い「鶴」が名前の由来で、清酒「賀茂鶴」の醸造・販売を行っています。1898年に日本初の動力精米機を導入し、酒造りを革新。1958年発売の「特製ゴールド加茂鶴」は、大吟醸酒の先駆けとして現在も愛され続けています。2014年に来日したアメリカのオバマ大統領と当時の安倍晋三首相が会食された際、振る舞われたお酒が特製ゴールド加茂鶴でした。

国の史跡となっている一号蔵を改築した蔵元直営店には、日本酒の販売に加えて酒造りを学べる展示があり、きき酒スペースも用意されています。

住所:広島県東広島市西条本町9-7(賀茂鶴酒造 一号蔵直営店)
公式サイト:https://www.kamotsuru.jp/

亀齢酒造(きれいしゅぞう)

明治中期創業の亀齢酒造は、「鶴は千年、亀は万年」という言葉にちなみ、長寿と繁栄を願って命名されました。明治時代は吉田屋の酒として親しまれ、昭和14年に亀齢酒造株式会社が設立されました。柔らかな甘口が多い広島で、亀齢酒造はスッキリした辛口が特徴です。大正6年には全国新酒鑑評会で日本最初の名誉賞を受賞し、その後も数々の輝かしい金賞、銀賞を受賞しています。

敷地内の「万年亀舎(まねきや)」では、蔵元限定酒(吉田屋の酒)や「純米大吟醸 亀香」、オリジナル商品や吟醸ジェラートなどが販売されています。

住所:広島県東広島市西条本町8番18号
公式サイト:https://kireikireikirei.jimdofree.com/

福美人酒造(ふくびじんしゅぞう)

福美人酒造は、1917年(大正6年)に西日本の酒造業者の有志による出資で設立されました。「福美人」の名前は、当時の地名「福神」と「美人のようにふくよかで穏やかな味」を目指したことから名づけられました。すぐれた酒造りの技術を全国から杜氏が学びに訪れたため、「西條酒造学校」とも呼ばれ、多くの杜氏を輩出してきた歴史があります。福美人の酒は、「ふっくらとした味の厚みをもちつつ後味のキレがよく飲み飽きない」と評されています。

恵比寿庫(えびすぐら)と大黒庫(だいこくぐら)の2つの酒蔵があり、現在主に酒造りが行われているのは大黒庫です。一方、酒都西条で最も高い赤レンガの煙突がそびえ立つ恵比寿庫は常時見学が可能で、銘酒を購入できるコーナーもあります。また、広島カープ創成期に使われた「樽募金」の樽や、歴代総理大臣の書など貴重な展示も見学できます。

住所:広島県東広島市西条本町6-21
公式サイト:https://www.fukubijin.co.jp/

賀茂泉酒造(かもいずみしゅぞう)

賀茂泉酒造は、1912年(大正元年)に前垣酒造場として創業。所有する山林にある西国街道の名水「茗荷清水」を汲んで酒を仕込んだことから、京都の地名「賀茂」と合わせて「賀茂泉」と名づけられました。

戦中に失われた本来の酒造りの復活を目指し、昭和40年頃から米、米こうじのみの酒造りを始めます。そして試行錯誤の末、1972年(昭和47年)に「本仕込賀茂泉」を発売し、純米醸造のパイオニアと呼ばれるようになりました。賀茂泉酒造では活性炭素ろ過を行っておらず、豊潤で豊かな味わいと美しい山吹色をした酒として親しまれています。

昭和初期に建てられた木造洋館を改装したお酒喫茶「酒泉館」では、酒の飲み比べや酒を使ったスイーツ、仕込水で淹れたコーヒーなどが楽しめ、併設されているショップには、ここでしか購入できない限定酒もあります。

住所:広島県東広島市西条上市町2-4
公式サイト:https://www.kamoizumi.co.jp/

安芸津町の2軒の酒蔵

安芸津町の2軒の酒蔵

広島の酒造りが発展するきっかけを作ったのは、明治期の醸造家・三浦仙三郎さんです。灘の酒の仕込み水に使われる「宮水」は硬水ですが、広島の水は軟水であるため、酒造家は腐造に悩まされました。三津(現在の安芸津町)で酒造りを始めた三浦仙三郎さんは軟水に適した醸造方法を研究し、軟水醸造法を確立します。安芸津町は「広島酒の発祥の地」と呼ばれ、現在も2軒の酒造があります。

今田酒造本店(いまだしゅぞうほんてん)

1868年(明治元年)創業の今田酒造は、酒造りの神様と呼ばれる三浦仙三郎さんの言葉「百試千改」を受け継ぎ、高品質な吟醸酒で知られる酒蔵です。代表銘柄の「富久長」を命名したのも三浦仙三郎さんです。蔵元杜氏の今田美穂さんは、2020年にイギリスのBBCがその年に大きな影響を与えた女性100人を選出する「BBC 100 Women」に日本人として唯一選ばれました。

安芸津町らしさのある酒造りを求める今田酒造では、広島県を代表する酒米、八反系最古の品種「八反草」の復活栽培にも取り組んでいます。富久長の八反草は、柔らかな味わいと軽やかなキレ味を両立しています。伝統と革新の酒造りを追求する今田酒造は、国内だけでなく海外からも注目されている酒蔵です。蔵見学や試飲は行われていませんが、蔵の入り口で商品を購入できます。

住所:   広島県東広島市安芸津町三津3734
公式サイト:https://fukucho.jp/

柄酒造(つかしゅぞう)

柄酒造は1848年(嘉永元年)の創業です。千本錦、八反錦といった広島県産の酒造好適米を100%使用し、安芸津ならではの伝統製法「軟水醸造法」を受け継いでいます。代表的な銘柄「於多福」は、1907年(明治40年)開催の第一回全国清酒品評会で優等一位を受賞しました。

2018年の西日本豪雨で酒蔵が浸水しましたが、全国からの支援を受けて再生し、現在は親子で酒造りに取り組んでいます。映画「恋のしずく」のロケ地にもなりました。

住所:広島県東広島市安芸津町三津4228
公式サイト:https://www.tsukasyuzou.jp/

黒瀬町の酒蔵

黒瀬町の酒蔵

黒瀬町には戦前、10数軒の酒蔵があったといわれていますが、現在は金光酒造のみとなっています。

金光酒造

金光酒造は1880年(明治13年)の創業です。銘柄「桜吹雪」をメインに酒造りを続けていましたが、5代目の金光秀起さんは手作りの個性ある酒を目指して自動設備をやめ、2003年(平成15年)に社員蔵人による手作りに切り替えました。

それから銘柄「賀茂金秀」を開発し、2009年には全国新酒鑑評会で金賞を受賞。以降も数多くの品評会で高い評価を得ています。蔵の前にはモダンな雰囲気の直売所があり、定番商品や季節商品、数量限定のお酒が販売されています。

住所:広島県東広島市黒瀬町乃美尾1364-2
公式サイト:https://kamokin.com/index.html

東広島市の名物グルメ

東広島市の名物グルメ

東広島市には、日本酒を使用した名物グルメもあります。東広島市を訪れたときは、お酒と一緒に味わってみてはいかがでしょうか。

美酒鍋

美酒鍋は、鶏肉や野菜などの食材を酒と塩、こしょうだけで味付けした東広島の名物料理です。あっさりした味わいで、酒が素材のうまみを引き出しています。西条の杜氏のまかない料理が発祥といわれています。

コメカラ

コメカラとは、西条酒と米粉を使った唐揚げです。鶏肉や魚などの具材を西条酒に漬け込み、米粉をまぶして油で揚げています。ほんのり香るお酒の風味とカリっとした食感が特徴です。

まとめ

日本有数の酒どころである東広島市は、日本酒が好きな方にとって一度は訪れてみたい場所なのではないでしょうか。とくに西条酒蔵通りは、徒歩圏内に7つの酒造が集まっているため、白壁の蔵や赤レンガの煙突が並ぶ街並みを散策しながら直売所での試飲や限定酒の購入などが楽しめます。

お気に入りの日本酒に出会いたい方は、ぜひ訪れてみてください。

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