カメムシやバッタ、ユスリカの呼び名は地域で違う?日本全国の虫の呼び方・方言まとめ!

カメムシやバッタ、ユスリカの呼び名は地域で違う?日本全国の虫の呼び方・方言まとめ!

身近に存在する昆虫の中には、地方や時代によって違った呼び名があるケースがたくさんあります。当記事では、カメムシをはじめとして複数の呼び名がある虫を紹介し、さらになぜそのような呼び名になったのかについて考察します。虫の呼び名やその由来を知ると、意外な発見があるかもしれません。ぜひ最後までご覧ください。

いろんな呼び名を持っている虫がある

日本語には同じものであっても複数の呼び名を持つものがあります。虫の呼び名についても例外ではありません。同じ虫でも地方・時代などの違いによってさまざまな呼び名があります。

なぜ虫にはたくさんの呼び名があるのか

昆虫の仲間には非常に多くの種類があるのが、他の生き物とは違う大きな特徴です。地球上には約170万種の生物がいますが、そのうち約100万種が昆虫です。日本だけでも3万種以上の種類の昆虫がいます。さらに世界中で毎年3,000種程度が新種として発見され、今も種類が増え続けているそうです。

昆虫の場合、見た目はよく似ていても実は別種ということがよくあります。逆に同じ種類でも、生息地域によって体の色や模様、形などが異なるケースもあります。「同じ虫のように見えるのに違う種類、違う種類のように見えるのに同じ種類かもしれない」ということが、さまざまな呼び名につながっているのでしょう。

地域によって虫の呼び名が違う

日本にはたくさんの方言があり、虫も同様に地域によってさまざまな呼び名があります。

明治時代より前の日本(江戸時代)は、幕藩体制のもと藩をまたいで一般庶民が交流する機会はそれほど多くありませんでした。地形的にも険しい山々や流れの急な川が多く、地域間の交流を阻んでいたので、各地域に独自の文化が発展して方言が生まれ、虫にもそれぞれの地方独特の呼び名が付けられています

時代によって虫の呼び名が違う

なかには、時代によって呼び名が変わった虫もあります。ゴキブリは江戸時代にはゴキカブリなどと呼ばれていましたが、今ではそのような呼び方はされていません。

成虫・幼虫によって虫の呼び名が違う

昆虫は変態をする動物です。変態には完全変態と不完全変態があります。コオロギのような不完全変態は、成長するにしたがい脱皮を繰り返しますが、幼虫と成虫ではそれほど見た目は違いません。一方、チョウ・ガの仲間や甲虫類のような完全変態では、幼虫から成虫になる途中にサナギになる過程があります。

サナギから脱皮した後は見た目が大きく変わるのが完全変態をする昆虫の特徴です。

例えば、チョウの場合、幼虫時代は円筒形の体型で腹部に腹脚と呼ばれるたくさんの短い脚を持っていてイモムシやアオムシと呼ばれます。

しかし、サナギから脱皮して成虫になると幼虫時代とは全く異なる形態になります。きれいな翅を持ち、脚は6本です。さらに空を飛ぶという機能を獲得します。幼虫時代と成虫で違う呼び名になるのも当然といえるでしょう。

同じように、蚊は水中で過ごす幼虫の時期は、ボウフラ、サナギになるとオニボウフラと呼ばれます。

カメムシの呼び名

カメムシの呼び名

夏の終わりから秋にかけて大量発生するカメムシ。洗濯物にくっついたカメムシを捕ろうとすると、臭いにおいを出す困った存在です。

嫌われ者で、触ったことのある人には強い印象を残すカメムシには、たくさんの別名があります。呼び名の多い昆虫の代表格といえるでしょう。

カメムシには、以下のようにたくさんの地方でさまざまな呼び方があります。

ヘコキムシ、ヘッピリムシ 多くの地方
クセンコ、クセンコムシ 青森県
アネコムシ、ヘネコムシ、ヒメコムシ、ドンベムシ 秋田県南部山間部など
ヘクサムシ、ヘクソムシ、クサムシ 山形県〜福島県、岐阜県
ジャコ 宮城県
ワクサ、ワックサ 群馬県・埼玉県
ヒラッカ、ヘップリムシ 栃木県の一部(佐野市など)
ヘラガニ、ヘチガネ、ジョロピン、ヘタガリ 新潟県の一部(柿崎町など)
ジョロウムシ 新潟県中蒲原、長野県北部地方
ヘクサクン、トモコチャン 長野県南部
ヘクサンボ 福井県嶺北、石川県・富山県・山形県の一部
オガムシ 福井県嶺南・奈良県・徳島県・愛媛県の一部
ガメ、ノブコムシ、ヘクサムシ 岐阜県の一部(飛騨地方など)
マナゴ 和歌山県
ジョンソン、ジョロムシ、オヒメサマ 兵庫県日本海側の一部
ヒメムシ、ヨメサンムシ 京都府丹後地方
ガイザ、ガイダ、カイダ、カイダムシ 兵庫県・岡山県の山間部
ハットウジ、ハトウジ、クサガメ 岡山県〜広島県の山間部
ホウジ、ホウムシ 島根県・山口県の一部
ジャクジ、ジャクゼン、ブイブイ 愛媛県
フウ 九州地方
ヘクサ、ハトジ、ヘップ、フ、ヘッコキムシ、ヘッタレムシ、ガイダー、ヘット、ヘクソムシ、ジャゴ、クセコムシ、ヘヒリムシ 地域不明

たくさんの呼び方がありますが、においを出すことから「ヘコキムシ」「クサムシ」など、においに関する呼び方が多いようです。

においを出す虫はカメムシ以外にもいるので「ヘコキムシ」や「ヘッピリムシ」は、他の虫を指す場合があります。

ゴミムシの仲間も「ヘコキムシ」「ヘッピリムシ」と呼ばれます。多くのゴミムシは自分から臭いを発するわけではありません。しかし、その名の通りゴミや腐敗物を食べるので臭いが付いていることがあります。

ゴミムシの仲間で最もくさいのがホソクビゴミムシ類です。特に、ミイデラゴミムシは危険を察知するとお尻から100度近い高熱の臭いガスを発射するので、地方によっては「ヘコキムシ」「ヘッピリムシ」と呼ばれています。

バッタの呼び名

バッタの呼び名

バッタという名は、バッタ目またはバッタ亜目に属する昆虫の総称です。バッタの仲間全体を指す呼び方はそれほど多いわけではありません。宮崎で「ギメ」という呼び方がある程度です。

ただし、バッタの中でもショウリョウバッタにはさまざまな呼び名があります

一般的に用いられるショウリョウバッタという名前は、俗説では旧盆に行われる精霊流しの精霊船(しょうりょうぶね)に似ていることに由来するとされています。

ショウリョウバッタの呼び名を下記にまとめました。

アオバッタ、アカクチ、オウマ、オウメバッタ、オカンヌシ、オンメ、キチキチバッタ、コメツキバッタ、ショウジョウバッタ、モチツキバッタ、ショウライムシ、ハタオリ、フネコギバッタ

ユスリカの呼び名

ユスリカの呼び名

ユスリカの見た目は蚊によく似ていますが、分類上は別のグループに属します。蚊と違って動物の血は吸いません。

夕方にたくさんの虫が集まってできる蚊柱は、たいていユスリカによるものです。ちょうど頭のあたりの高さで飛び回るので「頭虫」との別名があります。蚊柱から、他にもいろいろな呼び名が生まれています

かつて、タレントのファーストサマーウイカさんがツイッターで蚊柱を何と呼ぶか募集したところ、たくさんの応募がありました。

特殊な呼び方として、琵琶湖で大量発生するので滋賀県では「琵琶湖虫」と呼ばれています。

また、幼虫のときは成虫と形態が異なるので「アカムシ」「アカボウフラ」と呼ばれます。

頭虫(全国)、納豆虫(福島県)、ワイワイ虫(群馬県)、ヘッドブンブン(長野県)、琵琶湖虫(滋賀県)、キャサリン(大阪府)、脳食い虫(福岡県)

ゴキブリの呼び名

ゴキブリの呼び名

ゴキブリにもいくつかの呼び名があります。ゴキブリの場合、地方による差というよりも時代によって呼び方が変化しています。

江戸時代には「ゴキカブリ」「アブラムシ」などと呼ばれていました。ゴキカブリ(御器噛)という呼び方は、御器(蓋つきのお椀)をかじる虫という意味です。アブラムシという名前は台所の油汚れなどを好んで集まり、見た目も油ぎっていることからつけられました。

今でもアブラムシと呼ばれることがありますが、アブラムシという名前は本来、植物の汁を吸うカメムシの仲間に付けられている名前です。

ゴキブリは他にも、アクタムシ、アマメ、ゴキクライムシ、ゴゼムシ、ツノムシなどと呼ばれていました。

ハチの呼び名

ハチの中でスズメバチの仲間にはいくつかの別の呼び名があります。オオスズメバチやキイロスズメバチという呼び方が一般的ですが、大きさや体色などから別の呼び方をされています

オオスズメバチはスズメバチの中では最も大きく、強い毒性と攻撃性を持っているので非常に危険な昆虫です。その大きさから、クマバチやオオクマンなどと呼ばれています。

キイロスズメバチは、アカバチやカメバチ、チュウクマンとの別名があり、コガタスズメバチはコクマン、ショウクマンともいわれます。

呼び名の多い虫の特徴は?

ここまで見てきた虫は、バッタ以外はすべて害虫や人に嫌われている虫です。身近な虫や印象に残る虫はさまざまな別名を持つ傾向にあるようです。

子どもたちに人気のカブトムシやクワガタも地方によっていろいろな呼び方をされているようです。カブトムシはムシャムシ(武者虫)、オニムシなど。クワガタにはハコショイ、ウシなどの別名があります。カブトムシとクワガタはオスとメスの見た目が異なるので、それぞれ別の呼び方をされるのも大きな特徴です。

京都市の一部では、カブトムシのオスはアカカブヤシロカブと呼ばれ、メスはボウズと呼ばれています。面白いのは静岡県で、オスのカブトムシはシカ、メスはウマ。おそらくオスはツノがあるのでシカ、シカによく似た動物でツノがないウマをメスの名前にしたのでしょう。

虫にたくさんの呼び名があるのは多様な文化の証し

日本人は昔から虫を愛でてきた民族です。万葉集や古今和歌集には、コオロギやセミ、ホタル、チョウなどのたくさんの昆虫が登場します。源氏物語にも「鈴虫」「蛍」「蜻蛉(かげろう)」などの帖(「巻」の意味)があり、日本人が古来より秋に鳴く虫の風情を楽しんでいたことがうかがえます。

江戸時代には着物の図柄にいろいろな虫が取り入れられました。特に、チョウは夫婦円満の象徴として婚礼衣装にも描かれています。

虫にさまざまな呼び名があるのは、日本人が古くから虫に慣れ親しみ自然を愛する多様な文化を持っていることの証しでもあります。

ここで紹介した以外にも、身近に存在する虫の方言や昔の呼び方を調べると興味深い発見があるかもしれませんね。

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