2022年9月1日 | お役立ち情報
囲碁の世界で活躍する女流棋士12名をご紹介
囲碁は年齢や性別に関係なく楽しめますが、長らく女性は男性にかなわないと思われていました。ところが近年は女流棋士の活躍が目覚ましく、公式戦で男性棋士に勝つことも珍しくありません。女流棋士の華々しい活躍を見て囲碁に興味を持った人も多いのではないでしょうか。今回は、囲碁の世界で活躍する女流棋士12名をご紹介いたします。
藤沢里菜女流本因坊
祖父は藤沢秀行(ふじさわ・ひでゆき)名誉棋聖、実父は藤澤一就(ふじさわ・かずなり)八段という囲碁ファミリーで育った藤沢里奈(ふじさわ・りな)女流本因坊。6歳で囲碁を覚え、小学1年生のときにはプロになることを意識していたそうです。平成22年(2010年)に11歳6ヶ月で日本棋院の棋士採用試験に合格して入段(プロ入り)し、女流棋士特別採用最年少記録を大きく更新しました。令和3年(2021年)には五段に昇段しています。
「女流本因坊」「女流名人」の2タイトルを持ち、これまで獲得したタイトル数は21で女性史上2位(令和4年7月現在)です。5つある女流タイトルのうち四冠を達成したこともある実力の持ち主です。平成26年(2014年)の第1回会津中央病院杯では、15歳9ヶ月で女流棋士史上最年少タイトルを獲得。令和2年(2020年)の第15回広島アルミ杯・若鯉戦では男性棋士を退けて優勝しました。公式戦の男女混合棋戦での女流棋士優勝は史上初です。
令和3年(2021年)の「大和ハウス杯 第60期10段戦」では予選決勝で一力遼天元(現棋聖)に勝利し、本戦で女性初となるベスト8に進みました。7大タイトルの本戦トーナメントで勝利したことがある女流棋士は藤沢里奈女流本因坊しかいません。令和4年(2022年)6月の第48期天元戦では女性初となる4強入りがかかっていましたが、準々決勝で敗れ、準決勝進出を惜しくも逃しました。男性のトップ棋士とも互角に戦える実力の持ち主なので、さらなる快挙が期待されます。
上野愛咲美女流棋聖
攻撃型の棋風から「ハンマー」の異名を持つ上野愛咲美(うえの・あさみ)女流棋聖。上野梨紗二段は実妹です。平成28年(2016年)に入段し、令和3年(2021年)に四段に昇段しています。
上野愛咲美女流棋聖は平成30年(2018年)に16歳3ヶ月で女流棋聖戦史上最年少タイトルを獲得。令和元年(2019年)には男女混合棋戦の竜星戦で準優勝する快挙を成し遂げました。また、令和3年(2021年)には男女混合棋戦の第16回広島アルミ杯・若鯉戦で優勝。同年、日本棋院公式戦の年間最多勝・最多対局を獲得しています。女性が年間最多賞や最多対局を獲得するのは、成績優秀者の表彰を始めた1967年以降初のことです。
令和4年(2022年)には女流棋士の世界一を決める「SENKO CUPワールド碁女流最強戦2022」で見事優勝を果たしました。令和4年7月現在、5つある囲碁の女流タイトルのうち「女流立葵杯」「女流棋聖」を保持しています。
謝依旻七段
台湾出身の謝依旻(シェイ・イミン)七段は、平成16年(2004年)に14歳4ヶ月で入段しました。正棋士採用女流棋士の最年少記録です。また、女流棋士史上最多記録となる27のタイトルを獲得しています。
初タイトルは平成18年(2006年)の第8期女流最強戦で、17歳1ヶ月での優勝は当時の女流棋士史上最年少タイトル獲得記録でした。平成19年(2007年)には17歳11ヶ月で史上最年少女流本因坊のタイトルを獲得。また、翌平成20年(2008年)には18歳3ヶ月で史上最年少女流名人となり、女流本因坊と合わせて二冠を達成しました。5連覇達成により「名誉女流本因坊」「名誉女流名人」「名誉女流棋聖」の有資格者です。
著書に「世界一わかりやすい打碁シリーズ 謝依旻の碁」(マイナビ)があり、TwitterやInstagramでは囲碁の情報やプライベートを発信されています。
万波佳奈四段
万波佳奈(まんなみ・かな)四段は、平成12年(2000年)に入段し、平成19年(2007年)に四段に昇段しました。平成16年(2004年)の第7期女流棋聖戦で初タイトルを獲得しています。平成19年(2007年)には第5回正官庄杯世界女子囲碁選手権に日本代表として出場し、3連勝。平成22年(2010年)には第4回大和証券杯ネット囲碁レディース優勝に優勝しています。
「世界一やさしい手筋と詰碁 スラスラ解ける318題」(マイナビ)、「囲碁ビギナーズ 13路盤で最速上達」(NHK出版)など多数の著書があり、NHK囲碁講座やテレビ囲碁トーナメントなどテレビ出演も豊富です。
万波奈穂四段
万波奈穂(まんなみ・なお)四段は平成18年(2006年)に入段し、平成30年(2018年)に四段に昇段しました。平成30年(2018年)に第3期扇興杯女流最強戦で優勝し、初タイトルを獲得しています。「世界一やさしい布石と定石」(マイナビ)、「万波姉妹のぐんぐん強くなる囲碁Q&A」(マイナビ)などの著書があります。
万波佳奈四段は実姉で、姉妹棋士としてテレビや雑誌などでも活躍。また、お酒が強い女流棋士としても知られ、BS-TBSの「女酒場放浪記」にも出演されていました。現在は囲碁をお休みして子育てに専念中です。
仲邑菫二段
中学生棋士の仲邑菫(なかむら・すみれ)二段は、英才特別採用として平成31年(2019年)に史上最年少の10歳で入段。令和3年(2021年)に史上最年少の12歳0ヶ月で二段に昇段しました。実父は仲邑信也九段です。
令和3年(2021年)3月に「女流ティーンエージャー棋士トーナメント戦」の非公式戦ではありますが、プロ棋士として初優勝を飾りました。入段からわずか3年の令和4年(2022年)3月、第33期女流名人戦リーグで1位となり、史上最年少でタイトルに挑戦。2022年6月には史上最年少の13歳3カ月で公式戦100勝(52敗)を達成し、50年ぶりの記録更新となりました。翌7月の第7回扇興杯女流最強戦では準優勝。数々の最年少記録を更新している仲邑菫二段の活躍から目が離せません。
黒嘉嘉七段
黒嘉嘉(こく・かか)七段は、台湾の女流棋士です。2010年に入段して同年に二段に昇段。各棋戦での活躍によって2011年に特例として五段に飛び昇段し、2015年には七段に昇段しました。2011年に台湾の女流棋士として初のリーグ入りをし、2015年には女流最強戦で優勝しました。2018年の第1回SENKO CUPワールド碁女流最強戦では準優勝を果たしています。
トップモデルとしても活躍し、台湾の名匠チェン・ユーシュン監督の映画「1秒先の彼女」でスクリーンデビューを飾っています。日本ではEテレ「囲碁フォーカス」にレギュラー出演していました。
安田明夏初段
安田明夏(やすだ・あきか)初段は5歳のときに祖父の勧めで囲碁を始めたそうです。中学2年生のときに日本棋院関西総本部の院生になりました。
関西総本部院生研修リーグにおいて総合4位(女子1位)の成績を収めたことで、令和3 年(2021年)に女流特別採用推薦で入段。令和4年(2022年)4月からは「囲碁フォーカス」の聞き手としても人気を博しています。
大森らん初段
大森らん(おおもり・らん)初段は広島県江田島出身の女流棋士です。小学校1年から囲碁を習い始め、中学1年生のときには女流囲碁アマチュア広島県大会で優勝し、全国大会に出場しました。中学2年生で関西総本部の院生になり、8時間かけて江田島と関西総本部を往復していたそうです。
中学卒業後は単身で大阪に移り住み、16歳で女流特別採用推薦棋士として入段。デビュー戦となった第29期竜星戦は同期の仲邑菫初段と対決し、「すみれVSらん」の同期対決として注目され、約40社100人の報道陣が集まりました。途中までは互角でしたが、大森らん初段がデビュー戦を白星で飾りました。
塚田千春初段
塚田千春(つかだ・ちはる)初段が囲碁を始めたのは、5歳のときにお姉さんが通う囲碁教室について行って興味を持ったことがきっかけだそうです。小学2年で村松大樹六段に弟子入りし、翌年には院生の入会試験に合格。
当初は厳しい現実に自信を失っていたものの、中学2年のときに囲碁イベントで芝野虎丸王座の対局の記録係を務め、果敢な攻めを見て奮起したことが転機になりました。また、院生の仲間である大森らん初段の入段にも刺激を受けたそうです。中3の令和2年(2020年)2月に研修リーグで好成績を収め、女流特別採用推薦で入段。高校入学と同時に入段となりました。
徐文燕初段
徐文燕(ジョ・ブンエン)初段は小学校入学前に実母の金艶四段から囲碁のルールを教えられて興味を持ち、教室に通い始めました。小学3年生のときには小学生大会の東京代表に選出。6年生のときには全国少年少女大会で準優勝します。翌年の平成29年に日本棋院の院生になりました。
毎年1枠しかない狭き門の女流棋士採用試験に3度目の挑戦で1位となり、令和3年度に入段しました。目標は藤沢里奈女流本因坊とのことです。
木部夏生二段
木部夏生(きべ・なつき)二段は漫画「ヒカルの碁」の影響で囲碁教室に通い、小学4年生のときに院生になるも「I型糖尿病」を発症します。しかし翌年に上京し、藤沢一就八段に入門。平成24年(2012年)16歳でプロ棋士になりました。平成28年(2016年)に二段、令和4年7月に天元戦予選C小松英樹九段との対局に勝利して三段に昇段しています。
著書に「誰でもカンタン! 図解で分かる 碁の現代布石」(マイナビ出版、2021年)、「誰でもカンタン! 図解で分かる 囲碁実戦手筋」(マイナビ出版、2022年)などがあります。ままた、YouTubeチャンネル「女流棋士・べっきーの電波塔」を開設し、囲碁実況や対局の振り返りの他、ダンスの動画をアップ。Twitterやnoteでも囲碁や持病などについて情報を発信しています。さらに日本糖尿病協会のインスリンメンターとして講演活動も行うなど、棋士以外の活動も熱心です。
まとめ
活躍する女流棋士12名をご紹介しました。令和2年に男女混合棋戦の公式戦「広島アルミ杯・若鯉戦」で藤沢里菜女流本因坊が優勝し、翌令和3年には上野愛咲美女流棋聖が優勝。同年、上野愛咲美女流棋聖は女流初となる年間最多勝を受賞しました。また、上野愛咲美女流棋聖は令和4年の女流世界一を決める「SENKO CUPワールド碁女流最強戦2022」でも優勝と、ここ数年、囲碁の女流棋士の活躍は目覚ましいものがあります。
注目を集める中学生棋士の仲邑菫二段は、すでにさまざまな最年少記録を更新しています。若手の台頭が目立つ女流棋士の活躍から今後も目が離せないでしょう。