スマート農業とは?導入するメリット・デメリットと導入事例を紹介

スマート農業とは?導入するメリット・デメリットと導入事例を紹介

次世代型の農業として「スマート農業」が注目されています。しかし、スマート農業とはそもそもどのようなものなのか知らない人も多いのではないでしょうか?そこで当記事では、スマート農業の詳細について実際の導入事例を見ながら、「導入することでどのようなメリット・デメリットがあるのか」、また、客観的にどんな取り組みがなされているのか分かりやすく解説します。

スマート農業とは?

スマート農業とは、ロボットやAI、IoTなどの先端技術を活用して、農作業の省力化や高品質な生産を可能にする次世代型の農業のことです。

日本の農業においては、技術やノウハウが熟練者に偏っている傾向にあり、新規参入者が増えにくいことによる人員不足や作業負担が大きな課題です。そのような現状にスマート農業を取り入れることは、作業の負担を軽減するとともに、新規参入者への農作業スキル継承を容易にし、人員不足を解消するなどのメリットが生まれると期待されています。

「スマート家電」「スマートホーム」「スマートウォッチ」など、「スマート」から始まる先端技術を利用した製品開発はあらゆる分野で急速に進んでいます。その中で農業は、どうしてもアナログなイメージが強く、ITなどの技術を取り入れることは難しいとされてきました。そのような従来のイメージを覆すかのように、ここ数年で研究や開発が進み、導入も拡大しています。

スマート農業の導入事例5選

では、先端技術はどのような形で従来の農作業に組み込まれているのでしょうか。こちらでは、スマート農業の導入事例を5つご紹介いたします。

農業用ロボット

近年、接客ロボットや掃除ロボットなど、日常生活の中でロボットを目にする機会も増えてきたのではないでしょうか。そのようなロボットは、スマート農業でも活用されています。

一口にロボットといっても、その活用方法はさまざまです。たとえば、作物の収穫や箱詰め、田畑の除草など、これまで人の手で行っていた作業の一部をロボットに任せられるようになりました

また最近では、作物の収穫というタイミングが重要な作業に関しても、ロボットとAIを組み合わせることによって自動化を実現させる研究が進んでいます。

このようなロボット技術が進歩していけば、農業に関わるすべての作業をロボット任せにできる未来も夢ではありません。ロボットを農業にうまく取り入れることによって、人員不足やスキルの偏りといった課題解決を目指せるでしょう。

農業用ドローン

農業用ドローン

テレビなどでよく見る、「空撮」に用いられるドローン。農業では、主に空中から農薬を散布する用途で用いられます。また、センサーの技術と組み合わせることで害虫の発生状況を読み取り、状況に合わせて散布するといった技術も開発されています。

従来の空中散布のやり方としては、産業用のヘリを活用することが主でした。しかしこのヘリには1000万円以上の高額な導入コストがかかり、なかなか手が届きづらいという実情があります。加えて農薬のコストもかかることを考えると、農家にとっては大きな出費でした。

一方で農業用ドローンの導入コストは100~200万円程度です。一度購入すれば、空中散布にかかるコストは農薬代だけに抑えられます。

そのほかにも、空中からの種まきや肥料の散布などさまざまな作業に活用できます。ドローンは農作業の負担軽減に役立つでしょう

農業用AI

農業で成功している農家には、昔からのスキルやノウハウがあります。一方で、それがない新規就農者が農業で軌道に乗ることは難しく、離農する人も少なくありません。農業における人員不足の一因ともいえます。

この課題を解決する糸口となるのがAIです。AIを活用してスキルやノウハウをシステム化することにより、初心者にも伝承しやすくなるのです。これにより、農業参入へのハードルが下がり、人員不足を解決するのが狙いです。

すでに作物の画像や色から収穫時期を判別できるシステムが開発され、実用化しています。なかなか判断しづらい収穫のタイミングを判断してもらえるのは、初心者にとっては大きな助けになるでしょう。AIは新規就農者を支える技術になっていくかもしれません。

自動選別機

収穫した作物を、状態や病気の有無などの観点から等級分けしていく選別作業。状態の悪いものを市場に出荷してしまうとクレームにつながる可能性もあり、非常に重要な作業です。従来の選別作業は、長年の経験から培った見極める目が求められていました。それが近年、自動選別機が開発され、多様な農作物の選別が自動化されています。

さらにセンサーの技術と組み合わせることによって、糖度や酸度、また見た目だけではわからない内部の状態などを検知できるシステムも開発されています。

ビッグデータの活用

ビッグデータを活用し、合理的かつ効率的に作物の栽培状況を管理する仕組みの開発も進められています。

たとえば、圃場(ほじょう)に温度や湿度を計測するセンサーを設置することで、作物の生育状況や害虫などによる状態の変化が誰でもわかるようになります。さらに気象データなどのビッグデータを解析することによって、大洪水などのリスクを先読みすることができ、対策に役立つでしょう。

ノウハウを誰にでもわかる形に落とし込むことで、技術レベルの均一化を達成するという狙いがあります。

スマート農業の5つのメリット

さまざまな先端技術が活用されているスマート農業。では、それらを導入することによってどのようなメリットが得られるのでしょうか。こちらでは、5つの導入メリットを解説いたします。

農作業を見える化できる

農業では、広い敷地内で複数の作物を並行して育てることもあります。そのため、どの作業がどこまで進んでいるのか、あるいは滞っているのかといった全体像が見えにくいといった課題がありました。そこでスマート農業を導入することで、農作業をデータ化し、どこに人員を割くべきなのか一目で把握できる状態に見える化できます。これによって、効率よく作業を進められるでしょう。

スキルを次世代に継承しやすくなる

スキルを次世代に継承しやすくなる

農業は、始めてすぐにうまくいくものではありません。それどころか、長年の経験の中で培ってきたスキルや知識がものを言う世界といえるでしょう。そのため、経験が乏しい新規就農者が、成功の時を待たずして離農してしまう割合も高くなっています。こうして慢性的に人手不足が起こってしまうといった背景がありました。

そのような課題に対してスマート農業を活用することで、スキルを誰の目から見てもわかりやすい形にシステム化できます。目に見えない経験を形にすることで、次世代に農業スキルを継承しやすくなり、人手不足の解消をもたらすことが期待されています。

農作業の業務改善につながる

先述のように、従来の農業は理屈よりも知識や経験がものを言う世界です。そのため、日常的に田畑の様子を目視でチェックし、害虫や作物の実り具合から育成状況を確認しなければなりませんでした。

スマート農業を導入することにより、田畑の様子をカメラやセンサーなどでチェックし、数値をデータとして把握できます。さらに農薬や肥料の散布など、従来は人の手で行われていた作業をスマート農業によって自動化することも叶います。農作業全般の業務改善に役立ちますので、空いた時間を経営判断や人員育成に充てることもできるでしょう。

作業効率化で生産量が向上する

スマート農業を導入して作業を機械化することによって、人間が休んでいる間にも効率的に農作業を進められます。人と機械の二刀流で作業を進めることで、生産量のアップが見込めるでしょう。さらに、今までよりも多くの作物を収穫できることで、国内での食糧需給率の向上も期待できます。

農作業の負担を軽減できる

農作業の負担を軽減できる

スマート農業の導入により、農作業を省力化が叶い、農家の負担を軽減できるのもメリットのひとつです。たとえば、体力が必要な作業を機械化することにより、高齢になっても農作業に継続的に参加しやすくなります。これまで体力的な問題で農業への参入をあきらめていた人にとってもハードルが下がり、人手不足の解消にもつながるでしょう。

スマート農業の懸念点とは?

さまざまなメリットが期待できるスマート農業。しかし、現状すべての農家がスマート農業を導入しているわけではありません。それは、いくつかの懸念すべき事項があるためです。メリットと併せてデメリットも把握しておきましょう。

初期費用がかかる

農作業全体のコストダウンが期待されているスマート農業ですが、普及が進む現在でも初期導入費用が高額であることが課題です。また、初めて触れる機器を使いこなせるのか想像しづらく、費用対効果の見通しが立ちづらいといった側面も導入の妨げになっています。今後スマート農業の導入がさらに拡大していけば、低コスト化にも期待できるかもしれません。

機器同士の互換性が低い

スマート農業で活用されるさまざまな機器には、統一された基準がありません。各メーカーが各々で開発を進めているため、機器同士の互換性が低いことが考えられます。また、新しい機器が、すでに使用している古い機器と互換性が無かったり、連携させらなかったりといった問題が生じる可能性も否定できません。

技術を使いこなすスキルの習得が必要

技術を使いこなすスキルの習得が必要

スマート農業で効率的に作業を行うには、複数の機器をうまく使いこなさなくてはならず、操作や使い方を新たに覚える必要があります。これまで手作業や目視で行ってきた作業員にとっては、新たなスキルの習得は難しく感じるかもしれません。しかし、使いこなせるようになれば労力の削減や生産量の向上などさまざまなメリットが期待できます。

まとめ

スマート農業とは、ITやAI、ロボット技術などさまざまな先端技術を活用した次世代型の農業です。導入して使いこなすことで、農作業にかかる負担軽減やスキルを継承しやすくするなど、さまざまなメリットをもたらします。一方で、高額な初期費用や機器同士の互換性などが導入の壁となっている側面もあります。こうした課題をいかに取り除けるかが普及へのカギとなるでしょう。

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