ヤスデは駆除した方が良い?生態や被害・侵入を防ぐ方法を解説

ヤスデは駆除した方が良い?生態や被害・侵入を防ぐ方法を解説

ダンゴムシが細長くなったような外見の虫、ヤスデ。ひとを咬(か)んだり刺したりする害は与えませんが、足の多い特徴的な見た目やしばしば起こる大量発生のために、嫌われることもある虫です。

今回は、ヤスデの生態やその害についてご紹介しながら、駆除したほうがよいのかどうかをご説明いたします。また、ヤスデが家に入り込むのを防ぐ方法や、やむを得ない場合に駆除する方法、そして効果的な殺虫剤についてご紹介いたします。

ヤスデという虫

古くはアマビコ(雨彦)、ゼニムシ(銭虫)と呼ばれたヤスデは、節足動物で多足類の虫です。漢字では「馬陸」と書くこともあります。

ヤスデの外見

細長い筒状で節の多い体形をしており、たくさんの足で地面を這(は)います。体色は、明るい褐色から黒っぽい褐色までさまざまです。小さいものでは体長2㎜ほど、セイシェル諸島に生息するダイオウヤスデのような大きなものだと、体長28㎝にもおよびます。驚いたときなどには、頭を内側にしてエビのように体を丸めることから、円座虫(えんざむし)という呼び名もあります。

ムカデとの違い

同じように細長い体形で、たくさんの足をもつ虫にムカデがあります。ヤスデはよくムカデと間違われますが、ムカデと違って動きが鈍く、また毒性もありません。ヤスデは、頭および頭に続く2節を除いてひとつの節に複数の足が生えており、この外見から2者を見分けることができます。

咬まれると強い痛みのあるムカデについては、「ムカデが発生する原因とは?ムカデの退治方法と予防対策」の記事でご説明しています。

ヤスデの種類

ヤスデは世界に約1万種いるといわれています。日本産のヤスデは289種で、他にはっきり分類されていないものもあります。国内でもっともよく見かけるのは、ヤケヤスデです。

【参考】日本分類学連合 日本産生物種数調査 「ヤスデ綱」

ヤスデの生態

ヤスデの生態

それでは、ヤスデはどのような場所に生息する虫なのでしょうか。ここでは、エサや活動時間など、ヤスデの生態をご説明いたします。

ヤスデのエサ

ヤスデは植物質を食べます。とくに落ち葉や腐葉土などについた真菌類を食べ、消化した後はフンとして排出することから、自然界では植物を分解する役割を担っています。

好む場所

腐った植物などをエサにするため、ヤスデが好むのは、山や林の落ち葉が集まるところです。落ち葉や腐葉土があれば、街なかの公園や住宅街などにも住みつくことがあります。

苦手な場所

ヤスデは、日当たりのよい明るいところ、乾燥した場所を嫌います。鳥やネズミ、モグラ、カエル、トカゲといった小動物はヤスデをエサにします。また、カメムシの一種アカシマサシガメや、沖縄県西表島に生息するイリオモテボタルの幼虫などは、好んでヤスデを捕食することがわかっています。ヤスデをエサとして食べる生物が多いところでは、繁殖しにくい可能性もあるといえるでしょう。

活動時期

4~7月にかけてと、9~10月にかけて繁殖期があります。馬陸(ヤスデ)が夏の季語にもなっているとおり、暑い時期に活発に動き回ります

活動時間

ヤスデは主に日の落ちた後、夜間に活動します。ただし、湿気が多い場所では日中に活動することもあります。

ヤスデの一生

幼虫時期を地中で過ごすこともあって、ヤスデの生態にはまだわかっていないことも多く、種や生息環境によっても違います。日本でもっとも一般的なヤケヤスデを例にとると、寿命はおよそ一年で、毎年6月ごろに成虫が姿を見せはじめます。交尾がおこなわれるのは8~10月ごろの暑い時期で、親は産卵後に息絶えます。幼虫は、卵から孵化(ふか)すると脱皮を繰り返しながら次第に節を増やして成長し、翌年6月ごろには7回目の脱皮で成虫になります。

ヤスデは害虫なのか

足の多い外見や大量発生により嫌われることがあるヤスデは、一般に「不快害虫」とされています。しかし、ヤスデは本当に「害虫」なのでしょうか。ここでは、ヤスデが自然界のなかで果たしている役割や、ひとの暮らしに不都合な場合がある事例をご紹介いたします。

ヤスデの役割

先述のとおり、ヤスデは落ち葉や腐った植物などをエサにして、食べかすをフンとして排出します。自然界では、「植物を分解して土に返す」という重要な働きをしています。

ヤスデの害

その一方で、ヤスデのもたらす害としては次のようなものがあります。

臭液を分泌する

ヤスデには、キノンやシアンを含んだ、いやなにおいのする液を分泌する種があります。エサにしようと近づく捕食者を退ける防御のためで、肌に触れたり目に入ったりするとかぶれることがあるため、注意が必要です。
2021年、鹿児島県鹿児島市の住宅地域で、外来ヤスデ「ヤンバルトサカヤスデ」が大量に姿を見せました。このヤンバルトサカヤスデはシアン化合物を含む臭液を出すため、地域の住民は対応に困り、鹿児島市が駆除に当たりました。

【参考】「気持ち悪い」虫、ヤスデが大量発生 例年より早い出現の原因は(毎日新聞)

日本では石垣島、西表島など沖縄県八重山地方に生息する、ヤエヤママルヤスデの分泌液の毒性がもっとも強いといわれています。

列車の進行を妨害

列車の進行を妨害

ヤスデは、ある地域で急激に個体数が増えることもあります。八ヶ岳山麓を走る小海線(山梨県・小淵沢駅から長野県・小諸駅)では、オビババヤスデが大量に線路に侵入。ひかれたヤスデの体液で列車の車輪が滑ってブレーキがきかなくなり、運休する事象が起き、キシャヤスデと名づけられました。

【参考】萩原康夫・桑原ゆかり「富士山麓におけるキシャヤスデ類の大発生」『富士山研究第2巻』、2008年

その後も、長野、山梨、埼玉などで急激な増加が見られましたが、「大発生した年に繁殖した個体が成虫になる」「ほぼ8年の周期で繰り返す」と考えられているほか、原因はよくわかっていません。

ヤスデは駆除する必要があるか

ヤスデは駆除する必要があるか

このように、ときには害ももたらすヤスデですが、駆除する必要はあるのでしょうか。

積極的な駆除は必要なし

先述のとおり、ヤスデには植物を食べ分解して土に返す働きがあり、生態系のなかで一定の役割を担っています。基本的には益虫なので、積極的に駆除する必要はないといえます。

ヤスデの侵入を防ぐために

たくさんの足で地を這う様子に不快感を覚えたり、人によっては怖がったりすることもあるかもしれません。駆除はしないまでも、ヤスデが家の中に入り込まないようにする方法はあるのでしょうか。

ヤスデの好む環境をつくらない

ヤスデは、湿り気の多い場所を好みます。そこで、家の周りにヤスデが隠れやすいような落ち葉、枝、ごみなどを置かないように気をつけ、日当たりや風通しをよくすることで、ヤスデが住みつきにくくなるといえます。

消石灰をまく

消石灰には、まいた場所にヤスデが近づきにくくなる効果があります。成分の水酸化カルシウムは、水を含むと強いアルカリ性を示します。このため害虫類を遠ざけるとして、園芸用品などを販売する店で扱われています。

木酢液を吹きかける

ホームセンターや園芸用品店などにある、木酢液(もくさくえき)を使う方法もあります。木酢液は、木炭を作るときに出る液体で、焦げたような特有のにおいがあります。ヤスデが好みそうな湿った場所やドア・窓・排水口など、家に入り込む経路になりそうな場所にまくと、このにおいを嫌って虫が寄りつきにくくなるとして、園芸などに使われています。

効果があるのは殺虫剤

消石灰や木酢液ではあまり効き目が見られなかったり、雨のかかる場所では日が経つにつれ効果が薄れたりすることもあるかもしれません。また、ある程度ヤスデを遠ざけることはできても、退治できるわけではありません。駆除するなら、やはり殺虫剤を使用するのが効果的といえます。

ヤスデを駆除するときは

やむを得ずヤスデを退治する場合は、フマキラーの「カダン お庭の虫キラーダブルジェット」が役立ちます。

「カダン お庭の虫キラーダブルジェット」とは

「カダン お庭の虫キラーダブルジェット」は効き目の早い殺虫成分が配合されたスプレー剤で、害虫に噴射するだけで素早く退治することができます。

適用範囲が広く、200種以上の害虫に対して効果があります。ヤスデやムカデなどの地を這う虫や、ガやユスリカなどの飛ぶ虫など、さまざまな虫を退治できます。さらに虫が嫌う成分により、寄りつきを予防する効果も発揮。雨や水がかからない条件下で、およそ1カ月害虫が近寄るのを防ぐ効果が期待できます。虫をよく見かける通り道や、巣を作りそうな場所にスプレーしておくとよいでしょう。

ヤスデの繁殖・侵入を予防する

ヤスデの繁殖・侵入を予防する

ヤスデは、たくさんの足で床や地面を這い回る様子や、ときどき急激に数が増えることで嫌われることもある虫です。しかし、危険を感じたときに強いにおいの液を放つほかは、人間に直接的な害をもたらす虫ではありません。

まずは、ヤスデが好む暗くてじめじめした環境を少なくしましょう。そして忌避効果のある薬剤をまいて、庭でヤスデが繁殖したり家に入り込んだりする機会を減らし、気持ちよく暮らしてください。

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