セグロアシナガバチの巣は自力で駆除できるのか?予防法と対策

セグロアシナガバチの巣は自力で駆除できるのか?予防法と対策

アシナガバチは、人や動物を刺すハチです。巣を守ろうとする習性があるため、家のまわりに巣がある場合はできるだけ早く駆除した方がよいといわれています。

今回は、アシナガバチの一種であるセグロアシナガバチを取り上げ、巣を自分で駆除してもよいのかどうかをご説明いたします。また、セグロアシナガバチに巣を作らせないよう、予防する方法もご紹介いたします。

セグロアシナガバチとは

セグロアシナガバチは、日本最大級の大きさのアシナガバチです。どのような特徴があるハチなのか、ご説明いたします。

分類

セグロアシナガバチを含むアシナガバチの仲間は、すべてスズメバチ科に属します。

分布

本州から四国、九州に広く分布します。最近は温暖化の影響か、分布が確認されていなかった北海道でも巣が見つかったという報告があります。

活動時期

4~11月ごろで、夏に繁殖期を迎えます。

活動場所

主に平地、低い山地に姿を見せます。

外見上の特徴

体長21~26mmのセグロアシナガバチは、胸と腹の間がくびれた体型をしています。黄褐色の頭に、外側が黒い胸をもちます。

飛び方

他のアシナガバチと同様、足を伸ばしてふらふらと飛びます。

キアシナガバチとの見分け方

よく似たハチにキアシナガバチがあり、どちらも低い山地に多く見られます。外見上の特徴としては、胸部背面最後方(お腹との境目の直前)の後ろ側が黒いのがセグロアシナガバチ、後ろ側に黄色の線が二本あるのがキアシナガバチですが、飛んでいるときにそれを見分けるのは容易ではありません。

【参考】セグロアシナガバチ(岐阜大学教育学部 理科教育講座 地学教室)

セグロアシナガバチの生態

それでは、セグロアシナガバチはどのように暮らすハチなのでしょうか。

エサ

セグロアシナガバチは狩りバチの一種ですが、狩りの能力は高くなく、芋虫や毛虫など動きの遅い虫を捕らえます。狩りを行う成虫は肉食ではなく、虫を捕まえて作った肉団子は幼虫に与えます。肉団子を食べた幼虫が口から吐き出す栄養のある汁を、成虫が舐めます。汁だけでは足りないため、花の蜜や樹液などから糖分を摂取します。

営巣

家の軒下や庭木などに巣を作ります。巣は最大で直径15㎝ほどの大きさになり、六角柱の巣穴が露出した形で営巣されます。

繁殖

卵は40日から70日後に羽化して成虫になります。働きバチは交尾せず、女王の子どもである兄弟姉妹の世話を行います。セグロアシナガバチは集団で生活するハチで、一匹の女王バチとたくさんの働きバチによるコロニーを形成します。繁殖期になると、次期女王バチが羽化して交尾します。次期女王バチ候補はそのまま巣を離れ、朽ち木などに潜って冬をやり過ごします。翌年春に冬眠から目覚めた次期女王バチは新しく巣を作って産卵します。

攻撃性

警戒心が強く、人や動物が巣に近づくと威嚇します。巣を直接攻撃される、巣がある木に衝撃を与えるなど、巣に対して害をなす刺激を受けると攻撃的になり、人を刺すことがあります。

セグロアシナガバチの害

家の近くにアシナガバチが巣を作ると危険といわれます。セグロアシナガバチの場合はどのような害があるのでしょうか。

人を刺す

セグロアシナガバチのメスは、人や動物を刺します。多くは人が巣に近づいたときですが、家の中に入り込んだことに気がつかずに近づいてしまって刺されることもあるため、注意が必要です。刺されると、傷口が腫れて強い痛みを感じます。アレルギーによるアナフィラキシーショックを起こすこともあるので、刺された後は注意深く体調を観察しましょう。

繁殖期に巣に近づくのは危険

集団生活を営むハチは、繁殖期の夏から秋にかけては巣を守ろうとして警戒心が強くなり、近づくものに対して攻撃的になります。次期女王バチが羽化し、巣が最も大きくなる夏から秋ごろはとくに注意が必要です。

繁殖期のアシナガバチ対策については、「夏から秋にかけて凶暴化するアシナガバチの対策!」の記事をご覧ください。

ハチに気づかずに刺されることも

ハチに気づかずに刺されることも

秋などは、外に干した洗濯物に女王バチがついているのに気づかず、うっかり触って刺されることがあります。

スズメバチを呼び込む危険性

家の近くにアシナガバチの巣があることで、スズメバチを呼び込んでしまうことがあります。アシナガバチ類の幼虫を捕食するヒメスズメバチが、エサを探してセグロアシナガバチの巣に来ることがあるためで、そうなると大変危険です。

セグロアシナガバチの防除

刺されると困るセグロアシナガバチですが、庭木の枝や農作物につく毛虫や青虫をエサとして捕食するため、農業や園芸では益虫の側面もあります。どのようにすれば、セグロアシナガバチの被害を少しでも減らすことができるのでしょうか。

黒い服を避ける

ハチは黒や濃い色の服に反応することがわかっています。ハチが活発に動き回る時期には黒い服を避け、髪の毛は帽子で覆うなどして、刺激しないようにしましょう。

家のまわりに巣を作らせない

セグロアシナガバチは比較的低い場所にも巣を作ることがあるので、以前に巣を作った庭木などを防虫ネットで覆うことも防除法のひとつです。

被害を減らすためにより効果があるのは、ハチが嫌う成分の含まれた殺虫剤をまき、寄りつきを防ぐことでしょう。

セグロアシナガバチの駆除

個々のハチを駆除したとしても、近くに巣がある場合は他のハチに刺されるリスクが残ります。その場合は、ハチの巣そのものを取り除かなければなりません。

巣の駆除には危険が伴う

ハチは巣を守るため、近づくものを攻撃する性質があります。巣を取り除くときには、十分な装備を用意する必要があるでしょう。

巣のサイズが小さいうちに

セグロアシナガバチの巣は、ハチの動きが活発になるにつれて大きくなります。駆除を考えるなら、ハチの数がまだ少なく巣も小さいうちの方が、危険はより少ないといえます。

ハチが活発でない時期に

ハチの巣の駆除は、働きバチが生まれる前の春先が理想的といえるでしょう。この時期には越冬した女王バチがいるだけで、ハチが少ないからです。しかし、働きバチが生まれて繁殖期を迎えると、ハチはどんどん増えて動きも活発になり、その分危険も増します。

なお、晩秋以降は働きバチがすべて死に、女王バチだけが越冬します。この時期の巣からはやがてハチがいなくなるので、駆除が必要なほどの危険は薄いと考えてよいでしょう。

巣の駆除の実際

それでは、セグロアシナガバチの巣を駆除する場合、どのように作業を進めたらよいのでしょうか。

駆除は日没後に

セグロアシナガバチをはじめ、アシナガバチには巣を作った場所に執着する習性があります。巣を取り除いたとしても、出かけているハチが戻ってきた場合、同じ場所に巣を再建する危険性があります。また、巣の外にハチがいると、巣を守ろうとして近くにいる人を攻撃することも考えられます。そこで巣の駆除は、巣にハチが確実に戻った日没後の時間におこないます。

用具などの準備は十分に

用具などの準備は十分に

殺虫剤を用いて巣を駆除しても、薬剤の散布が不十分だったり、巣の外にハチが残っていたりする場合は、作業者を攻撃するおそれも十分に考えられます。露出している顔部分には防虫ネットを、また首にはタオルなどをまいておくと、もしハチに襲われたとしても針が肌まで届きにくくなるといえます。薬剤から皮膚や粘膜を守るためにも、帽子やゴーグル、手袋などを用意しましょう。ハチは黒や濃色の衣服に興奮することがあるため、白っぽい服・小物類の装着が無難です。

日没後の作業の場合、懐中電灯を使って手元を照らすこともあるかもしれません。この際、巣に光を当てないように注意する必要があります。光源に色付きのセロファンなどを張って、ハチを刺激しないよう工夫しましょう。

自治体によっては、駆除業者を紹介したり、駆除に必要な用具を貸し出したりする制度を設けているところがあります。

【参考】アシナガバチの駆除方法(横浜市泉区)

巣に「カダン ハチ・アブダブルジェット」をスプレー

フマキラーの「カダン ハチ・アブダブルジェット」は、強力なダブルジェット噴射により、最大11mの距離からハチを駆除できます。服装などの用意ができたら、巣をめがけてスプレーしましょう。羽ばたき・行動停止成分を配合しているので、ハチの動きを止めて退治できます。また、持続殺虫成分により、巣に戻ってきたハチや、新たに羽化したハチもまとめて駆除することが可能。巣を作りそうな場所にあらかじめスプレーしておけば、約4ヵ月間、ハチの寄りつきを防ぐ効果も発揮します。

ハチとハチの巣の駆除については、「ハチ対策豆知識 ③ ハチ・ハチの巣を駆除したい」の記事でご説明しています。

ハチの駆除は安全確保のうえ慎重に

ハチの駆除は安全確保のうえ慎重に

農業や園芸においては益虫の側面もあるセグロアシナガバチですが、やはり刺されるのは避けたいものです。まずは、家のまわりに巣を作らせないよう防虫ネットや忌避剤で予防しましょう。そのうえで、やむを得ない場合には「カダン ハチ・アブダブルジェット」などの殺虫剤を使って駆除するのが効果的です。

殺虫剤を使用する場合、適用対象にハチが入っていることを必ず確認しましょう。また、スズメバチの駆除については危険が伴うため、専門の業者に駆除を依頼することをおすすめします。

【参考】
森林生物 セグロアシナガバチ(国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所)
「アシナガバチ」『平凡社世界大百科事典 第2版』

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