2021年8月25日 | 虫
ヘビトンボは珍しい虫?ヘビトンボの種類や生息地、駆除方法を紹介
「ヘビトンボ」という名前を聞いたことがありますか?ヘビとトンボが合体したような不思議な名前ですが、いったいどのような生物なのでしょうか。
今回は、ヘビトンボの種類や生息地、そしてヘビトンボと自然環境のかかわりについて解説いたします。また、ヘビトンボに出会った場合の対処法や、駆除の仕方もご紹介いたします。
ヘビトンボは昆虫
ヘビトンボは体長4㎝ほどの、やや大型の昆虫です。頭や胸は黄土色で、幅の広い透明なはねを前後2対、合計4枚もっており、どことなくトンボを連想させる姿です。
「ヘビ」+「トンボ」の名前の由来
ヘビトンボは、漢字では「蛇蜻蛉」と書きます。名前に「ヘビ」が含まれる理由は、捕まえようとすると大きなあごでかむからのようです。ヘビトンボにかまれると傷口が痛みますが、毒はもっていません。名前の「トンボ」の部分は、大きく透明なはねが目立つ外見に由来すると考えられるでしょう。
【参考】「ヘビトンボ」日本大百科全書(ニッポニカ) (小学館)
ヘビトンボの仲間
生物学的な分類上は、ヘビともトンボとも関係ありません。昆虫の分類に「アミメカゲロウ目」というグループがあり、そのなかの「ヘビトンボ亜目」というカテゴリがヘビトンボの仲間です。熱帯から温帯にかけての地域に生息し、世界に約100種いるといわれています。
日本にいるヘビトンボの仲間
日本では、北海道から本州、四国、九州、沖縄に広く分布しています。近年になって、福井県で「カクレクロスジヘビトンボ」、佐賀県・福岡県の里山で「チクシクロスジヘビトンボ」が発見され、全部で15種いることが確認されています。
【参考】
ナウシカで見た?ヘビトンボの新種発見 親子2代で偉業(朝日新聞)
日本のヘビトンボ類(2)(東京都立大学動物生態学研究室)
ヘビトンボの一生
ヘビトンボは、卵から幼虫になり、さなぎを経て成虫に育ちます。
水の中に住む幼虫
ヘビトンボの幼虫は、川や渓流の石の下などに生息します。幼虫は肉食で、ユスリカなど水辺に住む小さな昆虫類や小動物をエサにします。気温の下がる冬期は成長せず、4年ほどかけてゆっくり育ち、6㎝ほどの大きさになります。
日本では民間薬だったヘビトンボの幼虫
幼虫の黒焼きの粉末が、孫太郎という体の弱い男の子の病気を治したと伝えられたことから、「孫太郎虫」(まごたろうむし)という名前でも知られています。かつては、子どもの疳(かん)を鎮める効能のある民間薬として、広く使われていました。
奥州斎川(現在の宮城県白石市)の孫太郎虫が有名でしたが、戦後は周辺の開発など環境の変化でヘビトンボが採れなくなり、今では幻の薬になっているようです。
さなぎなのにかむ? 活動的なヘビトンボのさなぎ
ヘビトンボの幼虫は、水中で育ちます。3度めの冬を越した初夏から夏に、湿った土の中に楕円形の穴を掘り、さなぎになって籠(こ)もります。そして、およそ2~3週間で羽化します。
さなぎは石や木の下の地中に潜んでいるので、目にする機会はあまりなさそうです。しかし、さなぎにも大きなあごがあり、かまれることがあります。もしさなぎを見かけても、刺激しないようにそっとしておきましょう。
夏の夜に活動するヘビトンボの成虫
成虫は、6月の終わりごろから夏にかけて活動します。夜行性で、とくに活発に動くのは日没後から数時間のあいだです。灯りに引き寄せられる習性があり、同じように灯りに集まる小さな昆虫をエサにします。このため、街灯や玄関灯、室内の灯りがもれる窓辺で見かけることがあるかもしれません。
成虫の寿命は数日~10日ほどで、日中は水辺の石の下や木の上で過ごします。雑木林などでヘビトンボを見かけることがあるのは、水分を補給するために樹液を摂るからのようです。
ヘビトンボと自然環境
ヘビトンボは、河川や渓流に生息する昆虫です。きれいな水にしか住まないので、水質を示す「指標生物」になっています。
「きれいな水」の目安になるヘビトンボ
環境省は、河川の水質の状況を調べるため、全国水生生物調査をおこなっています。この調査では、「分類が容易で水質に係る指標性が高い」とされる29種類の水生生物を観察します。その結果により、「きれいな水」「ややきれいな水」「きたない水」「とてもきたない水」の4階級で水質を判定します。
この方法は、特別な薬品や高価な機材を必要とせず、また実践的な環境教育にもなることから、全国の自治体や学校などで取り組まれています。この調査で用いられる、水質の手がかりとなる「指標生物」のひとつがヘビトンボです。対象河川が、4階級で一番汚染の少ない「きれいな水」であることを示す生物のひとつになっています。
【参考】「川の生きものを調べよう 水生生物による水質判定」環境省水・大気環境局、国土交通省水管理・国土保全局編
絶滅危惧種になっているヘビトンボ
自然界の生物のうち、まったく存在しなくなった状態を「絶滅」といいますが、近い将来に絶滅のおそれのあるものを「絶滅危惧種」といいます。水質の影響を受けやすいヘビトンボは、複数の都道府県で数の減少が見られ、絶滅危惧種や準絶滅危惧種になっています。
ヘビトンボ科では、次の種が「準絶滅危惧」とされています。
- アマミヘビトンボ(準絶滅危惧/沖縄県)
- タイリククロスジヘビトンボ(準絶滅危惧/埼玉県・香川県)
- ヤマトクロスジヘビトンボ(準絶滅危惧/埼玉県・香川県)
また、同じヘビトンボ目のセンブリ科では、以下の種が「準絶滅危惧(種)」です。
- ウスバセンブリ(準絶滅危惧種/北海道)
- クロセンブリ(準絶滅危惧/埼玉県)
- ヤマトセンブリ(準絶滅危惧/栃木県、希少種/奈良県)
【参考】日本のレッドデータ検索システム(NPO法人 野生生物調査協会・NPO法人 Envision環境保全事務所)
かまれると痛いヘビトンボの害
名前に「ヘビ」が含まれるのは、ヘビトンボが大きなあごでかむことに由来するのは先述のとおりです。毒はありませんが、傷がはれ上がり、かなりの痛みがあります。成虫だけでなく、幼虫・さなぎもかむことに注意しましょう。
虫を寄り付きにくくする住まいの工夫
先述のとおり、灯りに集まる虫などを食べるために、ヘビトンボは街灯や玄関灯に飛んで来ます。夏の夜、ヘビトンボが屋内に入り込まないようにするには、ドアや窓を開け放たないようにすることが大切です。窓を開けるときには、なるべく目の細かい網戸を使うようにしましょう。
また、遮光性のあるカーテンやロールスクリーンなども活用しましょう。夜間、室内の灯りが窓から外にもれないよう工夫すれば、虫が集まるのを防ぐこともできます。
「できれば虫を見たくない」ときに便利な予防効果
庭木や家庭菜園の手入れをする際、できれば虫を見ずに済ませたいという方もいることでしょう。とくに、虫の存在に気づかずにかまれたり、刺されたりするのは避けたいものです。また、退治した後の虫の死骸を片付けるのは気が重いという方もいるかもしれません。
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家庭菜園や花壇でも安心して使える
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川や渓流に近い地域で必要な、ヘビトンボ対策
ヘビトンボは清流に住み、水質判定の目安になる昆虫であること、ところによっては絶滅のおそれがある「準絶滅危惧種」になっていること、他方かまれると痛いうえ日常生活では困った点があることを、ご理解いただけたことと思います。
ヘビトンボは夏に活動する夜行性の昆虫で、灯りに集まる性質があります。夏の夜は窓やドアを開け放しにせず、窓には網戸を使って、ヘビトンボが屋内に入るのを防ぐ工夫をしましょう。また、虫よけ効果のあるスプレー剤を使うことで、庭にヘビトンボが住みつくのを防ぐこともできます。
きれいな水が豊富な地域だからこそ生息する虫ではありますが、家のまわりでは上手に対策して、ヘビトンボの害を防ぎましょう。
【参考】
吉田利男他「ヘビトンボの生活史に関する知見」『昆蟲』53(4)、東京昆蟲學會、1985年12月25日
「ヘビトンボ」日本大百科全書(ニッポニカ) (小学館)