アンガ-マネジメントとは?怒りをコントロールする方法を紹介

アンガ-マネジメントとは?怒りをコントロールする方法を紹介

家族とのケンカ、同僚や上司との言い争いなど、人は怒りの感情が湧くと周囲に強く当たってしまう傾向にあります。そして怒りの感情が収まると、「なぜ自分はあんなことをしてしまったのか…」といったような後悔の念にかられることも少なくありません。

また、怒りの感情を他人にぶつけたことによって、周囲から孤立してしまうというケースもあります。このような怒りを上手にコントロールするのに役立つのが『アンガ-マネジメント』です。

普段あまり聞かない用語ですが、アンガ-マネジメントとはどのようなものなのか?今回はアンガ-マネジメントの基本を学びながら、怒りを上手にコントロールする方法などをご紹介いたします。

アンガ-マネジメントとは?

アンガ-マネジメントとは?

アンガ-マネジメントとは怒りの感情を予防、抑制する心理療法のことを指します。人間は納得のいかないことなどが起きると、怒りの感情が生まれてきます。

納得できない対象となるのは、人はもちろんのこと、物や環境なども含まれます。具体例を挙げると、以下のようなものがあります。

  • 他の人から冷たい言葉を投げ掛けられた
  • 他の人に大切にしていた物を壊された
  • 仕事の進め方について周囲の人間と考え方が違った
  • 家の設備機器が不具合により上手く動作しなかった
  • 1日中雨が降っている

など

怒りの感情というと他人の行動や言動によって湧き上がるイメージがありますが、中には「ガスコンロに火がつかない」「気温が低くて寒すぎる」といった、人とはまったく関係ないこと、ちょっとしたことでイライラや怒りの感情が湧いてくる人もいます。

そしてアンガ-マネジメントはこの怒りをコントロールする、もしくは上手に付き合うのに有効な手段のひとつです。アンガ-マネジメントはもともと1970年に米国で誕生したとされている心理教育、心理トレーニングのひとつです。

その後、日本にもアンガ-マネジメントの考えが導入され、現在ではアンガ-マネジメントを身に付けるための協会も存在しています。

【参考サイト】一般社団法人 日本アンガ-マネジメント協会

ちなみに一般社団法人 日本アンガ-マネジメント協会によると、アンガ-マネジメントの受講者数は2019年半ばで述べ100万人に達したとのことです。怒りの感情は会社、家庭、学校など複数の人間が存在する場面では高い確率で発生するものです。

怒りの感情を上手くコントロールできない方は周囲の人間との争いや、亀裂などを生み出し、最悪の場合は社会から孤立する可能性もあります。このような怒りによるデメリットを解消できるのが、アンガ-マネジメントの大きなメリットです。

人はなぜ怒りの感情を抱くのか?

人はなぜ怒りの感情を抱くのか?

私たちは日常生活の中で「○○さん、また怒ってるよ」「○○部長が怒っているから、また誰かがミスをしたな」といったような光景をよく目にします。そもそも人はなぜ怒りの感情を抱くのでしょうか?

これは人が持っている「周囲にお願いしたい(要望や希望)という感情」が関係しているといわれています。

私たちは日常生活を送る中で「○○はこうしたらもっと上手くいくのに…」「あの人がもう少し仕事ができれば早く帰れるのに…」など、心の中で何かしらの要望や希望の感情を抱えています。

そしてこれらの要望や希望を怒りの感情によって実現しようとすることもあります。一例を挙げると朝礼で怒りながら「今月は全員○○本の契約を取ってくること!」と伝える上司。

これは「○○本以上の契約を取ってきてほしい」という要望や希望を、怒りの感情によって表現しているということです。

このように怒りというのは「○○にはこうしてほしい」「○○には○○をやってもらいたい」といった人の心の中にある要望、希望を表現するための方法のひとつとされています。

スポーツのシーンなどでよく聞かれる鬼コーチ、スパルタコーチは選手によく怒っているイメージがありますが、適切な怒りを表現できると選手にもプラスの効果が生まれ、大きな大会で上位に進出することもあります。

もちろんただ頭ごなしに怒っている指導者などの場合は、周囲との間に大きな確執が生まれることもあります。怒りの感情というのは使い方によってプラスにもマイナスにも働くということを覚えておきましょう。

怒りは一次感情ではなく二次感情

怒りは一次感情ではなく二次感情

これは心理学では有名な説ですが、怒りは一次感情ではなく、二次感情といわれています。基本的に怒りの感情が湧き上がる前には、以下のような感情が心の中に生まれます。

  • 恐怖
  • 寂しさ
  • 不安
  • 恐れ
  • いら立ち

よく「強がりの人や怒りっぽい人は精神的に弱い」ともいわれます。これは恐怖感、寂しさといった感情を隠すためにわざと強がったり、怒りでごまかしたりしているということです。

つまり怒りの感情の裏には「自分が抱えている不安や寂しさを周囲の人にわかってもらいたい」といった一次感情が存在しているということです。

自分の気持ちに素直な人というのは「最近、1人の時間が多いから誰かと話をしたい」「今度のテストが不安だから○○の助けを借りたい」といったように、今の正直な気持ちを相手に包み隠さず伝えることができます。

ところが怒りの感情を表に出しすぎている方は、恐怖や寂しいといった弱い感情を周囲に見せることができないため、怒りという表現方法を用いているのです。

なぜ社会ではアンガ-マネジメントが求められるのか?

前述のように近年ではアンガ-マネジメントを身に付けようとする社会人が増加傾向にあります。では、なぜ社会ではアンガ-マネジメントが求められるのか?

これにはいくつかの理由がありますが、最も大きなものとして挙げられるのは「周囲との円滑な関係作り」です。周囲との協調性が重要視される社会生活では、理不尽な怒りの感情を表に出すことは好ましいことではありません。

自分がただ気に入らないからという理由で怒りを前面に押し出すと、周囲の萎縮や反感を買う可能性は高くなります。しかし、適切な怒りの感情であれば、周囲と摩擦が生じることは少ないです。

適切な怒りとは、周囲からみても「怒りたくなる気持ちはわかる」「これは怒られても仕方がない」といえるような状況で生まれた怒りのことを指します。

一例を挙げると仕事でミスをした部下が上司に報告せずに顧客からクレームが入った場合。このようなケースではミスをしたことを速やかに上司に報告していれば、顧客からのクレームも防げた可能性が高いため、上司が部下を叱責するのは適切な怒りといえるでしょう。

そもそもアンガ-マネジメントでは怒ることや怒りの感情を否定しません。怒りというのは人であれば誰もが抱く感情ですから、これを否定するのは正しいアンガ-マネジメントとはいえないでしょう。

怒りの感情と上手く付き合うこと、適切な怒りか否かを自分で見極められること。これらのポイントをクリアすれば、自分自身をコントロールすることは十分に可能です。

社会生活を送る上で不適切な怒り、理不尽な怒りの感情を前面に押し出す人は孤立する恐れもあります。この弊害を防ぐために、現代社会ではアンガ-マネジメントを身に付けた人材が求められる傾向にあるのです。

怒りをコントロールする3つの方法

怒りをコントロールする3つの方法

アンガ-マネジメントの大きな特徴として「衝動」「思考」「行動」の3つの観点から、怒りをコントロールする術を身に付けるというのが挙げられます。詳細をひとつずつチェックしていきましょう。

【衝動】怒りが生まれてから6秒待つ

人は怒りの感情が生まれると、どうしてもその怒りを周囲にぶつけがちです。これを防ぐ有効な方法として取り上げられているのが「6秒間ガマンする」ということです。一般的に怒りのピークは6秒間だといわれています。

つまりこの6秒間をガマンできれば、怒りにまかせた衝動的な行動を抑制できる可能性があるということです。友達とケンカしているときに出た暴言、今までの良好な関係を否定するような発言などは、ほぼこの衝動的な怒りが関係していると思われます。

一度怒りの感情が生まれるとマシンガンのような暴言を吐く人などは、とにかく最初の6秒間をガマンしてみましょう。これだけで周囲を傷つけるような行動は減少するはずです。

【思考】相手に求めすぎていないか確認する

人にはそれぞれの考え方や価値観があります。一例を挙げると「○○の仕事はこうやるべきだ」「家族とはこうあるべきだ」「友達とはこうあるべきだ」といった考え方です。

この「~べき」というのは、あくまでも自分の考え方であって、周囲も同じような考えを持っているとは限りません。

そのため、自分の考え方と異なる考え、価値観を持った人が現れると「納得できない」「なぜだ」といった感情が生まれ、それが最終的に怒りへと変化していきます。つまり自分だけのこだわりポイントなどがある方は、周囲との摩擦が生じやすいということです。

これを改善するには、自分の中にある「~べき」を捨てる努力をすることです。特に「~べき」というこだわりを多く持っている方は、一度そのすべてをノートなどに書き出してみましょう。

そしてひとつずつ自分のこだわりをチェックしてきながら「○○は絶対に譲れない」「○○は必要のないこだわりかもしれない」といったように、必要なこだわりと不要なこだわりに分けてください。

不要なこだわりは今すぐに捨てることができれば、怒りの感情を生み出す「~べき」という考えは少なくなります。

また、絶対に譲れないこだわりポイントに関しては、怒りで表現するのではなく、柔らかめの表現を使うなどの工夫を施してみましょう。こうすることで周囲との摩擦が生じることなく、自分の考えや要望を伝えることができます。

【行動】「しょうがないか」と割り切る気持ちを持つ

前述のように人が怒りの感情を覚える理由は人、物、環境などさまざまです。物事には怒りによって変えられることと変えられないことがあります。怒りの感情を表に出すことで自分も周囲もプラスの効果が得られれば、それは適切な怒りといえるでしょう。

しかし、怒っても変わらないものに対して怒りの感情をぶつけても、誰かが得をするわけではありません。怒りの感情をぶつけても変化しないこととは、具体的に説明すると天気(雨や雪などの悪天候)、天災などです。

これらは自然の力に左右されるものですから、人が怒りの感情を前面に出しても変化することはありません。

逆にこのような怒っても変化しないことにまで怒りをぶつけてしまうと、周囲も「○○のことで怒っても何も変わらないのにね…」といったあきれにも近い感情を抱きます。

どうにもならないこと、絶対に変えられようがないことにまでイライラすると、不要なストレスを抱え、自分自身にとって良いことはないでしょう。

「これぐらいなら仕方がないか」「○○のことで怒ってもしょうがないか」といったような、割り切る気持ちを持つことも社会生活を送る上では重要です。

現代はストレスフルの社会!怒りの感情と上手く付き合う術を身に付けよう

怒りの感情は程度の差こそあれ、人であれば誰もが抱くものです。ですからよく怒っている人に対して「怒るな」というのは、正しい対処方法とはいえません。怒りの問題点となるのは、それが「適切な怒りなのか?」「不適切な怒りなのか?」ということです。

適切な怒りであれば周囲との関係を良好に保つことができますが、不適切な怒りだと自分が損をするのはもちろんのこと、他者との関係もギクシャクしたものになってしまいます。このような弊害を防ぐ効果があるのが、心理療法のひとつであるアンガ-マネジメントです。

現代社会はストレスを抱える人が増加傾向にあるといわれており、それによって怒りを上手くコントロールできずに、周囲との摩擦を生んでしまう方も少なくありません。職場、学校、自宅など、人との付き合いというのはどのようなシーンでもついて回るものです。

怒りと上手く付き合う術を身に付ければ、大きな過ちなどを犯す可能性も減ります。「自分はカッとなるとすぐに周囲の人に当たってしまう」という方は、ぜひ参考にしてください。

「For your LIFE」で紹介する記事は、フマキラー株式会社または執筆業務委託先が信頼に足ると判断した情報源に基づき作成しておりますが、完全性、正確性、または適時性等を保証するものではありません。

こちらの記事もオススメです!