2018年6月15日 | お役立ち情報
【所得税】アルバイトやパートは月の収入がいくらから発生する?
アルバイトやパートで働く方の多くは親、配偶者の扶養に入っていると思います。したがって扶養に入っている方は月収や年収を気にしながら働く方も少なくありません。
扶養から外れてしまうと自身にも所得税がかかり、家族の税金負担も大きくなります。そこで今回は所得税がかかる月の収入、年間の収入に関連した情報を解説します。「扶養から外れずに働くことを強く希望している」という方は必見です。
月収8万8,000円以上、年収103万円超えで所得税が発生
アルバイト、パートをしている方は「月の収入がいくらになると所得税が発生するの?」という疑問を抱えていることが非常に多いです。結論から述べると月収8万8,000円以上、年収にすると103万円超えで所得税を支払う必要が出てきます。
詳細は後述しますが、まずは所得税がかかる月収8万8,000円以上、年収103万円超えという金額をしっかりと覚えておきましょう。
ちなみに年収103万円超えに関しては、メディアなどでも頻繁に「103万円の壁」として取り上げられているので聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
「年収103万円の壁」というのは、今回のメインテーマでもある所得税が発生するか否かのラインのことを指しています。また年収が103万円を超えると親や配偶者の扶養家族になっている場合は、扶養を抜けなければなりません。
これによって親や配偶者が支払う税金も高くなるため、扶養に入っているアルバイト、パートで働く方は年収103万円を超えない働き方を推奨されることが多いです。
なぜ月収8万8,000円以上、年収103万円超えで所得税が発生するの?
月収8万8,0000円以上、年収103万円超えで所得税が発生することはわかりました。
しかし「月収8万8,000円以上、年収103万円超えで所得税が発生するのはなぜ?」という新たな疑問が出てきましたね。この疑問に関しては、所得税における2つの控除制度を知ることで解決できます。
給与所得控除
1点目の控除制度は「給与所得控除」です。給与所得控除とはアルバイトやパートで得た収入に対して一定の金額を差し引くものです。所得税というのは給与収入ではなく、給与所得に対して課される税金です。
給与収入とはいわゆる月収、年収のことを指します。一方の給与所得とは上の給与収入からアルバイトやパートの必要経費とみなされる金額を差し引いたものを指します。
この給与収入から必要経費として一定の金額を差し引いてくれる制度が「給与所得控除」となります。給与所得控除の額は給与収入の額に応じて、以下のように定められています。
給与等の収入金額 (給与所得の源泉徴収票の支払金額) |
給与所得控除額 |
---|---|
180万円以下 | 収入金額×40% 65万円に満たない場合は65万円 |
180万円超 360万円以下 | 収入金額×30%+18万円 |
360万円超 660万円以下 | 収入金額×20%+54万円 |
660万円超 1,000万円以下 | 収入金額×10%+120万円 |
1,000万円超 | 220万円 (上限) |
【参考サイト】国税庁「№ 1410 給与所得控除」
アルバイトやパートで働かれている方の多くは上の表の「180万円以下」に該当すると思います。年収180万円以下の方の場合は最低でも65万円の給与所得控除を受けることができます。
基礎控除
基礎控除とは税金を納める方すべてが受けることができる所得控除を指します。基礎控除の金額は年収などに関係なく、一律38万円となっています。ここで上で取り上げた給与所得控除をもう一度見てみましょう。
先ほど給与所得控除は最低でも65万円の控除を受けることができると解説しました。この給与所得控除の65万円と基礎控除の38万円を合算すると103万円になります。つまり年収103万円以下の方の給与所得は0円です。
所得税は給与収入ではなく、給与所得に対して課されるものですから、年収103万円以下の方は所得税が発生することはありません。逆に年収103万円を超えると2つの控除を受けても給与所得が発生しますから、自ずと所得税もかかることになります。
給与所得控除、基礎控除の仕組みを知ると自然と「月収8万8,000円以上、年収103万円超えで所得税が発生するのはなぜ?」という疑問も解消できますからぜひ覚えておきましょう。
学生の場合は年収130万円まで非課税
前述のようにアルバイト、パートで働く方は月収8万8,000円未満、年収103万円以下であれば給与所得控除や基礎控除の制度によって所得税を納める必要がなくなります。そして学生の場合はこの2つの控除制度に加えて「勤労学生控除」を申請することができます。
勤労学生控除は一律で27万円の控除を受けることができるため、学生アルバイターは年収130万円までは所得税がかかることはありません。
ただし親の扶養に入っている場合は103万円を超えると、所得税発生の有無に関係なく扶養を外れることになります。この影響で親の税金負担が重くなることもあるので、高校や大学に通いながらアルバイトをしている学生は注意しておきましょう。
源泉徴収について
アルバイトやパートで働く方なら一度は源泉徴収という言葉を見たり、聞いたりしたことがあると思います。源泉徴収とは給与を支払う会社、企業が収入金額に応じて所得税を天引きする仕組みのことを指します。
所得税は1年間の収入(年収)に対してかかる税金ですが、年間の収入は12月31日にならないとわかりません。しかし年末に1年間分の税金をまとめて支払うのは税金を納める側からしてみたら、大きな負担がかかることになります。
そのため、毎月の収入金額から概算で出した所得税を天引きしています。源泉徴収される金額は以下のように月の収入ごとに異なります。
その月の給与金額(社会保険料等控除後) | 源泉徴収税額 |
---|---|
8万8,000円未満 | 0円 |
8万8,000円以上~8万9,000円未満 | 130円 |
8万9,000円以上~9万円未満 | 180円 |
9万円以上~9万1,000円未満 | 230円 |
9万1,000円以上~9万2,000円未満 | 290円 |
9万2,000円以上~9万3,000円未満 | 340円 |
9万3,000円以上~9万4,000円未満 | 390円 |
9万4,000円以上~9万5,000円未満 | 440円 |
9万5,000円以上~9万6,000円未満 | 490円 |
9万6,000円以上~9万7,000円未満 | 540円 |
【参考サイト】国税庁 平成30年分 源泉徴収税額表「給与所得の源泉徴収税額表 (月額表) (1から7ページ)」
ご覧のように月の収入が8万8,000円未満の場合は源泉徴収が行われることはありません。
年末調整について
源泉徴収によって天引きされた所得税は、源泉徴収税額表に基づき計算されたものです。つまり仮計算による所得税ということになります。正しい所得税額がわかるのは年末(1年間の給与が確定するタイミング)です。
したがって年末に正式な納税額を出すために調整をする必要があります。この正しい納税額を算出するために行われているのが年末調整です。
年末調整によってその年に納めた税金が払いすぎとわかった場合には還付され、不足している場合には徴収という手続きが行われます。アルバイト、パートをしている方は繁忙期などの影響で特定の月だけ8万8,000円以上の収入になるということもあるでしょう。
この場合は源泉徴収税額表に定められた金額が天引きされます。しかし、年間の収入が103万円以内の場合は所得税を納める必要がありませんから、該当する方は年末調整を行うことで、先に納めた金額が戻ってくることになります。
年末調整は働き損を防ぐためにも大切なことですから、その仕組みをしっかりと理解しておきましょう(※もちろん年末調整によって不足分を納めるケースもあります)。
アルバイトやパートの掛け持ちをしている場合はどうなるの?
収入を増やしたい、空き時間を有効活用したいなどの理由でアルバイトやパートを掛け持ちしている方もいます。
この掛け持ちのケースでは所得税に関する処理などはどのように行われるのでしょうか?ここではアルバイト、パート掛け持ちの方が特に意識しておきたいポイントをまとめましたのでご覧ください。
POINT①~掛け持ちの収入合計で所得を計算する~
基本的にアルバイトやパートを掛け持ちしている方も、1社のみで働く方と同様の考えで構いません。月収8万8,000円以上、年収103万円超えで所得税を納める必要が出てきます。
もちろんこの金額は掛け持ちの収入合計で計算することになります。メインとなる勤務先での年収が103万円でも、もう一つの勤務先で給与の支払いを受けていれば所得税が発生することになるため、この点は注意しておきましょう。
POINT②~メインとなる勤務先のみに必要書類を提出する~
ここから掛け持ちの所得税に関する仕組みが少し複雑になります。まず毎月の源泉徴収に関してですが、メインとなる勤務先には「平成〇〇年分 給与所得者の扶養控除等 (異動) 申告書」を提出します。
この扶養控除等申告書はあくまでもメインの勤務先のみに提出するものですので、複数の勤務先に提出しないように注意しておきましょう。
もし、メインの勤務先以外から扶養控除等申告書の提出を求められた場合は「他の会社でも働いているので」という旨を伝えれば会社側も理解します。
そして源泉徴収に関してはすべての勤務先で行われることになります。ただし、源泉徴収される金額はメインの勤務先とその他の勤務先では大きく異なります。
メインの勤務先では源泉徴収税額表の甲欄に記載された金額が天引きされます。甲欄の金額に関しては、前述の「源泉徴収税額表」を参考にしてください。
一方のメイン以外の勤務先では源泉徴収税額表の乙欄に記載されている金額が天引きされることになります。メイン以外の勤務先で源泉徴収として天引きされる金額は以下のとおりです。
その月の給与金額(社会保険料等控除後) | 源泉徴収税額 |
---|---|
8万8,000円未満 | その月の社会保険料等控除後の給与等の金額の3.063%に相当する金額 |
8万8,000円以上~8万9,000円未満 | 3,200円 |
8万9,000円以上~9万円未満 | 3,200円 |
9万円以上~9万1,000円未満 | 3,200円 |
9万1,000円以上~9万2,000円未満 | 3,200円 |
9万2,000円以上~9万3,000円未満 | 3,300円 |
9万3,000円以上~9万4,000円未満 | 3,300円 |
9万4,000円以上~9万5,000円未満 | 3,300円 |
9万5,000円以上~9万6,000円未満 | 3,400円 |
9万6,000円以上~9万7,000円未満 | 3,400円 |
【参考サイト】国税庁 平成30年分 源泉徴収税額表「給与所得の源泉徴収税額表 (月額表) (1から7ページ)」
ご覧のようにメインの勤務先以外では月の収入が8万8,000円未満でも約3%相当の金額が源泉徴収されます。また月の収入8万8,000円以上でも3,000円以上が源泉徴収として天引きされるため、最初は驚かれる方も多いです。
ここではひとまず「メインの勤務先(扶養控除等申告書を提出した勤務先)」と「メイン以外の勤務先」では源泉徴収として天引きされる金額に違いがあることを覚えておきましょう。
POINT③~年末調整をしてもらえるのはメインの勤務先のみ~
最後に年末調整です。アルバイト、パートを掛け持ちしている方が年末調整を受けられるのはメインの勤務先のみです。これは2ヵ所以上の勤務先で年末調整をすると、扶養控除などが重複して正しい納税額を算出することができなくなるためです。
したがって掛け持ちで働いている方は年末調整を行ってくれるメインの勤務先でまとめて年末調整を行う、もしくはメイン以外の勤務先の所得は自分で確定申告をすることになります。
意識的に年収103万円以内に抑えている方で、掛け持ちをしている人は確定申告をしないと源泉徴収として天引きされたお金が戻ってきません。掛け持ちの方は働き損を防ぐためにも、確定申告をしっかりと行うようにしましょう。
月収8万8,000円未満、年収103万円以内の数字を覚えておこう
親、配偶者の扶養に入っている方はアルバイトやパートで受け取る給与額にもかなり気を使われていると思います。「月の収入、年収がいくらになると所得税が発生するの?」という方も多いです。
このような方の中にはうっかり働きすぎて扶養を抜けざるをえないという経験をされた方もいます。扶養から外れてしまうと自分だけではなく、家族が負担する税金も大きくなります。
したがって扶養内で働きたいというアルバイト、パートの方は「月収8万8,000円未満、年収103万円以内」の数字をしっかりと覚えておきましょう。
この金額内に収まっていれば、所得税を支払うことはありませんし、扶養から抜ける必要もありません。所得税発生、扶養から外れてしまう条件などでお悩みの方はぜひ参考にしてください。