2018年6月25日 | お役立ち情報
学習定着率を高めるラーニングピラミッドとは?効果的な学習方法
親にとって、子どもの成績は気になるところ。様々な勉強方法の中から、どのような方法が効果的なのか悩む親御さんが数多くいます。そこでこの記事では、効率の良い学習方法として話題の「ラーニングピラミッド」をご紹介します。
この「ラーニングピラミッド」を基に効果的な学習方法について解説し、ちょっとした工夫で学習効率をアップさせる方法をお教えします。
「ラーニングピラミッド」とは何?
「ラーニングピラミッド」とは、簡単に言うとどんな学習方法がしっかり頭に残るかを分類してピラミッド型の図にまとめたものです。この図は、アメリカ国立訓練研究所が発表した研究結果で、7つの学習方法を学習の定着率順に並べています。
ラーニングピラミッドでは、7つの学習方法にそれぞれ学習定着率を付けて次のよう並べています。
※「学習方法…学習定着率(%)」で表しています。
- Lecture(講義)…5%
- Reading(読書)…10%
- Audiovisual(視聴覚)…20%
- Demonstration(実演説明)…30%
- Discussion Group(議論し合うグループ)…50%
- Practice Doing(練習)…75%
- Teaching Others(他者に教える)…90%
ラーニングピラミッドにある学習方法について
ラーニングピラミッドで挙げられている学習方法を具体的に言うと、次のようになります。
-
- Lecture(講義)…授業や講義を聞いて学ぶ
- Reading(読書)…教科書や書籍を読んで学ぶ
- Audiovisual(視聴覚)…ビデオや写真を見て学ぶ
- Demonstration(実演説明)…実験などの実演を見て学ぶ
- Discussion Group(議論し合うグループ)…与えられた課題をグループで議論する
・Practice Doing(練習)…問題集などを解いて練習する
・Teaching Others(他者に教える)…覚えたことを他の人に教える
「学習定着率」について
「学習定着率」とは、覚えたい知識をどれだけ効率よく頭の中にインプットできるかを具体的な数値で表したものです。アメリカ国立研究所では、この学習定着率の数値が高いほどその学習方法は効率が良いとしています。
ラーニングピラミッドを見ると、単に講義を受けているだけでは学習定着率が5%と低く、覚えたことを他の人に教えると学習定着率が90%になります。つまり、学習者にとって受動的な環境ではなく、能動的になる環境が効果的だと示しています。
ラーニングピラミッドが注目される理由
学習者が能動的になって学ぶ方法は「アクティブラーニング(能動的学習)」と呼ばれて注目を集めています。
ラーニングピラミッドは、このアクティブラーニングの重要性を分かりやすく説明していることから、高校や大学といった学校や企業などで数多く取り上げられて注目を集めています。
ラーニングピラミッドが示す「アクティブラーニング」とは?
アクティブラーニングは、具体的に言うと講師や教師による一方的な指導ではなく、学習者による体験学習やグループ・ディスカッション、討論会、グループ・ワークなどを中心とした学習方法を指します。
文部科学省は、これからの学校教育にアクティブラーニングを取り込もうとしています。2020年に改編される幼稚園から高等学校を対象とした学習指導要領に「主体的・対話的で深い学び」の実現を挙げています。
この「主体的・対話的で深い学び」がアクティブラーニングを指していて、学ぶことに興味を持って取り組む主体的な能力と、生徒同士や教職員などとの対話で自己の考えを広める対話的な能力を育てて、より深い学習を目指そうとしています。
「アクティブラーニング」が注目される理由
アクティブラーニングは、ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学といった世界的に有名な大学の講義で活用され、高い評価を得ていることから注目されています。今では、大学だけでなく企業の社員教育にも取り入れられています。
アクティブラーニングのメリットは、ラーニングピラミッドが示す高い学習定着率だけではありません。文部科学省は、アクティブラーニングを取り入れて「生徒が能動的に学ぶことで、認識的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る」としています。
簡単に言い換えると、アクティブラーニングを取り入れることでグローバル化など急速に進む社会全体の変化にも十分対応できる人材を学校教育で育てることを目指しています。
先生からの授業を聞くだけでなく、生徒自らが調べたり、実験や議論したりする機会を設けることで、生徒が社会に出ても通用する「主体性」や「対話力」を高めようとしています。
アクティブラーニングを取り入れると、「主体性」や「対話力」を高めながら学習定着率もアップさせて学ぶことができます。
ラーニングピラミッドを活かした効果的な学習方法
ラーニングピラミッドにある学習定着率が50%以上の学習方法で見てみると「Discussion Group(議論し合うグループ)…50%」「Practice Doing(練習)…75%」「Teaching Others(他者に教える)…90%」となっていて、能動的な学習方法(アクティブラーニング)が学習定着率を高めています。
そこで、アクティブラーニングを取り入れた学習方法についてご紹介します。
学習方法 その1:生徒同士で勉強を教え合う
入学試験の難易度がトップレベルで有名な、兵庫県神戸市にある灘中学・高等学校。毎年、東京大学や京都大学への進学者を数多く輩出する超有名進学校ですが、偏差値の高さだけでなく自由な校風としても知られています。
自由な校風の例として、少し変わった学校風景があります。放課後になると、生徒が職員室の前にある廊下に集まって「勉強の教え合い」を始めるのです。職員室前の廊下は普通の廊下よりもひと回り以上広くなっていて机やベンチが用意されています。
授業を終えた生徒たちは、この広い廊下に集まってワイワイガヤガヤとお互いに勉強を教え合い、生徒同士で分からなければ職員室にいる先生に聞きます。この風景は、授業が終わった午後3時頃から始まり、退校時間の午後6時まで続くようです。
ここでポイントなのは、生徒たちが「静かに自習する」のではなく「勉強を教え合う」点です。灘中学・高等学校の生徒たちは、口に出して友達に教えることで自分の頭の中が整理できることを理解しています。
ラーニングピラミッドにある「Discussion Group(議論し合うグループ)」や「Teaching Others(他者に教える)」に繋がっています。つまり、アクティブラーニングが自然に行われているのです。
灘中学・高等学校の生徒でなくても、友達同士が学校帰りに集まって勉強会を開くことはあるかと思います。そのときに、図書館などで静かに勉強するのではなく、分からないことを口に出して教え合うことが大事なポイントです。
親としてできることは、子ども同士が集まれるように我が家を提供したり、親が子どもの同級生に代わって一緒に勉強したりすると良いでしょう。
学習方法 その2:間違えた問題を正しく見直す
子どもが自宅で勉強をするとき、問題集を繰り返し解いて学ぶ方法を行っていることも多いかと思います。ラーニングピラミッドにも「Practice Doing(練習)」の定着率は75%となっています。
しかし、問題集を解いていても学力が思ったように上がらないケースが数多くあります。これは、その時に行っている「Practice Doing(練習)」が、アクティブラーニングに繋がっていない可能性があります。
普段行っている問題集を解く学習方法をアクティブラーニングに繋げるポイントは「間違えた問題の見直し方」にあります。問題集を解くことで大切なのは、「学んだことをどれだけ覚えているかを確かめる」のではなく、「自分は何を覚えていないのかを確かめる」ことです。
つまり、「問題集を解くことで、自分の弱点を見つける」ようにするとアクティブラーニングに繋がります。
例えば、個別指導学習を行っている学習塾では、まず生徒に問題集を解かせてから間違えた問題を見直す方法を行っています。
数学の問題を10問ほど解かせた後に講師が採点し、間違った問題をもう一度生徒に解かせます。それでも解けなかった場合、講師は生徒に何が分からなかったかを聞きます。生徒は、何が分からないかをきちんと理解した後に講師から解き方を学びます。
自宅でたくさん問題集を解いても成績が上がらないのは、この見直し方が間違っている可能性が大きくあります。一人で間違った問題を見直すとき、ただ答えを見るだけではアクティブラーニングに繋がりません。
これは、ラーニングピラミッドにある学習定着率が75%の「Practice Doing(練習)」ではなく、学習定着率が10%の「Reading(読書)」になってしまいます。
間違えた問題の正しい見直し方は、次のような方法です。
間違えた問題の正しい見直し方
- 子どもが中心となって、なぜ間違えたか理由を説明する
- 子どもが中心となって、正しい問題の解き方を説明する
例えば、子どもが間違えた問題について、親は「この問題はどうやって解いたらいいの?」と生徒になった気持ちで聞いてあげると良いでしょう。
この時に大切なのは、「なんで間違ったの?」と問いただすのではなく「どうしたら解けるのか教えて」という問いかけです。親は、子どもを先生に仕立てて、子どもが自らの弱点をきちんと理解して説明できるように導くと良いでしょう。
学習方法 その3:間違えた問題を集めたノートを作る
子どもが一人でも能動的に学べる方法があります。それはノート作りです。例えば、問題集を見直すときには、間違えた問題を集めたノートを作るようにします。自分なりのノートを作ることは、能動的な学習方法の一つです。
子どもが、自分にとって分かりやすい参考書のようなノートを作るように心がけます。さらに、このノートを作ると自分の弱点が一目でわかるので、テスト前の勉強を効率よく行うことができるでしょう。
ノート作りで大切なポイントは、「問題を解く手順を体系的にまとめる」ことです。問題を間違える理由は、知識不足の他にも解き方のプロセスが分かっていないことがあります。そこで、自分が何を分かっていないかを知るために、問題集で間違えた問題を書き込んだ後、以下のような点をまとめます。
ノート作りのポイント
- なぜ間違えてしまったかを解説…子どもが自分で間違った部分を指摘する
- 問題を解くために必要な知識を書き込む…「間違った例」との違いをまとめる
- 間違えた問題に関連した知識をまとめる…関連知識を調べることで、さらに知識を増やす
例えば数学のノートを作るとき、間違った問題を書き込んだ後、子どもが自分で間違えたポイントを指摘します。その間違った例の下に、正しい解き方を書き、実際の計算過程のポイントを加えます。さらに、似たような問題を自分で作って解いてみます。
このように、「なぜ間違えたかを理解する」「間違えた点と正しい点の違いを理解する」ことで問題を解く手順を体系的にまとめられます。最後に間違った問題に関連することを調べてより知識を深めると良いでしょう。
「Teaching Others(他者に教える)」ことが効果的な学習方法
ラーニングピラミッドを見ると、一番学習定着率が高い学習方法は「Teaching Others(他者に教える)」になっています。確かに、他者に教えようとすることで学習者自らが主体的になって知識を学んだり、頭の中を整理したりできます。
効果的な学習方法とは、ただ知識を詰め込むだけのインプットではなく、誰かに伝えようとするアウトプットを意識するとアクティブラーニングに繋がり、学習定着率を高めることができるでしょう。
子どもにとって効果的な勉強方法へ導くには、受動的な学び方でなくアウトプットを意識した能動的な学習方法を取り入れてみてはいかがでしょうか。
※2019年7月12日/本記事の一部を修正いたしました
本記事中にて「ラーニングピラミッド」を「学説」として紹介いたしましたが、同考えについては論拠となる論文や文献の所在が曖昧であり、またご指摘もいただいたため「学説」と記載していた箇所を修正いたしました。