2018年3月25日 | お役立ち情報
赤ちゃん出産の流れ – 陣痛から出産までにかかる時間は?
出産を間近に控えたママ、特に初めて出産を経験するママほど不安の気持ちが強くなると思います。先輩ママから「出産は大変だよ」と聞かされている方ほどそう感じるでしょう。これらの不安、心配という感情は出産の流れなどを把握できていないことも影響しています。
そこで今回は出産の流れ、陣痛から出産までにかかる時間など出産に関する基本的な情報を解説します。
陣痛から出産までにかかる時間
詳細は後述しますが陣痛から出産までの流れは大きく3段階に分けられています。そしてこの3段階の過程を経て無事に赤ちゃんが生まれてくるまでの時間は初産婦と経産婦で異なることが多いです。
まずは初めて出産を経験する初産婦の方ですが、概ね12時間~16時間ほどの時間を要します。一方の第二子を産むママなどすでに出産を経験している経産婦の方を見ると5時間~8時間ほどで出産が終わることが多いようです。
もちろん初産婦、経産婦ともに出産までにかかる時間は個人差があるため、すべての方が前述の時間通りに終わるとは限りません。初産婦、経産婦で出産時間が異なる理由ですが、経産婦は初産婦と比べると産道(赤ちゃんの通り道)が広がりやすい傾向にあるため、出産所要時間を短縮できることが多いです。
ただし何度もいうように出産時間には個人差があるため、必ずしも一度目より短くなるわけではありません。したがって上で取り上げた陣痛から出産までにかかる時間はあくまでも目安程度に覚えておくことを推奨します。
陣痛開始から出産までの流れを解説
陣痛から出産までは大きく3段階に分けられて進行します。ここでは各段階ごとに分けて陣痛開始から出産までの流れを解説します。
分娩第1期 (開口期)
分娩第1期(開口期)とは規則的に陣痛が始まってから、子宮口が全開になるまでの段階を指しています。実は前述の出産時間の2/3以上はこの分娩第1期(開口期)で要することになります。
それほど子宮口が全開になるというのは大変なことでもあるのです。子宮口は最大で10㎝ほどまで開きますが、この間は1分~10分間隔で陣痛が起きます。また20秒~60秒の連続した陣痛が続くのも特徴です。
一般的に時間の経過とともに陣痛周期が短くなり、陣痛発作の持続時間も長くなる傾向にあるので、この点は事前に把握しておくことを推奨します。陣痛が本格的になってピークに達した時点で分娩室に移動し、スタッフの支持で楽な姿勢や陣痛の痛みを呼吸法で和らげる工夫を施します。
子宮が開き、骨盤の繋ぎ目が緩んだり、産道が柔らかくなるなどママの身体は徐々に分娩に備えるようになります。ちなみに子宮口が全開になる頃には赤ちゃんも徐々に下りてきています。
ここまでが分娩第1期(開口期)の流れとなりますが、所要時間としては初産婦だと12時間~14時間、経産婦で4時間~6時間ほどを目安にしておくとよいでしょう。この分娩第1期(開口期)は陣痛が始まる苦しい時間帯となりますので、呼吸法やマッサージなどで痛みを和らげることがポイントとなります。
分娩第2期 (娩出期)
分娩第2期(娩出期)は子宮口が全開になってから、赤ちゃんが産まれてくるまでの段階を指します。所要時間の目安は初産婦で2時間~3時間、経産婦で1時間~1時間30分ほどとなります。
子宮口が全開になったらスタッフの指示に従いながら、いきみ始めます。陣痛の波に合わせていきみ続けていると排臨(はいりん)の状態に入ります。排臨とはいきむたびに赤ちゃんの頭が膣から見え隠れすることを指します。
さらに時間が経過すると赤ちゃんの頭が完全に膣から見える発露(はつろ)の段階へと進みます。この際にいきむのをやめるよう合図を出されることもあり、その後「ハッハッハッハッ」と細かく刻む呼吸法に切り替えていきます。
一般的に赤ちゃんの頭が見えてくれば、後はすんなりと出てきてくれることが多いです。ただし分娩2期(娩出期)でも約1分間隔で陣痛が起き、お腹、肛門、腰に強い痛みを伴うことが多いので、ママさんは最後の踏ん張りを見せる必要があります。
分娩第3期 (後産期)
分娩第3期(後産期)は赤ちゃんの娩出から胎盤の娩出が完了するまでの段階のことを指しています。分娩第3期(後産期)の所要時間目安は5分~10分ほどとなります。
この段階では無事に出産が終わっていますから、ママさんは安心感と安堵感に包まれていることが多いです。ただ分娩第3期(後産期)でも軽い陣痛が来発します。この出産後に起きる陣痛を後産期陣痛と呼びます。
後産期陣痛は赤ちゃんに栄養や酸素を送っていた胎盤の役目が終わり、体外に出ようとするために起きるものです。しかしこの後産期陣痛はほとんどの方が痛みを自覚しないため、大きな心配をする必要はありません。
ちなみに胎盤は自然に膣内に押し出されて排出されることもありますが、待っていると出血量が増える危険性もあります。したがってこのような場合は子宮収縮薬を使って医学的処置で胎盤を娩出させることもあります。また医師がマッサージなどをしながら、人工的に胎盤娩出を行うことも多々あります。
出産までに時間を要しやすいママの特徴
前述のように陣痛開始から出産までの時間は初産婦で12時間~15時間、経産婦で5時間~8時間ほどとされています。しかし、体質などの影響により出産までに時間を要しやすい人もいます。そのような方は一般的な出産時間を大幅に上回るケースも多々見受けられます。そこでここでは出産までに時間がかかりやすいママの特徴を見てみましょう。
身長が低い・小柄
身長が低いママや小柄なママは生まれつき骨盤が狭い傾向にあります。骨盤が狭いということは必然的に赤ちゃんが通る道も狭くなりますから、出産までに時間を要しやすくなります。ちなみに通常150㎝以下のママは事前に骨盤の大きさを計測する検査が行われます。ここで自然分娩が可能か否かが判断され、仮に難しいとされた場合は帝王切開となります。
肥満体型
公益社団法人 日本産科婦人科学会によると肥満度を表す体格指数となるBMIが25以上の方は以下のようなリスクが高まるとされています。
- 妊娠高血圧症候群
- 妊娠糖尿病
- 帝王切開分娩
- 死産
- 巨大児
- 胎児の神経管閉鎖障害
ご覧のように肥満体型のママは自身の身体だけではなく、赤ちゃんにも悪影響を及ぼすリスクが高まるとされています。また子宮口から膣口までの軟産道はもともと狭い上に非常に脂肪がつきやすい箇所です。
したがって太ってしまうと赤ちゃんの通り道がさらに狭くなってしまうため、出産までに時間がかかりやすくなってしまうのです。ちなみに前述の肥満指数を表すBMIは【体重(kg)/身長(m)×身長(m)】で求めることができます。数値が18.5以上~25未満であれば標準体型となりますので、時間に余裕がある際に計算をしてみるのもよいでしょう。
痩せすぎ
肥満体型も問題ですが、その逆の痩せすぎも出産には不向きな一面があります。痩せすぎのママの場合は体力不足や筋力不足が懸念されています。出産に必要な体力や筋力が不足しているといきむ力が弱かったり、長続きしないことがあります。
この影響によりスムーズな出産が妨げられる可能性が高くなります。また痩せすぎということはママが栄養不足になっている可能性も高いです。母体が栄養不足だと赤ちゃんに必要な栄養も不足しがちになるため、赤ちゃんの体力不足も心配されます。
高齢出産
必ずしもそうであるとは限りませんが、高齢出産は体力のある20代での出産と比べると難産になりやすいとされています。35歳以上の高齢出産の場合ですが子宮頸管が硬く、子宮口が開きにくいという特徴があるため、出産までの時間がかかりやすいです。したがって高齢出産のケースでは吸引分娩や帝王切開などの分娩方法になることも多いです。
安産のために事前にできること
出産を控えているママが願うのは「とにかく無事に」ということです。基本的に出産時は助産師さん、看護師さんが全力でサポートしてくれますから、大きな心配をする必要はありません。しかし、安産となるためにはママ自身の多少の努力も必要になってきます。ここでは安産のために事前にできることをご紹介します。
適度な運動・ストレッチ
適度な運動やストレッチは産婦人科、病院の先生からも推奨されることが多いです。特に運動でおすすめなのがムリのない範囲で行うウォーキングです。ウォーキングによる有酸素運動は筋肉や体力低下を防ぐ効果が期待できます。
また妊娠中は極端に太らないようにすることも大切ですが、こちらもウォーキングによって適切な体重管理を行える可能性が高くなります。妊娠中の運動全般にいえることですが、絶対にムリのない範囲で行うようにしましょう。
妊娠初期などに病院から「安静にしておくように」といわれた方は医師に確認するなどしてから行うことを推奨します。もし運動をするのを控えてといわれた場合はストレッチを実践してみましょう。出産には股関節の柔軟性などが必要となってきます。股関節周辺の柔軟性を高めるストレッチ方法は以下のとおりです。
- あぐらを組むように足の裏を合わせて座る
- 両手を膝の上にのせる
- 両ひざを下に向けて手でじっくり押していく
以上が股関節周辺の柔軟性を高めるストレッチです。この方法で床と膝の距離が離れている方は柔軟性が低いということです。これは毎日のストレッチで徐々に柔らかくすることができますので、ムリのない範囲で継続的に行っていきましょう。
身体を温める
身体の冷えは微弱陣痛を引き起こす要因にもなります。微弱陣痛とは子宮の収縮力が弱く、陣痛も弱いため、出産までに時間を要してしまうことを指します。したがってスムーズな出産を行うには身体を温めておくことがとても大切です。
妊娠中(特に後期)は子宮が大きくなることによってお腹や骨盤内で血管を圧迫しやすくなります。これによって下半身の血行不良を起こしやすくなるので注意が必要です。入浴や温かい食事(スープや温野菜)などで常に身体を温めておくことを意識しておきましょう。
ストレスを溜めこまない
妊娠中はつわり、腰痛、腹痛、頭痛などのマイナートラブルやホルモンバランスの変化によってストレスが蓄積されやすいです。基本的にどのママも妊娠中は多少のストレスを抱え込みやすいですから、すぐに大きな問題が起きるということはありません。
しかし、過度なストレスは副賢皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)の増加を招く原因にもなります。CRHは子宮の収縮を引き起こすオキシトシンと呼ばれるホルモンの働きを活発にさせる作用があるため、切迫早産を引き起こすこともあります。
したがって過度なストレスを溜めこまないような生活を送ることも重要となってきます。妊娠中は好きなことや趣味に没頭してみるのも対策の一つです。また一人では不安な気持ちも強くなりますから、病院の先生に相談したり、家族のサポートなどを受けながらストレス解消に務めることを推奨します。
主な出産方法
一口に出産といっても出産方法の種類はさまざまです。ここでは主な出産方法をまとめましたので解説します。
普通分娩
普通分娩とは仰向けになって寝た姿勢で行う一般的な分娩方法の一つです。必要に応じて陣痛促進剤の投与、鉗子(かんし)や吸引による介助を行いながらの出産方法となります。「普通」という名称が付いていますが、必ずしもこの方法が適しているというわけではありません。ママや赤ちゃんの状態によっては帝王切開の方法に切り替えたほうが安全なこともあります。
座位分娩
座った姿勢で出産を行うことができる分娩方法です。座った状態のほうが寝ている時よりもお腹に力を入れやすく、赤ちゃんが骨盤にそって下がりやすいともいわれています。メリットは大きいですが、この方法で出産を行うには座位用の分娩台がある産婦人科、病院に限られるので事前にチェックが必要となります。
水中分娩
フランスやイギリスなどのヨーロッパでは一般的な分娩方法として普及している水中分娩。その名称通り水の中で出産する方法となります。小さなプールに体温と同じほどの温度(約36℃~37℃)のぬるま湯をはっています。ちなみにこのぬるま湯は自然塩をとかしており、羊水と同じほどの塩分濃度になっているのが特徴です。
体温程度のぬるま湯に入ることでリラックス効果を得ることができ、陣痛や痛みを和らげる効果もあるといわれています。水中分娩を行うには施設が整った病院を探す必要があります。また逆子、双子、早産などのリスクがあるママの場合は適用されませんので注意しておきましょう。
フリースタイル分娩
フリースタイル出産、アクティブバースなどとも呼ばれるフリースタイル分娩。最大の特徴はママさん自身が楽だと思える姿勢で出産できることです。以前は助産院のみが取り入れていましたが、現在は産婦主体でお産が進むこの方法の良さが見直され、総合病院などでもフリースタイル分娩を採用しているところが増えています。
横向きの体勢で出産を行う「側臥位(そくがい)」、腰への負担が軽減できる「四つん這い」などさまざまな姿勢で出産を行うことができます。したがって自身にとって楽な姿勢で出産を行いたいという方はフリースタイル分娩を選択するのもよいでしょう。費用も40万程度と一般的な出産方法と変わらないのがメリットです。
無痛分娩
米国などの欧米諸国では一般的な分娩方法にもなっている無痛分娩。ママが痛みを感じないように麻酔を使用するのが特徴です。痛みを和らげつつも意識はある状態となりますので、出産後に赤ちゃんを抱っこすることも可能です。
注意点としては「無痛」という名称が付いていますが、まったく痛みがなくなるわけではないということです。したがって無痛分娩を希望するママは「あくまでも痛みが和らぐ程度」ということを事前に頭に入れておきましょう。
計画分娩
計画分娩とは事前に予定日を決めて出産する分娩方法のことを指します。出産は自然に陣痛が始まるのを待って赤ちゃんを産む自然分娩が一般的な方法となります。一方計画分娩はママや赤ちゃんの状態を確認し、自然に陣痛が始まる前に出産をしたほうがよいと判断された時に行われます。
計画分娩では一般的に陣痛促進剤により人工的に陣痛を起こして出産をすることになります。メリットとしてはあらかじめ出産予定日を把握できるため、ママの精神的負担が軽減されることです。ちなみにさまざまな理由で自然分娩ができない時に行われる帝王切開も計画分娩の一つに含まれます。
帝王切開について
先ほども少し取り上げましたがママや赤ちゃんのどちらかに問題が生じ、自然分娩が難しいと判断された場合には帝王切開と呼ばれる出産方法を選択することがあります。帝王切開はママの腹部と子宮を切開して直接赤ちゃんを取り上げる出産方法です。近年は医療技術の進歩により帝王切開で出産するケースが増加傾向にあります。
厚生労働省の調査によると平成26年の1年間の分娩件数は一般病院46,451件、一般診療所38,765件の計85,216件となっており、このうち帝王切開分娩手術の件数は16,797件となっています。割合にすると19.7%、約5人に1人が帝王切開により出産していることになります。
【参考サイト】厚生労働省「平成26年(2014) 医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」
ちなみに同調査は1996年から3年ごとに行われていますが、平成17年が17.3%、平成20年が18.4%、平成23年が19.2%と調査開始以来上昇を続けています。現代社会は医療技術も進歩しており、帝王切開の安全性が高まったことなどが割合増加につながっていると予測されます。
また近年は女性の社会進出も増加傾向にあります。これにより初産の高齢化も進み、リスクの高い出産が増えたことなども影響しているでしょう。そんな帝王切開ですが2つの種類があります。一つめは「選択(予定)帝王切開」、二つめは「緊急帝王切開」です。
選択(予定)帝王切開とは一般的に36週~37週の検査結果をもとに、自然分娩が難しいと判断された場合に行われる手術のことです。通常は38週目頃に実施されることが多いようです。二つめの緊急帝王切開とは胎児機能不全や常位胎盤早期剥離などママや赤ちゃんに予期せぬトラブルが起きた場合に実施される手術のことを指します。
事前に出産の流れを把握しておくと心の準備もできる
今回は出産の流れ、出産までにかかる時間などの情報を解説しました。出産は陣痛開始から6時間~15時間ほどかかる非常に大変な出来事の一つでもあります。
ママさんもお腹の赤ちゃんのために体力を使うため、一つ間違うとママや赤ちゃんに予期せぬトラブルが起きることもあります。したがって出産前にある程度の準備をしておく必要があります。
この準備は運動など体力をつけておくこともそうですが、出産の流れや時間の把握など心の準備もしておくことが大切です。精神的に余裕のある状態で出産ができるように、家族などのサポートを受けながら頑張っていきましょう。