① 蚊の種類・生態を知る
そもそも蚊ってどんな生き物?
蚊は生物学的に分類すると、甲殻類、昆虫類、クモ類を含む「節足動物門」の「昆虫網」のうち、触覚が胸より長い特徴を持つ「長角亜目」の「カ科」に属します。世界には3,520種類以上が存在すると考えられており、日本には100種類ほどが生息していると言われています。国内に100種類もいる蚊ですが、人間の血を吸うのはヒトスジシマカ(ヤブカ)、アカイエカなどの20種類です。蚊と聞くと、そのすべてが血を吸うように思っている方も多いかもしれませんが、そうではありません。普段は樹液や果汁、花の蜜を吸っており、人の血を吸うのは産卵を控えたメスだけです。
代表的な蚊の種類
ヒトスジシマカ(ヤブカ) ~デング熱のウイルスを媒介する要注意種~
特徴と分布
公園や花壇など、夏の野外でよく見る蚊といえばヤブカ。正式名称をヒトスジシマカと言います。その名のとおり、白いひとすじのシマ模様が特徴です。脚の各関節にも銀白色の帯があり、成虫の大きさは4.5mmほど。日中の時間帯に最も多く活動する蚊と言われています。日本国内の生息地域は北海道と青森を除くすべての地域にわたります。温暖化により、生息地域が徐々に拡大しています。
発生時期
ヒトスジシマカが発生するのは5月~10月という限られた時期です。昼間に活動して、行動範囲はおおよそ50メートル~100メートル。日光が当たらない湿度の高いジメジメした場所を好みます。蚊の幼虫であるボウフラは水の中でふ化しますが、ヒトスジシマカの幼虫は水たまりや古タイヤにたまった水などにも生息しています。それだけでなく、捨てられた空き缶やペットボトル、植木鉢の受け皿などにわずかにたまった水からも発生します。
被害
人間に与える害としては単純な吸血だけでなく、デング熱やウエストナイル熱などのウイルスを媒介します。特にデング熱については2014年に69年ぶりとなる感染例が確認されました。東南アジア、中南米などの熱帯・亜熱帯地域での患者数が多い感染症ですが、最近では日本にも年100人を超える輸入例が報告されているので注意が必要です。
アカイエカ ~私たちの身の回りにいる、最も身近な蚊~
特徴と分布
赤褐色の一般的に見られる蚊がアカイエカです。成虫の大きさは5.5mmほどと、ヒトスジシマカよりは若干大きいですが、わかりやすい模様がなく後述のチカイエカととてもよく似ています。生息地域も広く、日本全国に生息しています。
発生時期
4月~10月にかけてドブや防火用水などから発生し、主に夜間に活動します。
被害
人間の血を吸うほか、日本ではあまり聞き慣れないウエストナイル熱などのウイルスを媒介します。ウエストナイル熱は北米で流行している感染症ですが、今後海外からの渡航者が増加することでさまざまな感染症が国内に持ち込まれる可能性があります。
なお、アカイエカの仲間であり、一回り小さいコガタアカイエカは日本脳炎を媒介することで知られています。
チカイエカ ~ビルや地下に生息し、通年で活動~
特徴と分布
前述のアカイエカによく似た見た目の蚊がチカイエカです。日本全国に生息してり、主な活動時間は夜間。チカイエカの特徴として、人口の閉鎖的な水域に発生することが挙げられます。またアカイエカと異なり、人の血を吸わなくても1回だけ産卵をすることができます(2回目以降は吸血をしなければ産卵できません)。
発生時期
ビルや地下鉄の排水がたまる場所という屋外に比べて暖かいに生息するため、冬眠をせず1年を通して活動します。
被害
アカイエカ同様、人間の血を吸うほかウエストナイル熱などのウイルスを媒介します。
蚊の生態
吸血
成虫のうち、人間の血を吸うのは産卵を控えたメスのみです。卵を産むための準備としてメスは糖分だけでなく高タンパクな動物の血液を必要とするためです。吸血し終えたメスは、卵の成熟を待つために安全な場所で2~3日の間休止しています。その間に吸血することはありませんが、卵が成熟すると水域に産卵してすぐに次の吸血の準備に入ります。蚊は一生でこのサイクルを1回~4回ほど繰り返します。
どうやって冬を越す?
アカイエカの活動時期は4月~10月ですが、メスは洞穴などの安全な場所で冬を越します。アカイエカの近似種であるチカイエカは、主に温暖な地下で活動するために冬眠もせずに通年で活動します。ヒトスジシマカは卵のまま越冬します。人家とその周辺に生息するアカイエカ、ヒトスジシマカの活動時期はだいたい春~秋の期間ですが、チカイエカは1年中活動するために、蚊の防除は通年の対策が必要です。
- ① 蚊の種類・生態を知る
- ② 蚊が媒介する感染症
- ③ 蚊の発生を防ぐ
- ④ 蚊を駆除したい
- ⑤ 蚊に刺されないための虫よけ対策