2022年5月27日 | ガーデニングノウハウ

初心者でもできる美しいグリーンカーテンの作り方

夏の強烈な日差しを防ぎ、エコ活動につながることでも知られる「グリーンカーテン」。古くから日本に伝わる「すだれ」や「よしず」などと並び、つる性の植物を利用したグリーンカーテンが注目されています。

今回は、グリーンカーテンの概要と集合住宅における注意点、準備するものと作り方のほか、おすすめの植物についてもご紹介します。この夏は、グリーンカーテンの栽培を楽しみながら省エネに取り組みませんか?

グリーンカーテンとは

グリーンカーテンは、つる性の植物を利用して壁面や窓に当たる直射日光を遮る方法です。2011年に発生した東日本大震災以降、節電の対策として特に注目を浴びるようになりました。

環境省が提案する国民運動の「COOL CHOICE」でも、地球温暖化の防止策としてグリーンカーテンの利用を推奨しており、国内の各地で取り組みや研究が行われています。
グリーンカーテンの効果
グリーンカーテンが日射エネルギーをカットする効果は、従来のすだれや遮蔽(しゃへい)ガラスよりも大きいことが研究で判明しています。また、水蒸気が放出される「蒸散(じょうさん)作用」により、グリーンカーテンの周辺は温度が低い結果も出ています。

グリーンカーテンを施したときと何もしないときでは室内の温度も異なり、特に午後2時以降に温度差が大きくなって日没まで持続するという研究報告もあります。

温度の低下はグリーンカーテンの面積が大きいほど著しくなるため、可能であれば窓辺だけでなく壁面にも設置してみましょう。

そのほか、グリーンカーテンの緑は美しく目に優しい上に、植物によっては実の収穫もできることから、リフレッシュや癒やし、楽しみといった効果も期待できます。お子さんのいるご家庭では、植物の観察と温度変化を調べる自由研究にもおすすめです。
マンションなどの集合住宅では注意が必要
集合住宅のベランダやバルコニーにグリーンカーテンを設置するときには、いくつかの注意点があります。
規約と許可
集合住宅の高層階では、布団干しやガーデニングを禁止している建物もあります。ベランダなどにものを置くときは、許可が必要な場合もあるので管理会社の規約を確認してください。金具類の接着やネジ止めについても、規約を確認してから行いましょう。
避難経路
集合住宅のベランダなどでは、避難経路の確保が必須です。避難用のハッチや両隣の仕切り壁には、植物が広がらないようにしてください。また、すべての窓をグリーンカーテンでふさがないようにし、緊急時にすぐ出られるスペースを残しておきましょう。
強風対策
特に高層階では風が強く吹くため、植物やネットが外れたり飛んだりする危険があります。グリーンカーテンはしっかり設置して、被害が出ないように気を付けてください。
近隣への配慮
グリーンカーテンを育てるときには、植物が伸びすぎたり、葉や花、土などが周囲に飛んだりすることが考えられます。また、落ち葉などが排水口をふさぐと近隣に水があふれる可能性もあるので、植物の手入れは欠かさず行いましょう。
フェイクで作るグリーンカーテン
「植物の世話が大変」というときは、実際の植物に似せた「フェイクグリーン」のグリーンカーテンをおすすめします。100円ショップで材料をそろえてもよいですし、ホームセンターなどではフェイクのグリーンカーテンがセットで販売されています。

フェイクのグリーンカーテンは管理の手間や病害虫の心配がない上に、ある程度の効果も期待できます。ただし、フェイクのグリーンカーテンは経年劣化で傷みやすいことから毎年または数年に1度は買い替えましょう。

グリーンカーテンに必要なもの

続いて、グリーンカーテンを設置する際に必要なものを見ていきましょう。
プランターと鉢底石
グリーンカーテンは面積が広いほど効果が出るため、大きめのプランターを用意しましょう。深さがあるプランターを選べば、根がしっかりと張るので生長がよくなります。たくさんのグリーンカーテンを作るときには、プランターも複数用意してください。

また、プランターの底に「鉢底石(はちぞこいし)」を敷いてから土を入れると、排水性がよくなります。
好みの苗やタネ
グリーンカーテンにはつる性の植物が適しているので、下記の項目や「グリーンカーテンにおすすめの植物12選」の記事を参考に好みの苗を用意しましょう。苗は緑色が濃くて生き生きとしたものを選び、1つのプランターに対して2個程度を準備します。
※フマキラーの外部サイトに飛びます。

複数のプランターを置く場合は、違う種類の植物を植える楽しみもあります。タネから育てるときには早めに準備を行い、好みのタネと土、ポットなどを用意しましょう。
土と肥料
土はプランターの容量に合わせて用意しますが、初心者の方は市販の植物用の土を使ってもかまいません。畑や花だんの土を使うときには、あらかじめゴミなどを取り除いて日光に当てて消毒しておきます。

植え付けの2週間前には石灰やたい肥などを混ぜてなじませ、1週間前には肥料をすき込んでおきます。食用として野菜や果物の苗をグリーンカーテンで育てる場合は、化学肥料ではなく、油かすや魚かす、草木灰(そうもくばい)などの有機肥料をおすすめします。
ネットや支柱など
ネットはプランターの数や幅に合わせて用意し、支柱を使うときは必要な数をそろえましょう。ネットが設置しにくいところでは、アイアン製のトレリスや突っ張り棒などを用意します。グリーンカーテン用のセットも販売されているので、サイズが合えば使用してみてください。

そのほか、ネットを設置する際の金具やおもし、つるを誘引するビニタイやひも、スコップやはさみなどのガーデンツールも必須です。

グリーンカーテンの作り方

それでは、実際にグリーンカーテンを設置する手順をご紹介します。
場所の決定
まずは、どこにグリーンカーテンを設置するか決めましょう。グリーンカーテンは直射日光を避ける目的があるため、日当たりのよい場所を選んで植物を大きく育てましょう。ネットや支柱などの倒壊には気を付け、安全にグリーンカーテンを設置できる場所を選びます。

頻繁に出入りをする場所や、洗濯物を干すスペースにも配慮が必要です。近隣の住宅との間隔が狭い場所では、植物のはみ出しや落ち葉などにも注意してください。
苗の植え付け
場所が決まったら、植物の苗を植え付けます。植え付けの時期は、植物の種類や地域にもよりますが、基本的には5~6月中が良いでしょう。植え付けの時期が早すぎると寒さで苗が弱る可能性があり、遅すぎると成長が間に合わず暑さへの対応ができなくなります。

植え付けの作業は、炎天下を避けてくもりの日か夕方に行います。土と苗の間にすき間ができないように植え付け、水を静かに与えて様子を見ましょう。タネから育てるときは時期を逆算し、早めに準備を始めてください。
ネットの取り付け
戸建て住宅では、2階のフェンスや手すり、または壁に取り付けたフックや金具などにネットの上部をしっかりと結びます。ネットの下部は、石やブロックなどのおもしや地面に打ち込んだ金具などを利用して固定します。ネットは地面に対して垂直ではなく、70度くらいの角度を付けると全体に日光がよく当たります。

集合住宅で壁にフックなどを取り付けられない場合、ネットの上部は物干し竿(さお)に固定してもよいでしょう。ネットの下部は、石などでしっかり押さえます。床と屋根側に2本の突っ張り棒を立て、その間にネットを設置する方法もあります。どちらも、高いところではくれぐれも気を付けて作業してください。

室内にグリーンカーテンを設置したいときは、耐えられる重さを確認してからカーテンレールなどにつるすか、アイアンのトレリスや突っ張り棒などを使用します。ただし、室内は日照時間が少ないために生育が遅く、ヒョロヒョロに育つ可能性があることから、フェイクのグリーンカーテンを設置する方がよいかもしれません。
植物の管理のポイント
植物の種類によって管理方法は異なりますが、一般的な内容をご紹介します。
水やりと肥料
プランターの土は畑や花壇よりも渇きが早いため、植え付け後は毎朝の水やりを日課にしましょう。特にキュウリなどは水分を必要とする植物なので、水切れを起こさないようにします。猛暑で苗がしおれているときには、気温の下がる夕方以降に水を与えて様子を見てください。

グリーンカーテンでは、植え付ける際に「元肥(もとごえ)」を施し、成長してからの「追肥(ついひ)」を与えるのが一般的です。収穫の期間は定期的に肥料を与える植物もあるので、それぞれの育て方を参考にしましょう。
せん定と収穫
つる性の植物は、メインになる「主枝(しゅし)」・「親づる」があり、その脇から「側枝(そくし)」・「子づる」が伸びます。つるの生長に合わせて、随時ネットに誘引しましょう。大きな花や実を育てるためには、側枝のせん定が必要な植物もあります。

側枝を切らずに伸ばすと花や実が小さくなりますが、グリーンカーテンのように葉を生い茂らせるときはあまり神経質にならなくてもよいかもしれません。植物によっては茎の先端をカットする「摘芯(てきしん)」を行うと、より葉が茂ってカーテンの効果が高まります。

実が食べられる植物は、食べ頃になったら早めに収穫しましょう。実の成る植物は夜間に栄養分を蓄積するので、早朝の収穫をおすすめします。
病害虫のチェック
グリーンカーテンの生育環境によっては、さまざまな病気や害虫に侵されることがあるので気を付けましょう。多く見られる病気としては、葉に白い粉のようなものが付く「うどんこ病」や、褐色のはん点が出る「褐斑(かっぱん)病」などがあります。

また、「アブラムシ」や「ハダニ」などの害虫が付く場合もあるため、こまめに観察をして早めに対処してください。グリーンカーテンは葉が混み合いやすいので、伸びすぎたところはカットして通気性をよくするなどの予防も心掛けましょう。
台風の対策
台風が接近しているときは、プランターを石などでしっかり固定し、収穫ができそうな実は早めに摘んでおきます。まだ植物が大きく生長していない場合は、ネットの上部を外して地面に置き、石などを載せておくと安心です。

すでに大きく育っているときやネットが外せないときには、ネットをつり下げている部分や巻き付けている場所をワイヤーなどで強く固定します。台風が過ぎた後はグリーンカーテンを点検し、植物の傷んだ部分をカットしたり誘引しなおしたりして今後に備えましょう。
片付けと土の再利用
暑さが落ち着いてグリーンカーテンの必要がなくなったら、放置をせずに片付けに取り掛かります。茎や葉などは処分して、ゴミ収集に出すかたい肥に利用しましょう。プランターの土は根やゴミを取り除き、日光消毒をしたり土壌改良材を混ぜたりすれば他の植物を植え付けることができる上、翌年のグリーンカーテンにも再利用できます。

ただし、同じ科の植物を続けて植えると「連作(れんさく)障害」が起こって植物の生育が悪くなります。前年の土を使うときは科の違う植物を選んで植え付け、同じ科の植物を育てる場合は新しい土を用意するか、前年の土を数年置いてから使用してください。

グリーンカーテンにおすすめの植物

最後に、グリーンカーテンに適したつる性の植物を4つのタイプに分けてご紹介します。
きれいな花が咲くタイプ
グリーンカーテンできれいな花を楽しみたいときは、アサガオやヒルガオの仲間、ウリ科のユウガオ、大輪の花が咲くクレマチスがおすすめです。そのほか、五角形の小さい花が咲くルコウソウ、つぼみがカタツムリに似ているスネールフラワー、花色があでやかなツンベルギアなどがあります。

アサガオ
ヒルガオ
ユウガオ
クレマチス
ルコウソウ
スネールフラワー
ツンベルギア   など
実が食べられるタイプ
日よけだけでなく収穫を楽しみたいときは、夏野菜の代表格であるキュウリやゴーヤ、華やかな花も楽しめるパッションフルーツがおすすめです。そのほか、ミニトマトやつる性のインゲン、ミニサイズの小玉スイカなどがあります。キウイフルーツもグリーンカーテンにできますが、ほとんどの種類が雄と雌の株をそろえて受粉させる必要があります。

キュウリ
ゴーヤ
パッションフルーツ
ミニトマト
インゲン
ミニサイズの小玉スイカ   など
かわいい実が成るタイプ
かわいい実をたくさん観賞できるグリーンカーテンもおすすめです。実だけではなくタネも愛らしいフウセンカズラ、色とりどりの小さな実が楽しめるオキナワスズメウリ、ハロウィンにも使用できるミニカボチャなどが育てやすい品種です。

古くから親しまれているヘチマやヒョウタンも、葉がよく茂ってたくさんの実を付けます。

フウセンカズラ
オキナワスズメウリ
ミニカボチャ
ヘチマ
ヒョウタン   など
緑を楽しむタイプ
シンプルなグリーンを楽しみたいときには、丈夫で育てやすいアイビーの仲間がおすすめです。アイビーは総称して「ヘデラ」とも呼ばれ、シンプルな緑のものや淡い色の模様が入ったもの、葉の先が長くとがったもの、大きい葉を付けるものなどさまざまな品種があります。

アイビーの仲間は常緑なので、グリーンカーテンが終わっても植え替えれば長く楽しめます。そのほか、食用になるツルムラサキやオカワカメもグリーンカーテンに向いています。

アイビー(ヘデラ)の仲間
ツルムラサキ
オカワカメ   など

おすすめの植物の具体的な育て方などは、「グリーンカーテンにおすすめの植物12選」の記事も参考にしてください。
※フマキラーの外部サイトに飛びます。

グリーンカーテンで暑い夏を乗り切ろう

今回は、省エネに貢献しながらすがすがしい緑を楽しめるグリーンカーテンについてご紹介しました。グリーンカーテンは、ネットなどが倒壊しないよう安全な場所にしっかりと設置し、近隣への配慮も忘れないようにしましょう。

集合住宅でグリーンカーテンを育てるときは、規約を確認してから取り掛かってください。

この夏はエコ活動につながるグリーンカーテンを取り入れ、植物の成長を楽しみながら乗り切りましょう!
「カダンライフ」で紹介する記事は、フマキラー株式会社または執筆業務委託先が信頼に足ると判断した情報源に基づき作成しておりますが、完全性、正確性、または適時性等を保証するものではありません。
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