2023年4月5日 | お役立ち情報
ゼロ・ウェイストとは?メリットや始め方、取り組み事例を解説
近年、個人や企業、自治体でゼロ・ウェイストという考え方が広まりつつあります。ゴミを適切に処理するだけでなく、できるだけゴミを出さない生活を目指すのがゼロ・ウェイストの概念です。しかし、ゼロ・ウェイストという言葉を聞いたことがない人もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで本記事では、ゼロ・ウェイストの意味や背景、取り組み方などについて解説いたします。個人で取り組めることも多いので、ぜひ参考にしてください。
ゼロ・ウェイストとは
ゼロ・ウェイストとは、ゴミをゼロにすることを目標に、できるだけ廃棄物を出さないための取り組みです。ゼロは「zero=0」、ウェイストは「waste=廃棄物」という意味があります。
1996年にオーストラリアの首都キャンベラが「ゼロ・ウェイスト宣言」を出したことをきっかけに、ゼロ・ウェイストの取り組みが世界各国に広まっていきました。日本でも2003年に徳島県上勝町が自治体では日本初のゼロ・ウェイスト宣言をおこなっています。
ゴミを処理する方法は「埋める」「燃やす」「リサイクル」の3つです。しかし、どの方法にもデメリットがあります。埋める場合は最終処分場が必要ですが、ゴミの量が増えすぎて最終処分場が不足しています。新規建設するとなると、環境汚染を懸念して住民運動が盛んになるため、増やすことは難しいでしょう。
日本ではゴミの埋め立てを減らすためにほとんど燃やしていますが、燃やすとCO2が発生します。リサイクルすれば焼却や埋め立てゴミを減らせますが、コストやエネルギーがかかります。回収されない海洋プラスチックごみや不法投棄なども問題です。
このような状況を改善するには、ごみを処理するだけでは解決しません。ごみを出さない社会を目指す必要があるのです。
ゼロ・ウェイストが広まる背景
ゼロ・ウェイストが広まった背景には、世界でプラスチックゴミ問題への関心が高まったことが大いに関係しています。プラスチックは自然分解されないため、適切に処理しなければ自然環境中に残り、環境問題や人体に影響を及ぼします。近年、深刻な問題になっているのが海洋プラスチック問題です。
適切に処理されなかったプラスチックゴミが海や川に流れ出しています。流れ出たプラスチックゴミは自然分解されずに海を漂うため、餌と間違えてウミガメが食べてしまうなど海洋生物にダメージを与えています。プラスチックを飲み込んだ魚を摂取することによる人体への影響も懸念されます。
2050年には海洋中のゴミが魚の量以上に増加するといわれており、プラスチックゴミは海洋汚染の大きな原因になっています。
【参考】日本財団ジャーナル「2050年の海は魚よりもごみが多くなる?今すぐできる2つのアクション」
ゼロ・ウェイストに取り組むメリット
ゼロ・ウェイストに取り組むことで得られるメリットには次のようなことがあります。
節約になる
ゼロ・ウェイストに取り組むと使い捨ての物を購入することがなくなるため、お金を節約できます。ゼロ・ウェイストに取り組み始めた当初は費用がかかることがありますが、長い目で見れば出費を減らせます。
たとえば毎日コンビニや自動販売機でペットボトル飲料を購入している人がマイボトルを持ち歩けば、ペットボトルのゴミを大幅に減らせます。エコバッグを持ち歩けばレジ袋を購入せずに済みます。
最初はマイボトルやエコバッグの購入費用がかかりますが、長い目で見たらかなりの節約になるでしょう。
ゴミ出しの回数が減る
ゼロ・ウェイストに取り組んでゴミの量が減ると、ゴミ出しの回数を減らせて家事を軽減できるメリットがあります。市町村が指定する有料ゴミ袋もこれまでより小さなサイズで足りるようになるでしょう。
家の中が片付く
ゴミを出さないことを意識すれば、必然的に物を買うときに慎重になります。一時的に必要なものであれば、購入しなくてもレンタルという選択肢があります。不要なものを買わなくなるため、家の中が物であふれることがなくなり、すっきりと片付きます。
物を大切に扱うようになる
できるだけゴミを出さないようにするには、今ある持ち物が壊れないように大切に扱うよう必要があります。また、物を買うときもできるだけ買い替えずに済むように、長く使えるものを選ぶようになるでしょう。使い捨てをやめて、物を大切に扱う習慣が身に付きます。
ゼロ・ウェイストの始め方
ゴミを減らそうと思っても、何から始めたらいいかわからない人もいらっしゃるでしょう。まずは普段どのようなゴミが出ているか確認することから始めてみましょう。ゴミ袋やゴミ箱の中身を確認して、なくせるものはないか検討してください。
ゼロ・ウェイストに取り組むにあたって重要なポイントとなるのが「5R」を意識することです。
- Refuse(不要なものは断る)
- Reduce(ゴミを減らす)
- Reuse(再利用する)
- Repair(修理して使う)
- Recycle(リサイクルする)
これらの頭文字のRを取って5Rと呼ばれます。どのような取り組みなのか1つずつ詳しく確認していきましょう。
Refuse(リフューズ)
Refuse(リフューズ)は断るという意味です。不要なものは断り、もらわないことでゴミを減らせます。たとえばエコバッグを持ち歩くとレジ袋は必要ありません。おてふき、割り箸、プラスチック製のナイフやフォーク、ストローなども必要なければ断りましょう。
Reduce(リデュース)
Reduce(リデュース)は減らすという意味です。ゴミを減らすために、不要なものや使い捨てのものをできるだけ買わないようにしましょう。
たとえばマイボトルを持ち歩けば、ペットボトルのゴミを減らせます。品質を重視して長く使えるものを購入すれば、買い替えの頻度を減らせてゴミの削減につながるでしょう。洗剤やシャンプーなど詰め替えが可能な商品を選ぶことでもゴミの削減が可能です。
食べ物を廃棄する食品ロスも大きな問題となっていますが、食品の買いすぎや作り過ぎをなくすことでゴミを減量させられます。
Reuse(リユース)
Reuse(リユース)は再使用という意味です。物を簡単に捨てずに繰り返し使うことを目的としています。着なくなった服や使わなくなったベビー用品などを捨てるとゴミになりますが、必要とする人がいるかもしれません。欲しがっている人に譲ったり、リサイクルショップに持って行ったりすれば、必要な人の手に渡るのでゴミを減らせます。
Repair(リペア)
Repair(リペア)は修理するという意味です。どのようなものでも壊れることがありますが、修理すれば使える可能性があります。壊れたからといって簡単に捨ててしまわずに修理できないか検討しましょう。
Recycle(リサイクル)
Recycle(リサイクル)は再生利用を意味します。上記4つのRを実践しても出てしまう不用品は、リサイクルによって資源となり、新しい製品を作るときの原材料として再生利用できます。リサイクルするにはゴミに出すときに正しく分別する必要があります。分別方法は自治体によって異なるため、お住まいの自治体の分別ルールを確認しましょう。
ゼロ・ウェイストの取り組み事例
ゼロ・ウェイストに取り組む自治体や企業が増えています。最後に取り組み事例をご紹介します。
徳島県上勝町
2003年に日本で始めてゼロ・ウェイスト宣言をした上勝町は、行政・町民・事業所が一丸となってゼロ・ウェイストに取り組んでいます。ゴミの焼却や埋め立てをできるだけ減らし、処理にお金がかからないように13種類45分別しているため、リサイクル率は80%を達成しています。
しかし、一番大切なのはリデュースです。上勝町では量り売りなど容器包装を必要としない売り方を推進しています。紙おむつのゴミを減らすため、子どもが生まれた家庭に布おむつセットをプレゼントする制度があります。布おむつにすれば毎日使用済みおむつのゴミが出ないため、赤ちゃんがいる家庭でもゴミを大幅に減らせるでしょう。
上勝町はごみ収集の日がありません。ゴミは町内で1カ所設置されているゴミステーションにすべて持ち込まれます。生ごみはゴミステーションに持ち込めないため、コンポストなどを使って家庭で堆肥にリサイクルしています。
福岡県みやま市
福岡県みやま市は2020年に国内5例目となるゼロ・ウェイスト宣言「みやま市資源循環のまち宣言」をおこないました。限りある資源を守るため、バイオマスセンターで生ごみなどからエネルギーや肥料を作り出して資源循環を実現。太陽光から作った電気を市で消費するエネルギーの地産地消にも取り組んでいます。
熊本県水俣市
熊本県水俣市は2009年に「ゼロ・ウェイストのまちづくり水俣宣言」をおこないました。水俣病の経験を生かしてゼロ・ウェイストに取り組んでいます。
水俣市では産業廃棄物最終処分場の建設に反対し、埋め立てに頼らないことを選択。家庭用生ごみ処理容器「キエーロ」の無償貸与もおこなっています。家庭ごみの高度分別収集をおこなう中で得たリサイクルの習慣をリユース・リデュースへと発展させています。
ゼロ・ウェイストなスーパー「斗々屋 京都本店」
2021年7月にオープンした京都市上京区の「斗々屋」は、日本初のゼロ・ウェイストなスーパーマーケットです。商品はすべて量り売りで、野菜・肉・卵などは少量から必要な分だけ購入可能です。買い物の際は自宅から瓶や容器などを持参するスタイルです。ない場合は店内のレンタル容器を利用できます。
ゴミが出ないうえに、必要以上の買い物をしなくて済むためフードロスの削減にもつながるでしょう。
住所:京都市上京区出水町252 大澤事務所本社ビル
公式サイト:https://totoya-zerowaste.com
まとめ
本記事ではゼロ・ウェイストの意味や背景、始め方などをご紹介しました。近年はゼロ・ウェイストに取り組む自治体や企業も増えていますが、個人で取り組めることも多数あります。
- 外出時はマイバッグやマイボトルを持ち歩く
- 野菜の皮などを過剰除去しない
- レンタルを利用する
- リサイクルショップを利用する
- 過剰包装を断る
- 壊れたときは修理できないか検討する
- 長く使える商品を選ぶ
ゴミをゼロにするのは難しいですが、できるだけ少なくすることは可能です。一人ひとりが意識することで、ゼロ・ウェイストの実現につながります。まずはできることから始めていきましょう。