産後ママの心と体で気をつけておきたいことは?ケアのポイント

産後ママの心と体で気をつけておきたいことは?ケアのポイント

出産後は可愛いわが子の子育てに気合いを入れるママも多いと思います。しかし、産後すぐに頑張りすぎるのは基本的にNGです。産後すぐのママの体と心はこちらが思っている以上にボロボロな状態だからです。

そのため、産後ママは子育ても意識しながら、自身の体と心のケアもしっかりと行う必要があります。今回は産後ママの心と体の状態に関する疑問、産後の過ごし方などについて解説します。

産後のママの心と体ってどうなっているの?

産後ママの心と体はしっかりとケアする必要があるのはご存じの方もいるかもしれません。しかし、具体的にどのような状態なのかを把握している人は少ないでしょう。そこでまずは「産後ママの心と体はどうなっているのか?」という疑問に迫ってみます。

出産後すぐに心の変化に気付くというママは多いです。具体的には以下のような症状が現れるようになります。

  • 理由もなく涙が出てくる
  • 気分の浮き沈みが激しい
  • 疲労感
  • 緊張・不安感

産後約2週間は上のような状態が続くママが多いです。このような心の変化を「マタニティ・ブルーズ」といいます。マタニティ・ブルーズとは産後の一時的な心の変化を指す言葉です。

ではなぜマタニティ・ブルーズのような症状が現れるのでしょうか?これは産後の女性ホルモン分泌量が関係しています。一般的に産後は女性ホルモンの分泌量が激減します。

女性ホルモンは女性らしい髪や皮膚の維持、女性らしい丸みを帯びた体つきを作る、女性特有の体の機能維持、骨量の減少を防ぐなどさまざまな役割を担っています。

そしてその役割の中の一つに「精神の安定」があります。エストロゲンの分泌量が正常な時は意欲増進、気分改善、精神機能の上昇など、心が安定した状態になります。

しかし、産後のママは女性ホルモンの分泌量が一気に低下します。これにより一時的に心が不安定な状態に陥ってしまうのです。

産後はママの体にも変化が現れています。具体的には以下のようなものです。

  • 骨盤が開いたまま
  • 出産で体力を使っているため疲労困憊
  • 腰痛・肩こり・筋肉痛など

骨盤は内臓や子宮などの生殖器を保護する役割を担っています。出産時は赤ちゃんを産むために、リラキシンというホルモンが分泌されますが、このホルモンによって骨盤が開きやすい状態になります。

そして出産時に骨盤の開きがMAXに達します。つまり産後すぐのママは骨盤が開いたままの状態です。骨盤が開いたままの状態だと骨盤付近の筋肉が正常に働かなくなるなどさまざまな影響が出ます。

その結果として骨盤周辺に不要な脂肪が付きやすくなってしまうのです。産後に下半身が太くなってきたと悩むママは非常に多いですが、これも骨盤の開きが大きく影響しています。

出産で開いた骨盤は時間の経過とともに徐々に閉じていきますが、残念ながら出産前の状態に戻すことは難しいです。また女性に多く見られるお姉さん座り(横座り)、授乳時になりがちな猫背の姿勢などの影響により、肩こりや腰痛で悩むママも少なくありません。

産後ママの心と体を回復させるには産褥期(さんじょくき)の過ごし方が大切

産後ママの心と体を回復させるには産褥期(さんじょくき)の過ごし方が大切

前述のとおり産後ママの心と体は疲れ切った状態です。そしてこの疲れ切った心と体を効率的に回復させるには産褥期(さんじょくき)の過ごし方が大切となります。産褥期とは出産が終わり、ママの体が妊娠前の状態に戻っていくための時期(期間)を指します。

産褥期と呼ばれる時期は出産後約6週間~8週間です。この期間をどう過ごすのかによって回復スピードも異なってくるので、産褥期の過ごし方というのをしっかりと学んでおきましょう。

産後ママの産褥期の過ごし方を解説

産褥期の過ごし方が大切なのはわかりましたが、具体的にはどのような生活を意識すればよいのでしょうか?ここでは産後ママの産褥期の過ごし方を解説します。

安静にする

やはり最も大切なのは安静にするということ。産後すぐのママはわが子が生まれた喜びから、テンションがハイになり、ついつい頑張りすぎてしまうこともあります。しかし、何度も解説しているように産後のママの体はボロボロの状態です。

そのためよほどのことがない限りは不用意に体を動かすことは控えておきましょう。特に産褥期は悪露(おろ)により出血が続くことがあります。悪露とは子宮、産道などが妊娠前の状態に戻るときに排出される分泌物のことであり、血液、リンパ液、粘液などが含まれています。

この悪露によって貧血に陥る可能性もありますので、めまいや立ちくらみなどを感じたら、ムリをせずに横になることを意識しておきましょう。

ちなみに悪露は産後約1ヶ月で収まるのが一般的とされています。仮に産後1ヶ月以上、悪露が続く場合や出血量が異常に多い時には何かしらのトラブルの可能性もありますので、医師に相談することを推奨します。

産褥体操を行う

産褥期は安静第一と解説したばかりですが、まったく動かないと血行不良なども招くため、回復を遅らせてしまう原因にもなります。そのため、産後すぐの体でもできる産褥体操を適度に取り入れるようにしましょう。産褥体操は主に以下のような効果が期待できます。

  • 筋肉の痛みを軽減して、疲労回復を促す
  • 出産時に伸びた骨盤底筋などの回復を促す
  • 血液の循環を良くし、疲労回復を促す
  • 子宮の回復を早める
  • 便秘予防

産褥体操のやり方は時期によって異なります。今回は産後1日目~3日目頃までに実践できる産褥体操をまとめましたので、以下をご覧ください。

【産後1日目からできる産褥体操】
① ひざを真っすぐ伸ばして、床に座る
② 足首を左右交互にゆっくりと動かす(目安15回)
※体調によっては仰向けで寝た状態で行っても可

① 座った状態、立ったままの状態どちらでもかまわないので、首を前後左右に倒して、左右を向く
② ①をワンセットで行い、朝昼夕に2セット~3セットずつ行う
※体調によっては立ったままだと危険なので、壁や机に手を添えながら行う、めまいなどがひどい時はムリをせずに中止する


【産後2日目からできる産褥体操】
① 両足を伸ばして仰向けに寝る
② 両手をお腹の上に置く
③ 手を見るような感覚で頭だけを起こす
④ 頭を起こした状態を1秒~2秒キープする
⑤ キープした頭をゆっくりと下す
⑥ 息を止めないように注意し、5回~10回を目安に繰り返す


【産後3日目からできる産褥体操】
① 足を交差させて床に座る
② 上になった足のほうへゆっくりと体をひねる(両手も同じ方向にもっていくようにする)
③ 反対側も同様の動きで行う
④ 左右5回を目安に行う

① 仰向けに寝た状態になる
② 両腕を頭の下に置く
③ ひざをまっすぐ伸ばした状態で片足を上に上げる
④ 上げた足をゆっくりと下していく
⑤ 左右交互に5回を目安に行う
※下腹部の筋肉を使うため、痛みなどが強い場合はムリをしない

これらの体操は出産によって大きなダメージを受けたママでも、手軽に取り入れることができます。中にはベッドの上でできる体操もあるので、体調を考慮しながら、積極的に実践していきましょう。ただし何度も言うようにムリだけは禁物です。

栄養バランスの整った食生活を意識する

栄養バランスの整った食生活を意識する

出産によりダメージを受けた心と体の回復を早めるには、栄養バランスの整った食事を摂取することも大切です。厚生労働省では母乳授乳中のママは通常時より350Kcal多く摂取することを推奨しています。
【参考サイト】厚生労働省「妊婦・授乳婦 (参考資料1)」

これはママの回復だけではなく、良い母乳を出すためにも大切なことです。産後特に摂取したい栄養素をまとめましたので、以下をご覧ください。

  • 炭水化物 (白米・玄米など)
  • タンパク質 (肉類・魚類・大豆製品・乳製品・卵など)
  • カルシウム (牛乳・豆腐・うなぎのかば焼き・小松菜・ほうれん草など)
  • 鉄分 (マグロ・ほうれん草・レバー・ひじき・大豆製品など)
  • n-3系脂肪酸 (イワシ・マグロ・ハマチ・サバ・ブリなどの魚)
  • ビタミンB1 (豚肉・レバー・豆類など)
  • ビタミンB2 (レバー・うなぎ・卵・納豆・乳製品など)
  • ビタミンC (ピーマン・パセリ・レモン・柿など)
  • ビタミンA (レバー・うなぎ・鶏肉・卵など)
  • 葉酸 (納豆・焼きのり・ほうれん草・ブロッコリーなど)

上で取り上げた栄養素以外にも脂質や食物繊維などもバランスよく摂り入れていきましょう。特に産後にお通じの悩みを抱えたママには野菜、海藻類などに豊富に含まれている食物繊維はおすすめです。

また多くのママが見落としがちなのが水分補給です。授乳期間は授乳によって水分がどんどん失われていきます。それに加えて夏場などは汗も大量にかきますので、最悪の場合は脱水症状を引き起こす可能性もあります。したがって産後のママはこまめな水分補給も忘れないように心がけておきましょう。

清潔な体を保つようにする

生まれたばかりの赤ちゃんも免疫力がついていない状態ですから、注意しておく必要がありますが、産後すぐのママも免疫力が落ちています。そのため、感染症や病気にかかるリスクも一時的に高まっている状態です。

このような感染症、病気のリスクを避けるには体を清潔に保っておくことが大切です。特に帝王切開手術で出産をした場合、傷口から細菌が入り込む可能性もありますので注意が必要です。

また自然分娩をしている初産婦さんは会陰切開(えいんせっかい)をすることが多いです。この場合も傷口から細菌が入ることがありますので、忘れないように清潔にしておきましょう。悪露対策で使用される産褥パッドも4時間前後を目安に交換することを推奨します。

入浴を控える

病院によって差がありますが、産後1ヶ月は入浴を控えるようにとアドバイスされます。これは湯船に浸かることで雑菌が子宮内に入り込む可能性があるからです。また温かいお風呂に入ると血行が促進されるため、悪露が増加することもあります。

このような理由から産後約1ヶ月は入浴を控えることが推奨されています。お風呂好きのママはストレスが溜まりそうですが、自身の体を守るためと思って、シャワーで我慢するようにしましょう。一般的に子宮口が閉じる産後約1ヶ月を過ぎると入浴の許可が下りることが多いです。

ちょっとでも「体がおかしいな」と感じたら医師に相談することが大事

ちょっとでも「体がおかしいな」と感じたら医師に相談することが大事

産後ママの過ごし方を解説しましたが、どんなに注意していても体に異常を感じることが出てくるママもいます。そのため、生活をしていて少しでも「あれ?おかしいな」と感じるところがあったら、念のために医師に相談するようにしましょう。ちなみに産褥期のママに見られがちな主なトラブルは以下のとおりです。

  • 子宮復古不全
  • 産熟熱
  • マタニティブルーズ・産後うつ
  • 乳腺炎
  • 便秘

何らかの原因により、子宮収縮がスムーズに行われず子宮の回復ができない子宮復古不全、分娩後に38℃以上の高熱が2日以上続く産褥熱、胸のしこりや腫れとともに高熱を伴う乳腺炎など、産後ママが注意しておきたいトラブルはたくさんあります。

中には発見が遅れると他の病気を併発するものもありますので、普段から自身の体調チェックなどはしっかりと行っておきましょう。

産後ママの心と体はボロボロ!家族にも協力を求めて万全なケアを施そう

産後ママの心と体はボロボロ!家族にも協力を求めて万全なケアを施そう

今回は産後ママの心と体の状態、産後の過ごし方などについて解説しました。産後のママは出産の影響で疲労困憊の状態となっていることが多いです。また出産前と出産後ではホルモンバランスにも大きな変化が現れるため、精神的にも不安定になりがちです。

そのため、出産を無事に終えたからといってムリに体を酷使するのは禁物です。ダメージを受けた体と心を1日でも早く回復させるためにも、しばらくは安静第一を心がけておくようにしましょう。

家事や育児なども家族にしっかりと協力を求めることが重要です。赤ちゃんが元気でもママに異常が見られれば喜びは半減してしまいます。産後に関して不安があるママはぜひ参考にしてください。

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