東京で有名な坂とその歴史

全国的に坂の多い街としては、長崎や神戸、広島の呉などが知られています。長崎や神戸は港町としても有名で、海岸線に接して斜面が多いことから坂の多い街になっています。

港町に坂が多いのは分かりますが、実は東京も意外に坂が多いことをご存知でしょうか?表通りや脇に入った裏通りにも坂道が多くあります。そして坂の名前も歴史にちなんだものやその坂からの景観から名付けられたものまで、魅力のある名前が数多くあります。

今回は、東京にあるさまざまな坂とその歴史についてご紹介します。

東京に坂が多い理由

関東平野に位置する東京は、その昔は海でした。多摩地域にある昭島市では約160万年前のものと推定されるクジラの化石が発見されています。東京の地形は、西部の多摩地域から東京23区のある東部に向かって、だんだんと低い地形になっています。

氷河期には西部地域から流れ出した氷河が山を削り、内陸部まで深く入り込んでいた海にまで達して東部地域が陸地となりました。また海岸線が現在よりもかなり内陸部まで入り込んでいたことから起伏の多い地形だったのです。そして江戸が栄えたことで、この起伏のある地形の場所に人が住むようになって町ができ、坂のある環境の中で人々は暮らし始めたのです。

また、富士山が噴火した影響から火山灰が堆積したことにより起伏があるとも言われています。

色々な名前の坂

東京には実に800箇所以上もの坂があると言われています。東京にある坂の名前で多いのは、「富士見坂」や「汐見坂」で、「富士見坂」は20箇所以上もあります。昔はどこからでも富士山が見えたのでしょうね。

他には「桜坂」や「紅葉坂」「銀杏坂」などがあり景色が浮かんでくるようです。またユニークな名前では、「幽霊坂」や「のぞき坂」、「おいはぎ坂」などがあり、その他にも店が由来の「団子坂」や「茶屋坂」、動物が由来の「蛙坂」「きつね坂」「狸坂」「しろへび坂」などもあります。
「急坂」「だらだら坂」は名前の通りですね。

東京の主な坂

東京の坂の中から歴史上の名前の坂をいくつかご紹介します。

乃木坂(のぎざか)【港区】

いまではアイドルグループの名前で全国的に有名な坂となりました。
乃木坂は、江戸時代には幽霊坂と呼ばれていました。ただ、実際に幽霊が出る坂という意味ではなく、木がうっそうと茂って幽霊が出そうなくらい寂しい場所という意味だったようです。

この場所に陸軍大将の乃木希典(のぎ まれすけ)が移り住んだことから、乃木大将が殉死した際にその死を悼み、1912年に赤坂区議会が改名を議決したことに由来します。その後、地下鉄千代田線の駅名になったことから、その周辺をさして乃木坂と呼ばれるようになりました。

東郷坂(とうごうざか)【千代田区】

海軍の東郷平八郎(とうごうへいはちろう)元帥の屋敷があった場所が区に寄贈されて東郷元帥記念公園となり、その西側を北に上る坂を東郷坂といいます。1905年に当時の麹町区会の議決により命名されました。ちなみに東郷元帥が祀られている東郷神社は原宿にあります。

道玄坂(どうげんざか)【渋谷区】

道玄坂は、渋谷区にある坂の中でもっとも知られた名前の坂ですが、名前の由来には諸説あるようです。まず、この辺りに道玄庵という寺があったので道玄坂と言われようになったという説。この説では、徳川家康が江戸に入府した時の文書の中に記されていることから、寺の名前にちなんで道玄坂と呼ばれたというものです。

一方、戦国時代、大和田太郎道玄という和田義盛一族の残党の子孫がこの辺りで山賊となったため、道玄坂と呼ばれるようになったということです。いまでは若者の街として有名な渋谷ですが、戦国時代には山賊が出るような山だったのです。

九段坂(くだんざか)【千代田区】

日本武道館と靖国神社の間を抜ける、九段下交差点から靖国神社の南側に上る坂です。九段の由来は、江戸城の役人の官舎が坂の途中に9棟並んでいたからとも、江戸時代、急な坂だったため石垣を9段造ったことからとも言われています。

この坂からの眺望は素晴らしいもので、江戸湾はもとより房総も見渡せたと言われています。また、観月の名所としても知られ、毎年1月と7月の26日を、二十六夜持ちと称して人々が坂上で月を観賞したとのことです。

神楽坂(かぐらざか)【新宿区】

神楽坂の由来は、江戸時代、神楽坂に隣接する若宮町にある若宮八幡神社において、祭礼の際に神輿がここを渡り、神楽が行われたことに由来すると言われています。またこの時の神楽の音が遠くまで鳴り響いたとも言われています。

権之助坂(ごんのすけざか)【目黒区】

江戸の中期、中目黒の菅沼権之助という名主が、村人のために年貢米の取り立てをゆるめてもらおうと訴え出ましたが、その行為がかえって罪に問われてしまいます。何とか助けてほしいという村人の願いも聞き入れられず、権之助は刑に処せられることになり引かれて行きました。
村人は、村に尽した功績をたたえて、権之助が最後に村を振り返ったこの坂を「権之助坂」と呼ぶようになったと言われています。

800箇所以上もあると言われている東京の坂

800箇所以上もあると言われている東京の坂ですが、個々に名前の由来があるようです。それは長い間語り継がれてきた物語やその坂から見える景観や景色、また先人を敬って付けられた名前、生活や文化の中から名付けられたものなどさまざまです。

東京の地形の特長でもある坂ですが、その坂を通して東京の歴史も見えてきます。

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