妖怪退治伝書 〜ネズミについて知る〜

家を荒らす「妖怪」たちの種類は主に、
クマネズミ、ドブネズミ、ハツカネズミの3種類。
危険を察知する高い学習能力と、
強い警戒心のせいで、退治には少々手がかかる。
さらに、近年都市部では一部の薬剤に対する耐性を持った「スーパーラット」も増えているというから、
充分に注意が必要だ。
ここで奴らの生態と対策方法を学び、
家に潜む「妖怪」たちをしっかり追い出そう。

ネズミの基本情報

夜行性
ネズミは天敵に見つかりづらい夜になると活動が活発になる。
多産
寿命は1〜3年程度だが、成長が早く生後3ヵ月もすれば繁殖が可能になり、1回につき10匹近く出産することも。また妊娠期間が短く年に5〜6回も産むことがあるため、1匹見かけたのを放っておくと、数ヵ月後には爆発的に増えている可能性がある。
何でも食べる/かじる
体内にエネルギーを蓄積しにくいネズミは、エサを食べられない期間が2~3日も続けば餓死する。家の中の食べ物を何でも食べてしまうのは、そのせいだ。また、ネズミの歯は一生伸び続ける。伸びすぎれば物が食べられなくなり餓死してしまうので、削るために家具や壁等の硬いものをかじる。
優れた五感
視力はよくないが、その分高い触覚や聴覚で敵や罠をすばやく感知する。さらに、味覚や嗅覚も高く、殺鼠剤の匂いや味を敏感に察知できるため、駆除の際には注意が必要になる。

ネズミの種類

クマネズミ
ドブネズミ
ハツカネズミ

クマネズミ

クマネズミ

DATA

  • 体長:15~23cm
  • 好物:穀物や果物
  • 性格:臆病・神経質
  • 寿命:1~2年
  • 活動場所:高くて乾いた場所(天井裏・壁の中)
  • 繁殖可能になる時期:生後3ヵ月ごろ
  • 妊娠期間:21日
  • 平均的に産む子の数:2~8匹

臆病な性質で、人前に現れることはほぼないが、警戒心・学習能力が非常に高いせいで、駆除も一筋縄ではいかないのがクマネズミ。高所を好むので、天井裏で活動している場合はこのネズミの可能性が高い。他のネズミとの見分けが難しい場合はクマネズミとして対処すると良い。

スーパーラット

スーパーラット

ネズミ対策として、日本では古くから殺鼠剤(毒エサ)による駆除が行われてきた。その結果、一般的な殺鼠剤によく用いられる〈ワルファリン〉等の薬剤に対して強い抵抗性を持つ(効かない)ネズミが、都市部を中心に生まれた。そうしたネズミ(大半はクマネズミと言われる)のことを「スーパーラット」という。
あなたの家でワルファリン等を有効成分とする殺鼠剤を設置し、それが確かに減っている(ネズミがきちんと食べている)にも関わらずネズミの気配が消えないときは、スーパーラットが住みついている可能性がある。「スーパーラットも駆除できる」等の表記がある、非ワルファリン系の殺鼠剤に切り替えてみよう。

スーパーラットも駆除できる殺鼠剤は「ドラ デスパワー 速効プレミアム」

ドブネズミ

ドブネズミ

DATA

  • 体長:22~26cm
  • 好物:魚介類や肉
  • 性格:どう猛
  • 寿命:3年ほど
  • 活動場所:湿気が多い場所(下水道・植え込み・床下)
  • 繁殖可能になる時期:生後3ヵ月ごろ
  • 妊娠期間:21日
  • 平均的に産む子の数:6~14匹

3種の中で一番大型のネズミ。非常にどう猛な性質で、人が噛まれるといった被害も報告される。どぶや下水道など水のある環境を好み、非衛生的な場所に住むため、食中毒等の菌に汚染されている可能性も高い。高い場所への移動は得意ではなく、民家では床下などに住みつくことが多い。

ハツカネズミ

ハツカネズミ

DATA

  • 体長:6~9cm
  • 好物:穀類や種子
  • 性格:好奇心旺盛
  • 寿命:1年ほど
  • 活動場所:他種のネズミが入らない場所(物置・納屋)
  • 繁殖可能になる時期:
     オスは生後1ヵ月ごろ、メスは生後2ヵ月ごろ
  • 妊娠期間:20日
  • 平均的に産む子の数:4~6匹

3種の中で一番小さい。好奇心が強く、人前にも抵抗なく姿を現す。乾燥したところを好み、物置や納屋で見かけることが多い。また、都市部よりも自然が豊かな土地で見られやすい。

ネズミ被害について

ネズミがもたらす被害はとても幅広く、深刻である。
その被害は主に3つの観点から考えられる。

衛生的被害

非衛生的な環境で暮らすネズミは様々な菌を保有している。そのため、そのふん尿が家の中にあるだけで、人は食中毒や感染症のリスクに晒される。小さくとも、ネズミの衛生的な被害は侮れないのだ。
また、ネズミの身体にはイエダニが多数寄生しており、ネズミがいるとダニ被害も増えると言われている。イエダニは人間を刺し、強いかゆみ、炎症を引き起こす。突然ダニによる被害が増えた時は、ネズミが発生していないか確認しよう。

経済的被害

食品や家具等をかじられることによる直接的な被害のほか、壁に開けられた穴の修理費や、ネズミ駆除業者の依頼費等がかかることもある。

またネズミは電気ケーブルをかじってショートさせるため、常に火災や停電のリスクをはらんでいる。実際、ネズミを原因とする火災や変電所等での大規模停電、電車の運休等が日本国内でも起きている。個人だけでなく社会にも大きな経済的被害を与えているのだ。

さらに、ネズミが発生しやすい飲食店等では、徹底した対策が必要である。食害に加え、ふん尿を介した食中毒発生のリスク、客に目撃された際の風評被害など、その被害は経営にも大きく関わってくるからだ。

精神的被害

ネズミによる精神的苦痛を訴える人は少なくない。夜間の活動音による不眠、食害やふん尿等を目にしたときのストレス、なかなか駆除がうまくいかない苛立ち、衛生上の不安…。
ネズミによって発生した精神的被害は、ネズミを駆除しなければ解決しないことが多いので、とにかく対策をするほかない。
数が多ければある程度時間がかかるのは仕方がないため、焦らず確実に進めよう。

ネズミの痕跡

ネズミがいる家には特有の痕跡があることが多い。家の中での「怪奇現象」に悩まされている人は、一度確認してみよう。

天井裏や壁の中、床下で物音がする

ネズミは大抵外壁の小さな穴等から住居に侵入し、主にクマネズミは天井裏、ドブネズミは床下に巣を作る。もし天井裏や壁の中、床下から「キーキー」というか細い鳴き声や「ドタドタ」と何かが動き回る音、「ガリガリ」と何かが削られるような音がしていたら、ネズミの存在を疑おう。

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壁や床に黒い跡(ラットサイン)
がある

ネズミはあまり目が良くないため、壁に沿って移動する習性がある。その時、ネズミの身体に付いている油分や汚れが壁に付着し、だんだん黒光りした汚れとなっていく。こうしたネズミによる黒い跡を「ラットサイン」という。ラットサインをたどれば、ネズミの侵入口を特定できる可能性がある。また殺鼠剤を置いたり、粘着シートを仕掛ける際の目印にもなるのだ。

ネズミが移動している場所に体の汚れが付着し、
黒ずんでくる。
※画像はイメージです。

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家具等にかじられた形跡がある

ネズミは伸び続ける歯を削るため、木製家具から柱、畳まで、ありとあらゆるものをかじる。もし家の家具に不自然に削られたような跡が見つかったら、ラットサイン等がそばにないか探してみよう。

かじられた形跡

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ふん・尿が落ちている

水回りや床下、天井裏等で4〜20mm程度の黒い塊を見かけたら、それはネズミのふんかもしれない。家にいるネズミの種類特定のヒントにもなるので確認してみよう。

クマネズミのふん

クマネズミのふん
  • 大きさ:6~10mm
  • 形:細長く不揃い
  • 色:黒っぽい
  • 特徴:バラバラに散らばっていることが多い
  • 場所:天井裏、高層階の部屋、換気扇まわり等

ドブネズミのふん

ドブネズミのふん
  • 大きさ:10~20mm
  • 形:丸みがある
  • 色:こげ茶色または灰色
  • 特徴:悪臭を放つ
  • 場所:下水、水回りや床下等

ハツカネズミのふん

ハツカネズミのふん
  • 大きさ:4〜7mm
  • 形:両端が尖っている
  • 色:茶色
  • 特徴:米粒程度の大きさ
  • 場所:屋外、物置や倉庫等

ネズミの尿は強烈なニオイを放つ。
移動しながら撒き散らす習性があるため、部屋の隅を重点的に確認すると良い。
また、ネズミの尿には蛍光物質が含まれているので、ブラックライトを当てると見つけやすい。

注意
ネズミのふん尿には恐ろしい病原菌がたくさん含まれているため、処理の際は絶対に素手で触ってはいけない。
手袋をし、マスクを付け、触らない・吸い込まないように取り除き、手袋やマスクごとすみやかに捨てる。
ふんや尿があった場所には病原菌が残っているので、アルコールでしっかり除菌すると良い。
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壁に穴が空いている

壁に空いた不自然な穴。それはネズミの侵入口かもしれない。ネズミは柱や硬い壁にも穴を開けることができ、配管と壁の間にできたすき間等を広げて侵入口にしていることもある。見つけたら家の中にネズミが潜んでいないか確かめてみよう。いなかった場合でも、ネズミが侵入する前に塞いでしまうのがベターだ。

壁に空いた穴

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急にダニに刺されるようになった

ネズミの身体にはイエダニが寄生している。
イエダニは吸血性のダニで、人間も刺す。狙われるのは主に太ももの内側やお腹など皮膚の柔らかい部分で、刺されたところは炎症を起こし、激しいかゆみを伴う。
突然ダニに刺されることが増えたら、ネズミ発生のサインかもしれない。

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台所や棚の食品が不自然に減っている

ネズミは身体にエネルギーを蓄えることができず、2〜3日何も食べないと餓死する。
そのため大変な雑食性で、穀物、果物、肉、魚介類等の食品はもちろん、生ゴミからペットフードまで食べてしまう。台所や棚・仏壇から食品などが減っていたら、ネズミに食べられている可能性がある。

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ネズミ対策について

自宅でネズミの駆除をするための手段は主に4つ。それぞれメリット、デメリットがあるので、自分や環境に合った方法を試してみることが大切だ。

  • 1忌避剤で追い出す

    ネズミが嫌がる臭気成分を含んでいる。
    撒いてネズミを追い払うエアゾールタイプ、置いておくとネズミを寄せ付けないゲルタイプなどがある。

    メリット
    ニオイで追い出すため、殺鼠剤等と違い死体の処理がなく、ネズミを直接見ずに対策できる点で心理的負担が少ない。
    デメリット
    一般的な忌避剤に用いられるハッカ、ワサビ等のニオイは、ネズミが慣れるにしたがって忌避効果が落ちる。
    ニオイ慣れしにくい忌避剤は「ドラ ネズミバリア 強力忌避剤」
  • 2殺鼠剤で駆除する

    毒エサを食べさせることでネズミを駆除する。
    殺鼠剤には主に、3〜5日間食べさせ続けてネズミを退治する「蓄積毒」タイプと、食べて数時間で効く「急性毒」タイプがある。

    蓄積毒タイプの殺鼠剤

    メリット
    ネズミは非常に警戒心が強く、1度かかった罠や仲間が食べて死んだ毒エサには引っかからない。蓄積毒タイプはすぐに死なないため、仲間のネズミに毒エサと気づかれにくく、じわじわと群れごと駆除できる。
    デメリット
    3〜5日間連続して食べさせないと効果が出ない。
    よく食べる蓄積毒タイプの殺鼠剤は「ドラ デスパワー まとめて一掃」

    急性毒タイプの殺鼠剤

    メリット
    ネズミをすみやかに駆除できる。
    また、スーパーラットにも効くものが多い。
    デメリット
    1度ネズミに警戒されると
    食べさせづらくなる。
    警戒されにくい急性毒タイプの殺鼠剤は「ドラ デスパワー 速効プレミアム」
  • 3粘着シートで捕獲する

    粘着剤のついたシートを設置しネズミを捕獲する。「ラットサイン」がある、ネズミの通り道に置くと効果的。粘着シートを飛び越えられないように、すき間なく敷き詰めるのもポイントだ。粘着シートではなく、カゴ型の捕獲器を使う方法もある。

    メリット
    薬剤を使わないため、小さな子どもやペットのいるお家には安心。
    デメリット
    捕まえた後に自分で処理する必要がある。
    また、警戒して近寄らなかったり、大型のネズミには逃げられることがある。
    しっかり捕獲できる粘着シートは「ドラ デスパワー 強力粘着シート」
  • 4超音波や電磁波で追い払う

    ネズミの発達した聴覚を利用して超音波や電磁波で追い払う。
    これだけでは完全な対策は難しいので、他の方法と併用して実施すると良い。

    メリット
    薬剤を一切使わないため安全。
    また後処理の必要がないので心理的負担が少ない。
    デメリット
    設置後は警戒し逃げていくが、不快な音がするだけで害がないと判断されると、ネズミが戻ってくる可能性がある。また、完全に住みついている場合、効果が出にくい。

ネズミが生息しづらい
環境づくり

大切なのは、退治した後にネズミが生息しづらい環境を作ること。せっかく家からいなくなっても、侵入口を塞ぐ・エサとなるものをしまう等、環境を変えていかなければ、再び奴らが戻ってくる可能性があるからだ。

  • 1侵入口を塞ぐ

    壁のひび割れや屋根の通気口、配管のすき間など、ネズミの侵入口になっている部分を見つけて塞ごう。大きな穴なら木や金網、小さな穴ならパテやモルタル、金属たわし等を使うのがおすすめだ。

  • 2エサとなるものをしまう

    ネズミのエサとなるものは徹底的に撤去するか、きちんとしまうべし。

    以下のことに気をつけよう

    • 食品は、ネズミが穴を開けられない、蓋付きのホーロー容器等に入れる。
      または冷蔵庫や戸棚に収納する。
    • 仏壇のお供え物は、夜まで放置しない。
    • ペットのエサが残ったら放置せず、片付ける。
    • 生ゴミは蓋付きの容器に入れる。
  • 3巣の素材となるものを片付ける

    ダンボールや新聞紙、ティッシュ、服やタオル、シーツ等の衣類、布団の綿、断熱材などは、ネズミの巣の格好の材料になる。
    撤去するか、きちんとしまうようにしよう。